浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

リアリティ

オートポイエーシス(自己組織化)理論

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(42) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き、「自分以外のシステムがオートポイエーシス・システムだとどうして分かるのか」(p.224~)である。 私が見ているものが…

種論争

積読本の処分メモ - 三中信宏『系統樹思考の世界』(下) 「分類思考と系統樹思考、クロスセクションとタイムシリーズ」(2023/5/17)の続きである。 いつもの通りコメントしようと思って書き始めたのだが、中途半端な文章となってしまったので、一言コメン…

無の世界

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(11) 今回は、第3章 無の小史 の続き(p.90~)である。 https://owlcation.com/humanities/Why-Something-Vs-Nothing 引き算論法 「無」を否定する論法に、(1)観察者論法と(2)容器論法があるということだったが…

オートポイエーシス、流体のスナップショット

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(41) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き「オートポイエーシス・システム」(p.217~)である。 部品を一つの機械に組み上げる時に、我々はその機械の目的を意識せ…

分子機械

積読本の処分メモ - 野田晴彦「分子機械の化学」 積読本を処分するにあたり、ちょっと気になった部分をピックアップしておこう。(情報が古いかもしれない) 遺伝の基本の物質が核酸であるあることが確立すると、生物学は化学と地続きになった。生物を構成…

「集団的自己増殖系」と「生命」

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(40) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き「カウフマンの集団的自己触媒系と自律体」(p.208~)である。 従来の力学系モデルにおける自己組織化論は、…「自己組織化…

空間とは何か? 実体説と関係説

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(10) 今回は、第3章 無の小史 の続き(p.86~)である。 空間とは何か 哲学者の間では、空間(時空)とは本当は何なのかについて、2つの対立する見方がある。 1) 実体的な見方は、ニュートンに遡る。その見方で…

生物の輪郭(内部と外部)

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(39) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き「パターンの生成と個体の生成」(p.203~)である。 山口は次のようなことを述べている。 DNA分子が担う情報には、タンパ…

「無」は神より偉大である

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(9) 今回は、第3章 無の小史(p.72~)である。(久しぶりに本書を読むことにします*1)。 ホルトは、「何もない(無)とはどういうことだろう?」と問い、「存在しないもの」と答えている。 貧乏人はそれ(無)…

☻ 人生に意味なんてあるわけないでしょ ☹

戸田山和久『哲学入門』(1) 読みたい本は多々あるのだが、本書もその1冊である。 哲学系としては、ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』の次にとりあげようかと思っていたのだが、忘れないようにここにメモしておこう。 本書の内容は、次の通りである…

砂山くずし

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(38) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き「自己組織化臨界」(p.202~)である。 カウフマンは、「生物圏の共構築を支配する法則の候補」を、「カオスの縁」や「自…

ハッピー・リタイアメント ― 敬老の日の妄想

総務省は、「敬老の日」(2022/9/19)にちなんで、統計からみた高齢者の状況(人口及び就業状況)を公表した。 www.stat.go.jp 2022年の高齢者(65歳以上)の人口推計は、 ・総人口が減少する中で、高齢者人口は3627万人と過去最多 ・総人口(12471万人)に…

セル・オートマトン

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(37) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き(p.196~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論(反応拡散系、散逸構…

秩序と無秩序、自己組織化

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(36) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル(p.192~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論の概略が説明されている。 シ…

現象を前にして、どのような理解枠組を設定するか?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(35) 今回は、第4章 機械としての生命 第3節 自己増殖する機械 の続き(p.187~)である。 科学的知識の創造性 ある分子を「プログラム」として理解すること(あるいは生命を「情報機械」として理解す…

Zをプログラムと呼ぶ観測者

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(34) 今回は、第4章 機械としての生命 第3節 自己増殖する機械 である。 これまでに、 遺伝子が外的に観察可能な形質の情報を担っていると考えるのは。外在的視点からの読み込みである。 遺伝子から…

生命の機械論モデル

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(33) 今回は、第4章 機械としての生命 第2節 生命の機械論モデル である。 現代の生命科学は全て、デカルトに由来する機械論哲学を前提として構築されている。…カンギレムは、『生命の認識』所収の論…

都合により…

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(番外) 「都合により」本書の読書ノートは中断します。いつ再開するかは未定です。 ********** 「都合により」という言葉は便利な言葉で、私は時々使います。「理由」を述べる必要がない時、述べたくない時に使いま…

生命の分析に対するカンギレムの批判

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(32) 今回は、第4章 機械としての生命 第1節 生命の分析 の続き(p.170~)である。 我々は「あるがままの記述」を理解できない 生命を構成するすべての分子の運動を記述することができれば、それは…

存在に対して笑顔を浮かべる人たち

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(8) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.56~)である。 前回は、「存在に対して渋面をつくる人」(「存在への難色」派)として、ショーペンハウアーが挙げられていたが、J.P.サルトルやJ.アップダイクもそう…

TOMOHIDE IKEYA のリアル

TOMOHIDE IKEYAのWEBサイト(https://tomohide-ikeya.com/)から、3枚の写真をピックアップしてみた。*1 https://tomohide-ikeya.com/adovertising https://tomohide-ikeya.com/moon https://tomohide-ikeya.com/wave IKEYAは述べている。 スキューバダイビ…

因果関係 ― ブラックボックス(内部構造不明の暗い箱)、フラクタル(無限入れ子)

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(31) 今回は、第4章 機械としての生命 第1節 生命の分析(p.164~)である。 前章 第4節(遺伝子は外的に観察された形質の情報を担うか)では、次のようなことが述べられていた。*1 前章の内容を覚え…

存在に対して渋面をつくる人たち フラヌール(Flaneur、実存的遊歩者)

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(7) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.50~)である。 「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか?」という問いを巡り、思想家の見方は3つに分かれて現在に至っている、とホルトはいう。次の3つである。…

「遺伝子」から「形質」への因果関係

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(30) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第4節 遺伝子は外的に観察された形質の情報を担うか(p.154~)である。 現在、一口に「遺伝子」と言われるものが、何らかの情報を担うものである点、その物質的実体…

パーティーガールがケーキから飛び出してきた

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(6) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.45~)である。 是非もない事実 五感が捉えることのできる証拠に基づく経験的真理は、科学研究の領分に属する。そして、なぜ世界が存在するのかという問いは、科学の…

「遺伝学における遺伝子」と「分子生物学的な遺伝子」の違い

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(29) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第3節 進化論・遺伝学における遺伝子概念(p.145~)である。 進化の総合説(ネオダーウィニズム)における遺伝子概念 ダーウィンの進化論は、自然選択によって生物…

「存在の謎」は存在しない?

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(5) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.37~)である。 前回の最後に、 「無から」の創造という教義は、無という考えを純然たる存在論的可能性として認めるものだった。…その教義によって、「なぜまったく何…

DNA分子としての遺伝子は、形質の情報をも担うものであるか?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(28) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第2節 分子生物学における遺伝子概念の展開 の続き(p.138~)である。 1970年頃の分子生物学 DNA分子は、それを構成する塩基の配列によって、タンパク質のアミノ酸…

ブンバ ボンボンボ ブンバ ボーン! ハッ!!

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(4) 今回は、第2章 哲学のあらまし である。 存在の謎の核心は、「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか?」という問いに尽きる。 この問いに答えようと努めることは、「人間の知性のとりわけ壮大な企て」であ…

COVID-19:「キャプシドを持たないウイルス」と「プラスミド」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(76) ※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000 以前(2021/6/5)、中屋敷均『ウイルスは生きている』の第2章 丸刈りのパラドクス のうち、「ウ…