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気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

事実認識と価値評価(3) 普遍的な価値判断 (キリスト教の黄金律?)

加藤尚武『現代倫理学入門』(14) 今回は、前回に引き続き、本書を離れて、細見論文*1にしたがい、価値判断論争をみていくことにしよう。 価値判断論争とは、 価値判断は客観的に正当化されうるか。事実判断または事実認識は価値判断から中立でありうるか…

数学と経営 もしもし、スティーブ・ジョブスですが…

吉成真由美『知の逆転』(11) トム・レイトン(Tom Leighton、1956-)に対するインタビューの続きをみていこう。 多くのユーザーが、アノニマスなどのグループの掲げる目的や目標に、ある程度賛同しているんですね。「動物への虐待をやめよう」とか、け…

命の限りに 蝉(セミ)が鳴く

今回は、前半でいささか思考をめぐらし、後半で感傷的な解釈をしましょう。 私たちにお馴染みの蝉の種類とその鳴き方は、次の通りです。 http://siritai-zatugaku.com/archives/944.html (http://yahuhichi.com/archives/342.html)より ちょっと、理科の知…

価値相対主義(2) 人間としての矜持を持つ

平野・亀本・服部『法哲学』(18) いま読んでいる箇所は、第3章 法的正義の求めるもの 第2節 価値相対主義 である。 本節では、イギリスの哲学者ムーア(1873-1958)の「自然主義的誤謬」や「直覚主義」や「情動主義」などのメタ倫理学について、簡潔に…

水俣病(10) 行政は、水俣病の「負」の主役である

行政とは、公務員の行為であるが、それは同時に、民主主義の理念を尊重する者にとっては、「私たち」の行為でもある。それゆえ、タイトルの「行政」は、「私たち」とも言い換えることができる。 2015年6月、衆議院調査局環境調査室は、「水俣病問題の概要」…

市場万能論(1) 取引しなきゃ死んじゃうよ

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(3) 今回は、「第2章 市場万能論のウソを見抜く 第1節 市場のロジックを検証する」である。(引用は、文意を損なわない程度に、若干変形したところがある) 最初に、市場における取引の話があり、 稲葉 譲渡…

事実認識と価値評価(2) 「彼女は八頭身で知性もある。ミス・キャンパスにすべきである」と主張してはいけないのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(13) 前回、次のような問題をたてた。 A:所得格差・資産格差が拡大している。格差是正策を打つべきである。 B:彼女は八頭身で知性もある。ミス・キャンパスにすべきである。 現代倫理学の基本的なドグマからすれば、A,…

アカマイ アノニマス ハクティビズム

吉成真由美『知の逆転』(10) 今回は、トム・レイトン(Tom Leighton、1956-)に対するインタビュー。アカマイ・テクノロジーズ社のサイエンティストを14年間務め、現在はCEO(最高経営責任者)。ネットワークへのアルゴリズムの応用において世界有数…

価値相対主義(1) 学者は「正義」を主張してはならない?

平野・亀本・服部『法哲学』(17) これまで「亀本」氏を、「亀田」氏と誤記していたところが多数ありました。お詫びして訂正いたします。 今回から「価値相対主義」の話に入るが、その前に、取り残した「社会的正義」について、簡単にみておこう。 社会的…

水俣病(9) 国・県の責任と義務 なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ?

2016年5月1日、水俣病の公式確認(1956年5月1日)から60年を経過したが、問題は解決していない。畠山武道「水俣病事件と国・県の責任」*1は、こう述べている。 問題解決の兆しはいっこうに見えない。なぜ、問題解決がかくも長引いたのか。その原因、背景、責…

所有論(2) 赤の世界

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(2) 今回は、「第1章 所有の自明性のワナから抜け出す 第2節 どこまでが自分のものか」である。 形の上では「対談」だが、ここまでのところ、全く「対話」がないように思う。 稲葉は何を言いたいのかよくわ…

事実認識と価値評価(1) 「格差が拡大している。是正策を打つべきである」と主張してはいけないのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(12) 今回から、第7章 <……である>から、<……べきである>を導き出すことはできないか に入る。 加藤は、「<……である>から<……べきである>を導いてはならない」は、現代倫理学の基本的なドグマ[教義、堅固な信条]とな…

人工知能(3) アルファ碁 2045年問題 AI兵器

吉成真由美『知の逆転』(9) ミンスキーに対するインタビューから離れるが、アルファ碁-思考するコンピュータの話を続けよう。この話の焦点は、次の点にあると思う。 1) 一つのネットワークが次の一手(ポリシーネットワーク、小局)を考え、別のネットワ…

手続的正義(2) 立法と行政と裁判

平野・亀本・服部『法哲学』(16) 今回は、「法における手続的正義」の話であるが、話がやや抽象的なので、何を問題にしているのかをよく把握したい。 まずは、本書第2章「法システム」において、法システムの重要な構成要素として、「法的活動」(広義…

水俣病(8) 見て見ぬふり 川崎市水道局いじめ自殺事件

職場でのパワハラ、セクハラ等のハラスメントは珍しいことではない。そして、そのような行為を「見て見ぬふり」をしている者も多い。一例として、「川崎市水道局いじめ自殺事件」を取り上げよう。 以下のような事件である。 Aは、昭和63年4月、川崎市の職員…

所有論(1) お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(1) 本書は、稲葉振一郎(1963-)と立岩真也(1960-)の対談(2005)をもとに構成されており、次の章からなる。 第1章 所有の自明性のワナから抜け出す 第2章 市場万能論のウソを見抜く 第3章 なぜ不平等は…

生命倫理学(4) 先日出産したのですが、先天性多発奇形児でした

加藤尚武『現代倫理学入門』(11) 加藤の生命倫理学の検討に入る前に、YAHOO知恵袋にあったQ&Aを転載しておこう。 layc91113さん2013/3/5 15:08:22 先日出産したのですが、先天性多発奇形児でした。染色体には異常がないため、親より長く生きてしまい…

手続的正義(1) ミス・キャンパスを選考する

平野・亀本・服部『法哲学』(15) 今回は「手続的正義」の話である。しかし、いきなり「手続的正義」と言われても、一体何を問題にしているのかよくわからない。亀本は、次のように説明している。 手続的正義の考え方は、実質的正義の問題について一致が…

水俣病(7) 公務員の「不作為」という犯罪(2)

*タイトルを、「アート空間と政治空間」から「水俣病」に変更しました。 水俣事件の教訓の一つに、「公務員の不作為という犯罪」の問題がある。今回はこれの2回目である。 「犯罪」というのは言い過ぎかと思うが、「許されることではない」を強調したもの…

自己と公共性(2) 生の様式のディスプレイ

齋藤純一『公共性』(19) アーレントやフーコーに依拠した次の文章は、素人にはなかなか難しい。しかし、的外れや誤解を恐れず、コメントしてみよう。(連想したことを書いてみたということである) 公共性は、生命の保障や共通世界の正義には還元されな…

生命倫理学(3) 重度の意識障害者は「人間」か?

加藤尚武『現代倫理学入門』(10) 生命倫理学は、「人工妊娠中絶、重度障害児の出生直後の安楽死(または治療停止)、苦痛回避のための安楽死、脳死者からの臓器摘出」といった問題を扱う。「人間とは何か?」が問われている。 加藤は、生命倫理学で主流…

形式的正義と普遍化可能性

平野・亀本・服部『法哲学』(14) 権利・義務としての正義 ある学者(U)は、正義を次のように定義した。 各人に、各人のものを、配分する恒常不変の意思 これでは意味不明である。亀本は次のような意味であると言う。 各人に、各人の当然受けてしかるべ…

水俣病(6) 公務員の「不作為」という犯罪

水俣事件の教訓の一つに、「公務員の不作為という犯罪」の問題がある。今回はこれを取り上げよう。 「犯罪」というのは言い過ぎかと思うが、「許されることではない」を強調したものと受け止めて欲しい。 不作為とは何かというと、 自ら進んで積極的な行為を…

自己と公共性(1) アイデンティティという危機

齋藤純一『公共性』(18) 齋藤は、「自己」も「公共性」も一義的なものではないとして、次のように述べている。 個人と共同体という問題系は、個と共同の関係を、一人の個人が一つの国家に帰属する、ある成員がある共同体に帰属するという仕方で描き出す…

生命倫理学(2) 「障害児」であっても、産むべきなのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(9) 生命倫理学は何を問題にしているのか。それは、「人工妊娠中絶、重度障害児の出生直後の安楽死(または治療停止)、苦痛回避のための安楽死、脳死者からの臓器摘出」といった問題である。こういう問題を考えているから「生…

正義の観念

平野・亀本・服部『法哲学』(13) 今回から「正義」の話に入る。亀本は、正義の定義に関する様々な考え方を整理しているので、ざっと見ておきたい。 戦争の正義 どのような場合に戦争が許されるかという、多少なりとも学問的な正義論の分野がある。 独裁政…

親密圏/公共圏(3) 別様の暮らし方を提示する

齋藤純一『公共性』(17) 斎藤は、「公共圏が人びとの〈間〉にある共通の問題への関心によって成立するのに対して、親密圏は具体的な他者の生/生命への配慮・関心によって形成・維持される」と述べていた(親密圏/公共圏(2)愛の共同体(2)参照)。…

水俣病(5) 今も世界中で《水俣》が繰り返されているのではないか?

明日(2016年5月1日)、水俣病の公式確認(1956年5月1日)から60年となります(水俣病の発生はそれ以前)。未だに、患者認定を求める人や裁判を起こしている人がいます。水俣病事件は解決済みの過去の事件とは言えないでしょう。 来る5月3日~5日に、東大…

生命倫理学(1) 自己意識を持った存在?

加藤尚武『現代倫理学入門』(8) 生命倫理学では、人工妊娠中絶、安楽死、臓器移植などの問題を扱う。何が問われているのか。 「生きている」とはどういうことか。「植物人間」は人間なのか。「精神異常者」は人間なのか。胎児は人間なのか。奴隷は人間な…

法の射程と限界(4) 法は「自由」を脅かすものなのか?

平野・亀本・服部『法哲学』(12) 法の限界 法のそのつどの守備範囲は、①法の基本原理に照らして正当化されうるものか。②法の基本的特質――その内的構造や作動様式による制約――及び規制対象の性質から見て、法の規制になじむものか、と言う観点から絶えず…

水俣病(4) 官僚「山内豊徳」の死

1990年12月5日、水俣病裁判の国側の責任者として、和解拒否の弁明を続けていた環境庁企画調整局長(山内豊徳)が自殺した。53歳であった。 山内豊徳とは、 陸軍軍人であった山内豊麿の子として福岡市に生まれる。幼くして両親は離婚し、9歳の時に父は出征…

水俣病(3)  私たちは何処へ行くのか

2014年11月22日─30日、岐阜市民会館で、「水俣・岐阜展」(主催:水俣フォーラム)が開催されました。 その案内チラシに、以下のような写真がのっていました。 http://www.minamata-f.com/minamata-gifu_flyer.pdf 小柴一良の写真集「水俣1974-2013」中、次…

水俣病(2) 「人生」を失う

前回記事の最後の方で、 2009年7月:水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法(通称:水俣病救済特別措置法)が成立。その前文において「国及び熊本県が長期間にわたって適切な対応をなすことができず、水俣病の被害の拡大を防止できなかった…

水俣病(1) 普通に魚を食べて、手足が麻痺し、脳が蝕まれ、ついには狂って死んでいく

下の写真をしばらく眺めて、思いを巡らしてみてください。…何の予備知識もなく、この風景を眺めた場合、どのように見えるでしょうか。 http://www.geoc.jp/content/images/blog/2013/08/DSC009321.jpg ***** 上の写真は、水俣メモリアルです。これは、①…

功利主義(7) 「自由な選択」は何を意味するか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(7) これまで功利主義を、 第1に、ある行為が、社会的に望ましいか否かを、「幸福」によって、決定する。[行為功利主義] 第2に、ある制度(法、規則)が、社会的に望ましいか否かを、「幸福」によって、決定する。[規則功…

法の射程と限界(3) パターナリズム 覚醒剤と煙草

平野・亀本・服部『法哲学』(11) 服部は、人々の自由への正当な干渉の形態として、次の4つを挙げている。 危害原理…ある行動が他者に害を与えるようなものであった場合、その行動は法によって制限される。 法による道徳の強制(リーガル・モラリズム)……

親密圏/公共圏(2) 愛の共同体(2)

齋藤純一『公共性』(16) 前回は、「親密圏」という言葉を、「家族」と言う名の「愛の共同体」の意味に理解しておいた。今回は、親密圏と家族と愛の共同体は、意味合いが異なるという話である。その前に、「公共圏」との違いについて、 公共圏と親密圏を…

日本は20位 人間開発指数(HDI)とは?

UNDP『人間開発って何?』(2) パキスタンの経済学者マブーブル・ハック(Mahbub ul Haq、1934-1998)は、次のように述べている。 たった1つでいい。ただ、GNPほど人間生活に無理解でない尺度が必要なんだ。 この言葉の意味を確認しておきたい。 G…

功利主義(6) どうすれば幸福の計算ができるのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(6) もう一度、功利主義とはどういう考え方であったか確認しておこう。この基本のところを押えておかないと、「幸福の計算」の意味合いがわからなくなる。 功利主義は、行為や制度の社会的な望ましさは、その結果として生じる…

法の射程と限界(2) 「被害者なき犯罪」は処罰しなければならないのか?

平野・亀本・服部『法哲学』(10) 服部は、「自由への正当な干渉」の第2候補として、リーガル・モラリズムを挙げている。 第2に、売春や猥褻文書頒布などの道徳犯罪に関して、法による道徳の強制、すなわちリーガル・モラリズムの是非が問われる。 リー…

親密圏/公共圏(1) 愛の共同体

齋藤純一『公共性』(15) 今回から、第4章 親密圏/公共圏であるが、まず「愛の共同体」としての「家族」が話題になっている。齊藤の論述を見ていく前に、一般的な「家族」概念を確認しておこう。 婚姻によって成立した夫婦を中核にして、その近親の血縁…

功利主義(5) 規則功利主義 人はルールを守っていればそれで良いのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(5) 加藤は、功利主義(最大幸福原理)の欠点を5つ挙げていた。(功利主義(4)「幸福」の追求は、望ましいことなのか?参照) 単一原理主義の破綻…「行為や制度の社会的な望ましさ」を考える際の原理は、幸福だけではない。…

法の射程と限界(1) 他人に迷惑をかけなければ、何をしようと自由なのか?

平野・亀本・服部『法哲学』(9) 服部は、法的規制の正当性とその限界について、次のように述べている。 公権力機関による強制の正当性が問われるとき、人々の自由への正当な干渉の形態として、まず第1に挙げられるのは、古典的自由主義者ミルが『自由論…

人間開発 - 創造的な人生を享受するために

UNDP『人間開発って何?』(1) 「人間開発」といってもピンとこないかもしれない。 人間開発とは、人々が各自の可能性を十全に開花させ、それぞれの必要と関心に応じて生産的かつ創造的な人生を開拓できるような環境を創出することです。(資料1:人…

社会国家の変容(4) 生の偶然性と社会的連帯

齋藤純一『公共性』(14) 今回は「人間の安全保障」(Human Security)について、詳しくみていこうと思っていたのだが、別の記事で書くことにし、第4節の「社会的連帯の再生をめぐって」に進むことにする。 斎藤は、社会国家がこの20年ほどの間に(本書…

功利主義(4) 「幸福」の追求は、望ましいことなのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(4) 功利主義の問題点の話に入る前に「利己主義(エゴイズム)」の話をしておこう。「利己主義」とは、「自分の利益を最優先にし,他人や社会全般の利害など考えようとしない態度」(大辞林)である。このように書けば、ほとん…

法システムの構造と機能(4) 裁判官は「将来にわたる利害関係の調整」ができない

平野・亀本・服部『法哲学』(8) 法システムの機能…どういう機能があるのか。1.社会統制機能、2.活動促進機能、3.紛争解決機能、4.資源配分機能。 裁判外紛争処理(ADR)とは、何だろうか。 法的思考の特徴は?

社会国家の変容(3) テロ予備軍を生み出す社会への道程(2) Gated community & ghetto

齋藤純一『公共性』(13) 問題は、社会がアクティブなものに変化するならば、彼女たちの社会的位置づけ、彼らに対する表象も大きく変化するということである。第1に、そうした人びとは、自己統治の能力を欠いた、あるいはその意欲のない人びととして表象…

功利主義(3) 「不満足な豚」と「満足なソクラテス」

加藤尚武『現代倫理学入門』(3) J.S.ミルの有名な言葉、「満足した豚であるより、不満足な人間である方が良く、満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスである方が良い」を知っている人は多いだろう。「満足した豚」とは、感覚的な=肉体的な=低級な…

法システムの構造と機能(3) 「権利」とは何か? 「法」があるから「権利」があるのか?

平野・亀本・服部『法哲学』(7) 生存権や中絶の権利を考える前に。…権利とは、「一定の利益あるいはその利益を守ろうとする意思が、法によって承認され、その実現について国家機関、とくに裁判所による保障を与えられているもの」。 では、法があるから権…