気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

私たち

「他人に迷惑をかけなければ何をしても良い」という自由の空しさ

加藤尚武『現代倫理学入門』(27) 加藤は、自由主義の原則を次の5つ(の条件)に要約していた。 ①判断能力のある大人なら、 ②自分の生命、身体、財産に関して、 ③他人に危害を及ぼさない限り、 ④たとえその決定が当人にとって不利益なことでも、 ⑤自己決…

著作物のフェアユース(fair use、公正な使用)

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(11) 塚越は、実際のハクティビズムの例をいくつか挙げている。すべてがハクティビズムかどうか分からないが、ともかく順番にみていこう。 まず最初にDeCSSであるが、要約すれば、次のようになろう。 映画というのは…

共同体論(2) 共同体論者の自由主義(リベラリズム)批判

平野・亀本・服部『法哲学』(30) 前回に引き続き、共同体主義(コミュニタリアニズムcommunitarianism)の話である。平野は、共同体論者による「自由主義的な正義の議論」の批判を紹介しているのだが、その説明にやや分かりにくいところがあるので、以下…

不平等論(11) 思いを超えてあってほしいという思い

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(15) 前回、稲葉は、「所有のみならず、権利一般に関して、周囲の同じ世界に共存している他人が認めようが認めまいが、人はある権利を持っているというふうに、多くの場合において言える」と述べていた。これ…

タバコを吸うという愚かなことをする権利

加藤尚武『現代倫理学入門』(26) 今回は、自由主義の原則の第4番目、「④たとえその決定が当人にとって不利益なことでも」についてである。 ある行為をすること、または差し控えることが、彼のためになるとか、あるいはそれが彼を幸福にするであろうとか…

サイバースペースの自治から現実の社会改革へ

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(10) 今回より、第3章 創造性とウィキリークス に入る。世間(世界)を騒がせたウィキリークスをどう評価するか。 コンピュータとインターネットの普及は、軍と政府の巨大な投資によってしか成立し得なかった。ハッ…

内界と外界

木下清一郎『心の起源』(7) 内界と外界 生物体には、必ず内界と外界がある。…生物に心が生じてくるのは、この平凡なことが遠因になっている。…心の働きは内界と外界との関係として始まり、また常にそういうものであり続ける。 生物学的に見る限りでは、漠…

共同体論(1) 彼氏レンタル/彼女レンタル

平野・亀本・服部『法哲学』(29) 今回は、第4章 法と正義の基本問題 第5節 共同体と関係性 である。本節では、共同体主義(コミュニタリアニズムcommunitarianism)が扱われている。 まず共同体主義とは何かについての概要を3つ並べてみよう。ブリタ…

不平等論(10) 土地所有権について

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(14) 前回、稲葉は、 稲葉 「所有はたった一人で始めることができるのか、たった一人で、ほかの誰のことも気にせずに、「これは俺のものだ」というふうに人は言うことができるのか」という問いを立てて、それ…

他人に危害を及ぼさない限り、何をしても良いのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(25) 今回は、自由主義の原則の第3番目、「③他人に危害を及ぼさない限り」についてである。 この条件は、「他者危害の原則」とも呼ばれる。自由主義の原理の中心部分であり、アトミズム[個人主義]と功利主義の性格の強い規…

平等(3) 「福利の平等批判」の批判、「アファーマティブ・アクション批判」の批判

平野・亀本・服部『法哲学』(28) 福利(結果)の平等に対する批判をみておこう。 「平等化」批判論 福利の平等論は、スタートラインの平等ではなくゴールの平等を目指す点で機会の平等論とは根本的に異なる。初期格差としてのハンディキャップの埋め合わ…

不平等論(9) ヴィーナスはいかが? 金星の土地売ります!

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(13) 前回、立岩は六つ目の話として、次のように述べていた。 立岩 国家については、マルキシズムとのからみで加えておけば、世界同時なんとかっていうのが昔流行ったんだが、ある種の国際主義はロジカルには…

いのち(臓器)の売買 所有と自己決定

加藤尚武『現代倫理学入門』(24) 加藤は、自由主義の原則を次の5つ(の条件)に要約している。 ①判断能力のある大人なら、 ②自分の生命、身体、財産に関して、 ③他人に危害を及ぼさない限り、 ④たとえその決定が当人にとって不利益なことでも、 ⑤自己決…

猥褻で下品な電脳空間 (?)

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(8) ハクティビズムとは、「ハック(hack)とアクティビズム(activism,積極行動主義)とを組み合わせた造語」である。ハクティビズムの活動家はときとしてハクティビスト(Hacktivist)と呼ばれる。 Hackは俗語で、「…

平等(2) 「機会の平等」と「結果の平等」

平野・亀本・服部『法哲学』(27) 前回記事の「機会の平等」と「結果の平等」についての引用部分を再掲する。 分配的正義については、財の分配方式に関して、「機会の平等」と「結果の平等」という相異なる考え方がある。前者は、財を獲得するための機会…

不平等論(8) SDGsに合致しているかどうかを問うことが、政治や経済、生活のありようを変えていく糸口になります(国谷)

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(13) 立岩 マルキシズムについては、ぼくはほとんど書いたことがないのだけれど、いくつか列挙します。一つ、搾取の議論をそのままで使わないというか使えないというのは出発点にあった。…そういう話をされて…

判断力のない大人 判断力のある子ども

加藤尚武『現代倫理学入門』(23) 加藤は、自由主義の原則を次の5つ(の条件)に要約している・ ①判断能力のある大人なら、 ②自分の生命、身体、財産に関して、 ③他人に危害を及ぼさない限り、 ④たとえその決定が当人にとって不利益なことでも、 ⑤自己決…

電子フロンティア財団とサイファーパンク

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(7) 電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation, EFF)は、1990年6月に設立された。これは、「デジタル時代の市民的自由を擁護する非営利組織」である。「市民的自由」と「非営利組織」という2つの言葉に…

平等(1) Suum cuique 各人に各人のものを!

平野・亀本・服部『法哲学』(26) 今回は、第4章 法と正義の基本問題 第4節 平等である。*1 平等の理念 私たちは平等ではない。容貌が違い、性格が異なり、体力、知力、芸術的才能、いずれにおいても十人十様である。人種が異なり、性別が異なり、信条…

不平等論(7) 赤ちゃんは、社会主義的人間である?

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(12) 前回、立岩は次のようなことを話していた。 何をするか、しないかを考えること。 乱暴に考えないこと。 人間ってこんなもんさねっていうところで話を収めないこと。 この件に関してはこの方が良いはずだ…

アローの不可能性定理 多数決 民主主義

加藤尚武『現代倫理学入門』(22) 前回の「囚人のジレンマ」に続き、「アローの不可能性定理」が取り上げられているので、これを理解しようと思ったのだが、なかなか難しい。今後ゆっくりと勉強することにして、思いついたことをメモしておこう。 アロー…

ストールマンのコピーレフト 著作物は「より優れたもの」にならなければならない

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(6) 塚越は、「コピーレフト」の概念について説明している。これはソフトウェアに限らない応用範囲の広い概念ではないかと思う。塚越の説明だけではちょっと分かりにくいので、今回は、wikipediaの説明を先にみておこ…

市場(3) 外部経済、外部不経済を考える

平野・亀本・服部『法哲学』(25) 前回、市場の失敗として、①独占・寡占、②外部性(外部経済、外部不経済)、③情報の非対称性、④公共財についてふれたが、今回はこのうち②の外部性について、もう少し詳しく見ておこう。 まず、外部経済・外部不経済とは、…

不平等論(6) 誤った二分法 乱暴に考えないこと

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(11) 何をするか、しないかを考える 立岩 第1点。何をするか、しないかを考えること。…人がスタートラインにつくときに自分が持ってる自分の身体以外の手持ちの部分をわりとフラットにしよう、そしたら結構…

「囚人のジレンマ」と「安全保障」(部族間の縄張り争い)

加藤尚武『現代倫理学入門』(21) 第10章は、「正直者が損をすることはどうしたら防げるか」で、「囚人のジレンマ」と「アローの不可能性定理」が扱われている。今回は、そのうち「囚人のジレンマ」を取り上げる。 本書の「囚人のジレンマ」は、全然面…

監視国家とジマーマンのPGP

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(5) 暗号技術をネットに放流-PGP暗号 暗号と戦争の長きにわたる歴史が証明するように、暗号は政治的に重要な位置を占めている。とすれば、暗号技術の独占は軍事力のバランスを非対称にし、強者による弱者の支配に直結…

市場(2) 政府の失敗 市場の失敗

平野・亀本・服部『法哲学』(24) 政府の失敗 中央集権的な政府機能が効率的でないことを、通常「政府の失敗」という。主要なポイントは3点にわたる。 官僚機構が非効率…集権化された政府機能を果たすために組織運営費用がかかり、各部局の機能は配分さ…

不平等論(5) 「誰もが支え合う共生社会」のビジョン

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(10) 前回、立岩は、次のようなことを言っていた。 中央指令型の統制経済はうまくいかない。実際にうまくいかなかったし、理論的に正当化もできない。 協同組合主義は「参加」とか言っているが、なんか「だる…

普遍化可能性の議論(2) 「おい、山田君、そこの自転車をどけてくれ」

加藤尚武『現代倫理学入門』(20) 今回は、第9章「思いやりだけで道徳の原則ができるか」の続きである。加藤は、ヘア(1919-2002、イギリスの哲学者)の普遍化理論について、次のように述べている。 彼が挙げる例はだいたいこんな話である。私が大学の駐…

情報共有と情報秘匿  公開鍵 RSA暗号とは?

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(4) 今回から、第2章 ハッカーと権力の衝突 に入る。テーマは、「情報共有と情報秘匿」である。塚越は、まず情報秘匿のツールである「暗号」について説明している。 https://tozny.com/wp-content/uploads/2014/11/cr…