気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

リアリティ

「自己複製(増殖)に含まれる矛盾」から「生命世界」が開かれる?

木下清一郎『心の起源』(19) 今回は、第3章 「世界」とは何か 第4節 自己矛盾から世界は開かれる である。本節で主張されていることは、「自己複製(増殖)に含まれる矛盾」から「生命世界」が開かれる、ということであろう。これはどういう意味だろう…

自己増殖がかかえる矛盾

木下清一郎『心の起源』(18) 今回は、第3章 「世界」とは何か 第3節 自己増殖がかかえる矛盾 である。 自己触媒と自己複製 考えてみれば、自己触媒の働きとは随分と奇妙なものである。自己触媒とは自らの構造に依存した機能であるのに、その構造を変化…

生物世界と物質世界とは、連続しているのか? 不連続なのか?

木下清一郎『心の起源』(17) 前回は、世界が開かれるための4条件(世界の始まりを考えるための4つの要請…特異点、基本要素、基本原理、自己展開)を、物質世界にあてはめてみたらどうなるかであった。次に、この4条件を生物世界にあてはめてみたらど…

愛着障害 スキンシップがないと……

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(2) 今回は、第3章 心の発達-乳幼児期の心理 のうち、「愛着」をとりあげよう。 あなたのまわりに次のような大人はいませんか? A1 傷つきやすい A2 怒りを感じると建設的な話し合いができない A3 過去…

世界が開かれるための4条件

木下清一郎『心の起源』(16) 今回より、第3章 「世界」とは何か である。木下は、本章冒頭で次のように言う。 議論を先へ進める前に、まずはっきりさせておかねばならぬことがある。物質世界を超えたところに生物世界が開かれ、生物世界を超えたところ…

生物としての人間

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(1) 第1章は、心理学とは-歴史と方法 なので省略し、第2章 心の進化-動物としての人間 から見ていくことにします。(なお、以下の引用は、「です、ます調」から「である調」に変更します。) 動物にも…

心の働きの最初の兆候を、行動の能動性の発揮という点に認めるとするならば、それは記憶の成立から始まる

木下清一郎『心の起源』(15) 今回は、第2章 心の原点をたずねる 第6節 負の記憶・空白の記憶・正の記憶 である。これまでの「まとめ」でもある。 本節を読んで、木下の言わんとすることがようやく少し分かってきたような気がする。(以下に述べること…

パヴロフの犬

木下清一郎『心の起源』(14) 第2章 心の原点をたずねる 第5節 生得的情報から自発的行動へ の続きである。 条件反射 動物がある刺激を受けると、否応なしに一定の反応が起こってしまうことがある。これは生得的反射であって無条件反射と呼ばれる。これ…

刷り込み(2) 「発達障害」の原因は、「刷り込み」の障害にある?

木下清一郎『心の起源』(13) 本書の趣旨から外れるかもしれないが、「刷り込み」に関連した話をとりあげよう。それは、発達障害の原因は、「刷り込み」の障害にあるのではないか、という話である。 政府広報オンラインに、「発達障害って何だろう?」と…

刷り込み(1) 空白の記憶

木下清一郎『心の起源』(12) いま検討しているのは、神経回路内の「情報の刻印の進化」である。木下はこれを、「本能、刷り込み、条件反射」という3つの行動に着目して説明している。今回は2番目の「刷り込み」である。まず事例から(たぶん、どこかで…

記憶

木下清一郎『心の起源』(11) 生得的記憶と獲得的記憶 生得的(先天的)情報には遺伝子が関与しているものとし、獲得的(後天的)情報には遺伝子は関与しないものとすると、前者は天賦の情報であり、後者は経験による情報である。一つは神経回路の内部に…

介在神経系

木下清一郎『心の起源』(10) 木下は、前節において「神経系がどれほど特異な位置を占めるとしても、神経系を持たない生物には心はないなどと言い切るのは差し控えておきたい」と言い、また「これとは逆に、神経系があれば心もあるに決まっているとも言い…

男性ホルモン、エクスキュルの環世界、南北を向いて糞をする犬

木下清一郎『心の起源』(9) 神経系と心 神経系がどれほど特異な位置を占めるとしても、神経系を持たない生物には心はないなどと言い切るのは差し控えておきたい。例えば、内分泌系という液性のコミュニケーションによって、生物体の隅々にまで平穏な状態…

細胞の情報処理 ホメオスタシス マイクロバイオーム

木下清一郎『心の起源』(8) 今回は、第2章 心の原点をたずねる 第3節 なぜ神経系のみに心の座を求めるのか である。 神経系の独自性 生物が外界の情報を受け入れるのは、神経系によるばかりでなく、そのほかに内分泌系もあれば免疫系もある。それにもか…

内界と外界

木下清一郎『心の起源』(7) 内界と外界 生物体には、必ず内界と外界がある。…生物に心が生じてくるのは、この平凡なことが遠因になっている。…心の働きは内界と外界との関係として始まり、また常にそういうものであり続ける。 生物学的に見る限りでは、漠…

アブダクション

木下清一郎『心の起源』(6) 今回から、第2章 心の原点をたずねる である。どういう内容か。 循環を止めねば先へ進めない 生物体は要請する なぜ神経系のみに心の座を求めるのか 記憶の成立 生物的情報から自発的行動へ 負の記憶・空白の記憶・正の記憶 …

哲学ではなく、自然学の対象として「心の問題」に取り組む

木下清一郎『心の起源』(5) 心とどう取り組むか 不用意に心の問題に足を踏み入れても道を踏み迷うばかりであろう。道を進むには何らかの知恵が必要になる。いまここで探ろうとしているのは、「心とは何であるか」を理解するというよりも、「心をつくり上…

心と遺伝子 ニワトリとタマゴ

木下清一郎『心の起源』(4) 二つの立場 ここで私たちは二つの立場に分かれざるを得ない。 その一つは、生命発生以来の歴史が示す通り、細胞、個体といった生命形態を通じて、遺伝子の支配はすべてに優先するものであって、個体の中に現れた心の働きも、そ…

遺伝子 プログラム 天からの手紙

木下清一郎『心の起源』(3) 今回は、第1章 第2節「心が生まれてくるまでの道のり」の後半、「個体の誕生」、「心の誕生」、「利己的遺伝子」を取り上げよう。 個体の誕生 生命が誕生して長い時間が経つと、多くの細胞が集まった個体が現れてくる。多細…

生命はいかにして誕生したのか?

木下清一郎『心の起源』(2) 今回は、「心が生まれてくるまでの道のり」で、「核酸の出現」、「細胞の誕生」をとりあげる。以降、「個体の誕生」、「心の誕生」、「利己的遺伝子」と話が続く。 本書の記述に従い(生物学の専門的なことに立ち入らないで)…

心とは何か 瓢箪鯰(ひょうたんなまず)

木下清一郎『心の起源』(1) 本書の副題は「生物学からの挑戦」である。怪しげな本ではない。 心とはいったい何なのか。…いったい、心とはどこからやってきたものであろう。植物などを考えてみればわかるように、すべての生物が私たちと同じような意味での…

人間は宇宙で特権的な地位を占めてなどいない

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(31) ラマチャンドランは、「自己を特徴づける特性」について、ポスドクの研究生ウィリアム・ハ―スタインと、以下のようなリストを作った。今回は、6.警戒の自己と7.概念の自己と社会的自己である。(…

クオリア ホムンクルス(小人) デカルト劇場

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(30) ラマチャンドランは、「自己を特徴づける特性」について、ポスドクの研究生ウィリアム・ハ―スタインと、以下のようなリストを作った。今回は、4.記憶の自己~5. 統合された自己である。 体現化さ…

私は「操り人形」か?

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(29) ラマチャンドランは、「自己を特徴づける特性」について、ポスドクの研究生ウィリアム・ハ―スタインと、以下のようなリストを作った。 体現化された自己 感情の自己 実行の自己 記憶の自己 統合…

「8の字ダンス」をしているミツバチは、「意識」があるのだろうか?

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(28) ミツバチは、いわゆるミツバチの8の字ダンスを含む、非常に精巧な形式のコミュニケーションをすることで知られている。偵察係のミツバチは花粉のある場所を見つけると巣に帰り、精巧なダンスを…

クオリアの特徴 ためらいと決断

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(27) クオリアの話の続きである。クオリアとは、主観的感覚(「痛み」「赤」「トリュフ添えのニョッキ」といった主観的性質を感じる生[なま]の感覚)のことであった。このような主観的感覚は、どの…

クオリアの特徴 黄色いドーナツと満月

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(26) ラマチャンドランは、クオリアとは、「痛み」「赤」「トリュフ添えのニョッキ」といった主観的性質を感じる生[なま]の感覚のことである、と言っていた。では、そのようなクオリアの特徴は、ど…

クオリアとは何か? クオリア問題とは? 翻訳とは?

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(25) クオリアとは何か? 「痛み」「赤」「トリュフ添えのニョッキ」といった主観的性質を感じる生[なま]の感覚のことである。 これを簡潔に「主観的感覚」とよぶ。私はこれを<私の感覚>と理解し…

宇宙の中心的な謎 しかし僕にはどうだったんだろう?

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(24) 今回より、最終章(第12章 火星人は赤を見るか)に入る。 来世紀[21世紀]の前半、科学は過去最大の難問にたちむかう。これまでずっと神秘主義や形而上学のものだった「自己の本質は何か」と…

多重人格障害 浮遊する自己

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(23) 多重人格障害とは何か。ラマチャンドランの説明は、なかなかうまい。 多重人格障害(MPD)は、医学にとって地質学における大陸移動と同じくらい重要である。多重人格障害は、心身医学の主張を…