浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

リアリティ

「ギャンブラーの誤り」は、本当に誤りなのだろうか?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(26) 今回は、第14章 思考 のうち、「確率の推定」から「ギャンブラーの誤り」をとりあげる。 「ギャンブラーの誤り」とは、 ある出来事の起きる確率があらかじめ決まっているにもかかわらず、その前後に…

4枚カード問題(ウェイソン選択課題) 確証バイアス

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(25) 今回は、第14章 思考 のうち、「推論」から「4枚カード問題」をとりあげる。 4枚カード問題(ウェイソン選択課題)とは、認知心理学者ウェイソンによって考案された次のような問題である。 ここに、…

ネットワークの構造(2) スモ-ル・ワールド性、クラスター性

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(9) ネットワークには、3つの性質(スケールフリー性、スモール・ワールド性、クラスター性)があるということだったので、今回はスモール・ワールド性とクラスター性について見ることにしよう。 2.ス…

パブロフの亀

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(24) 今回は、第13章 学習 である。本書の記述*1は相変わらずつまらないので、例のごとくWikipedia等を参照したが、とりたてて興味を引くものがない。そこで本章のテーマ「学習」についてはパスするが、…

ネットワークの構造(1) スケールフリーとは?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(8) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第3節 ネットワークとしての生命 第3項 ネットワークの構造 である。山口は、前項「システム生物学の登場」の最後のほうで、生物学研究…

スキーマとスキーム

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(23) 今回は、第12章 記憶 のうち、「知識とスキーマ」をとりあげる 私は「心理学」を試験勉強しているのではなく、人間心理や認知機構に興味があるので、本書の叙述にしたがい、基本用語をとりあげてい…

生物とは「情報機械」なのか?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(7) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第3節 ネットワークとしての生命 第2項 システム生物学の登場 である。 バイオインフォマティクス(生命情報学) 金子邦彦は、遺伝子・…

長期記憶(意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶、プライミング)

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(22) 今回は、第12章 記憶 のうち、長期記憶 をとりあげるが、本書の記述やネット検索での用語解説もあまり面白くない。「ふ~ん。それで?」という感じである。文脈なしで、用語解説だけを読んでいるか…

「生命」とは何か? バイオインフォマティクス

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(6) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第3節 ネットワークとしての生命 第1項 バイオインフォマティクス である。 私たちは「生命」について何を知っているのか? タンパク質の…

ワーキングメモリは、メインメモリである。

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(21) 今回は、第12章 記憶 のうち、ワーキングメモリをとりあげる。 ワーキングメモリに関する研究成果は、自閉症や注意欠陥多動障害(ADHD)*1理解を深め、指導方法を改善に導くのに有用であるとされてい…

遺伝子と肥満・アルツハイマー病・身長・自閉症などとの関係 遺伝子型と表現型

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(5) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第2節「遺伝子」概念の揺らぎ の続きである。 山口は、ゲノム科学の劇的な進歩の中で、分子生物学の大前提の一つである「遺伝子」という…

記憶の過程

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(20) 第11章 知覚 の最後に、「知覚の恒常性」という話題があるが、あまり興味が持てないので、備忘としてメモしておくにとどめる。 ある特定の事物を知覚する場合,そこから感覚器官に送られる刺激作用…

美女遺伝子 ミス・キャンパス DNA婚活 イモ掘り婚活

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(4) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第2節「遺伝子」概念の揺らぎ の続きである。 本書ではふれていないが、まず「美女遺伝子」の話題から。次の画像を見て下さい。 https://…

運動知覚 運動視の錯視 アート

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(19) 今回は、第11章 知覚 のうち、「動きの知覚」である。専門用語の説明は、問題意識なく聞いても、右から左に抜けていくものだが、ちょっとだけ引用しておこう。 運動知覚 対象の動きの知覚、対象の位…

遺伝子概念の揺らぎ

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(3) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第2節「遺伝子」概念の揺らぎ である。イントロとして、「遺伝子操作ベビー」と「美女遺伝子」について触れようかとも思ったのだが、本節…

奥行きの知覚 遠近法 日本の秋景色

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(18) 今回は、第11章 知覚 のうち、「奥行きの知覚」である。 奥行きの知覚 「網膜の2次元像から、いかにして3次元像を知覚するのか?」というのが最初の問いである(写真や絵画やテレビなどは2次元)…

ポスト・ゲノム時代 合成生物学 人工生命

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(2) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第1節 ゲノム科学の進展と現状 の続きである。 ゲノム・プロジェクト以後の時代(つまり現代)を、ポスト・ゲノム時代と呼ぶそうである。…

形の知覚 エッシャーの「昼と夜」 ゲシュタルトの法則 「ブルータリズム」のウェブデザイン

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(17) 今回は、第11章 知覚 の「形の知覚」である。 例えば、次の絵を見て下さい。 Allison Stewart, Paysage 3, oil and mixed media on canvas, 48 x 36" https://www.houzz.jp/projects/2572255 これを…

ヒトゲノムの完全解読 その後は?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(1) 今回から、『ひとは生命をどのように理解してきたか』を読むことにする。本書の構成は、 序章 生物学と哲学 第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第2章 生物学の成立構造 第3章 二つの…

幸せホルモン アタッチメント理論 皮膚感覚の身体化認知

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(16) 今回は、第10章 感覚 のうち、「皮膚感覚」である。 皮膚感覚は、全身の皮膚に感覚点が点在していて、そこにある受容器に接触する刺激があると、神経の信号として脳に伝えられることにより生じます…

生きているとはどういうことか? もう一度根元的な問いを問い直すこと

木下清一郎『心の起源』(27) 第6章(最終章)は、「心の未来はどうなるか」である。 [前章までで]ひとまずの結果は得られたとして、筆を止めても良いのかもしれない。しかし、心の世界についてはなお気がかりなことが残っている。それは例えば、心の世…

心の世界 入れ子 壺中の天

木下清一郎『心の起源』(26) 今回は、第5章 心の世界を覗きみる 第6節「心は一つの世界をなしている」である。 「生物世界」と「心の世界」が、次のように対比されている。 生物世界 心の世界 特異点 核酸の出現 統覚の出現 基本要素 遺伝子 表象 基本…

音感覚の心理学(声と種の存続、音の風景、BGM、錯聴)

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(12) 今回は、第10章 感覚 のうち、「音を聞くしくみ」である。 音は、空気や水、物体などを伝わる振動である。音はさまざまな物理的な性質を持っているが、特に、1秒間に繰り返す振動の回数のことを周波…

表象の動きに対して制約を加えるもの

木下清一郎『心の起源』(25) 今回は、第5章 心の世界を覗きみる 第5節「自己展開をなし得る」である。 自己展開の特異性 新しい世界の出現はすでに3つの前提[①特異点、②基本要素、③基本原理]によって保証されているにもかかわらず、それが実際に動き…

色感覚 マリンハチェットフィッシュは、どんな色を見ているのだろうか?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(11) 今回は、第10章 感覚 のうち、「色感覚」をとりあげよう。「色」に関する話題は幅広く(Wikipedia参照)、色感覚以外の色の話のほうが面白いのだが、本書から離れすぎるので、別途としたい。 人間に…

基本原理としての抽象

木下清一郎『心の起源』(24) 木下は、世界が開かれるための4条件(世界の始まりを考えるための4つの要請)として、①特異点、②基本要素、③基本原理、④自己展開を考えていた。今回は、第5章 心の世界を覗きみる 第4節「基本原理としての抽象」である。…

あなたは本当に性的被害者なのか? ショッピングモールの迷子 

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(10) 本書では、第8章 ストレスとメンタルヘルス の「心理病理はなぜ起こるか-精神分析学の説明」の項で、また第9章 カウンセリングと心理療法 の「フロイトと精神分析療法」の項で、フロイトの精神分析…

基本要素としての表象

木下清一郎『心の起源』(24) 本書は漫然と読んでいても面白くない。「人工物(機械、AI)は、心を持てるのか?」、「心の世界は、本当に存在するのか?」というような問いを持っていると面白いのではなかろうか。期待外れになるかもしれないが…。 今回…

心の扉はノブが内側にしか付いてはいない。だから、真正面からの正攻法では、相手は心の扉を開いてはくれません。

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(9) 今回は、第9章 カウンセリングと心理療法 のうち、「クライエント中心療法」をとりあげよう。最初、本書やwikipediaや脳科学辞典の説明を読んでも、興味を持てないのでパスしようと思ったのだが、まと…

統覚(心の世界を開く特異点)

木下清一郎『心の起源』(23) 今回は、第5章 心の世界を覗きみる 第1節 心をその働きからみる と 第2節特異点としての統覚 である。 心の働く「場」を構成している要素は、どうやら生物世界に属しているらしい。…心とは、その「場」をみる限りでは生物…