気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

私たち

不平等論(3) フェアプレイの精神

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(8) 前回、立岩は次のようなことを述べていた。(不平等論(2)効用の個人間比較を考える 参照) (1) とりあえずミニマル…基本は「自由放任」、但し、競争に負けても、飢え死にしない程度の水と食料は与えよ…

正義論(2) 「正義の原理を、純粋な形式で決める」ということ

加藤尚武『現代倫理学入門』(18) 今回は、第8章「正義の原理は、純粋な形式で決まるのか、共同の利益で決まるのか」の続きである。正義の具体的内容について論ずるものではない。前回述べたように、「倫理的な命題に関しても、体系的な思考、演繹的な思…

ハッカー ライフゲーム(生命の誕生、進化、淘汰)

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(2) コンピュータの可能性に魅了された人々はハッカーとなり、生きがいを与えられた。彼らはコンピュータに自分を委ね、コンピュータに自分を投影する。それは1957年にソ連によって打ち上げられた世界初の人工衛星スプ…

自由(1) リバタリアニズム

平野・亀本・服部『法哲学』(22) 今回は、リベラリズム(liberalism、自由主義)ではなく、リバタリアニズム(libertarianism、自由至上主義)の話であるが、その前に「自由」について簡単な説明がある。 私たちは特定の信仰を持つことを強要されない[…

不平等論(2) 効用の個人間比較を考える

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(7) 立岩 今の話で言うと、リソースと呼ぶかはともかくとして、それ[モノ・情報、身体的・精神的能力]は、結局何らかの形で人に使用され利用されるから意味があると考えるわけでしょ。これは要するに手段な…

正義論(1) 定言命法と功利主義

加藤尚武『現代倫理学入門』(17) 今回は、第8章「正義の原理は純粋な形式で決まるのか、共同の利益で決まるのか」である。正義論が、こんなテーマから始まるのはいささか奇妙な感じがするが、このまま読み進めていこう。(私の読書ノートは、できる限り…

ハッカーは、コンピュータ犯罪者なのか?

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(1) Amazonの内容紹介より サイバーテロリスト? それとも正義の味方? ウィキリークスやアノニマスは新しい社会を生み出すのか? アノニマス活動により政府や企業にさまざまな被害が出たり、ウィキリークスによって各国…

「思いやりの原理」で、話し合うこと

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(3) 「今度の休日にどこへ出かけようか」の楽しい話や、「新商品Aの販促にどういう手を打つか」のビジネス上の問題、さらには「難民をどう支援するか」のシリアスな問題など、話し合い(議論)を必要とする無数の問題…

功利主義(2) その問題点は?

平野・亀本・服部『法哲学』(21) 功利主義の考え方は、これまで様々に批判されてきたが、平野はこれを整理している。 ①個々人の別個独立性に真剣な考慮を払っていない。 功利主義の方法は、公平原則によって個人の善観念に等しい重要性を与えるから、そ…

不平等論(1) 「機会の平等」と「結果の平等」

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(6) 今回から、「第3章 なぜ不平等はいけないのか」に入る。 立岩 分配を考えるときに、それを強制を介さないで行うのがよいか、強制があってよいと考えるかで分かれる。…権利ということを少しだけでも強い意…

ヒュームの法則は論駁されたのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(16) <……である>から、<……べきである>を導き出すことはできないか の話の続きである。 加藤は、自然主義的誤謬批判の立場とサルトル(フランスの哲学者、1905-1980)の実存主義とは、まったく変わりがないとして、サルト…

悲劇のロザリンド嬢? データ盗用の「二重らせん」論文?

吉成真由美『知の逆転』(13) ワトソンの著作『二重らせん』の内容紹介 生命の鍵をにぎるDNAモデルはどのように発見されたのか? 遺伝の基本的物質であるDNAの構造の解明は今世紀の科学界における最大のできごとであった。この業績によってのちにノーベル…

功利主義(1) その特徴(特質)は何か?

平野・亀本・服部『法哲学』(20) 今回より、第4章 法と正義の基本問題(平野仁彦)に入る。第1節は、「公共的利益」である。 公共的利益とは、公の必要に関わる共通利益のことであるが、それには、平和、治安、秩序維持から、資源、環境、運輸、公衆衛…

市場万能論(3) 投資、投機、バブル

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(5) 立岩 この『「資本」論』[稲葉の著作]について言えば、ある種ポジティブな、いま考え中っていう以上のメッセージを受け取ってしまう。それは誤読であるということで終わるんだったら終わっていいし、そ…

自然主義的誤謬 ヒュームの法則 直覚主義(直観主義) 情緒主義(情動主義)

加藤尚武『現代倫理学入門』(15) 第7章 <……である>から、<……べきである>を導き出すことはできないか に入ると言いながら、本書を離れて、ウェーバーとシュモラーの「価値判断論争」を見てきた。しかし、あえて、その「まとめ」はしないでおく。 加…

本当の答えをみつけよう (ワトソン)

吉成真由美『知の逆転』(12) 今回は、ジェームズ・ワトソン(James Watson、1928-)に対するインタビュー。1962年、クリック、ウィルキンスと共に、DNA二重らせん構造の発見で、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。インタビューは、2011年。 𠮷成…「…

水俣病(11) 「ミナマタ」のいま

水俣市は、2008年(平成20年)7月、国の環境モデル都市(低炭素社会の実現に向けて温室効果ガスの大幅削減などへの取り組みを行うモデル都市)に認定された。 環境都市・水俣市を訪ねて www.youtube.com 「道の駅みなまた」は、水俣市の中心街から2 kmほど…

リベラルな(自由放任の)正義論?

平野・亀本・服部『法哲学』(19) 今回は「第3節 リベラルな正義論と倫理学」である。 「よい行為・正しい行為とは、ルールに従った行為である」という考え方がある。 西洋の倫理思想上最も有名なルールは、黄金律であった。その肯定的な形態は、「他人…

市場万能論(2) 手続きが適正であるなら、どんな悲惨な結果になろうと受け入れるべきなのか?

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(4) 今回は、「第2章 市場万能論のウソを見抜く 第2節 分配の根拠を示す」である。(引用は、文意を損なわない程度に、若干変形したところがある) 立岩 どういう配分の仕掛けを考えるのがよいのか。…ある種…

事実認識と価値評価(3) 普遍的な価値判断 (キリスト教の黄金律?)

加藤尚武『現代倫理学入門』(14) 今回は、前回に引き続き、本書を離れて、細見論文*1にしたがい、価値判断論争をみていくことにしよう。 価値判断論争とは、 価値判断は客観的に正当化されうるか。事実判断または事実認識は価値判断から中立でありうるか…

数学と経営 もしもし、スティーブ・ジョブスですが…

吉成真由美『知の逆転』(11) トム・レイトン(Tom Leighton、1956-)に対するインタビューの続きをみていこう。 多くのユーザーが、アノニマスなどのグループの掲げる目的や目標に、ある程度賛同しているんですね。「動物への虐待をやめよう」とか、け…

命の限りに 蝉(セミ)が鳴く

今回は、前半でいささか思考をめぐらし、後半で感傷的な解釈をしましょう。 私たちにお馴染みの蝉の種類とその鳴き方は、次の通りです。 http://siritai-zatugaku.com/archives/944.html (http://yahuhichi.com/archives/342.html)より ちょっと、理科の知…

価値相対主義(2) 人間としての矜持を持つ

平野・亀本・服部『法哲学』(18) いま読んでいる箇所は、第3章 法的正義の求めるもの 第2節 価値相対主義 である。 本節では、イギリスの哲学者ムーア(1873-1958)の「自然主義的誤謬」や「直覚主義」や「情動主義」などのメタ倫理学について、簡潔に…

水俣病(10) 行政は、水俣病の「負」の主役である

行政とは、公務員の行為であるが、それは同時に、民主主義の理念を尊重する者にとっては、「私たち」の行為でもある。それゆえ、タイトルの「行政」は、「私たち」とも言い換えることができる。 2015年6月、衆議院調査局環境調査室は、「水俣病問題の概要」…

市場万能論(1) 取引しなきゃ死んじゃうよ

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(3) 今回は、「第2章 市場万能論のウソを見抜く 第1節 市場のロジックを検証する」である。(引用は、文意を損なわない程度に、若干変形したところがある) 最初に、市場における取引の話があり、 稲葉 譲渡…

事実認識と価値評価(2) 「彼女は八頭身で知性もある。ミス・キャンパスにすべきである」と主張してはいけないのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(13) 前回、次のような問題をたてた。 A:所得格差・資産格差が拡大している。格差是正策を打つべきである。 B:彼女は八頭身で知性もある。ミス・キャンパスにすべきである。 現代倫理学の基本的なドグマからすれば、A,…

アカマイ アノニマス ハクティビズム

吉成真由美『知の逆転』(10) 今回は、トム・レイトン(Tom Leighton、1956-)に対するインタビュー。アカマイ・テクノロジーズ社のサイエンティストを14年間務め、現在はCEO(最高経営責任者)。ネットワークへのアルゴリズムの応用において世界有数…

価値相対主義(1) 学者は「正義」を主張してはならない?

平野・亀本・服部『法哲学』(17) これまで「亀本」氏を、「亀田」氏と誤記していたところが多数ありました。お詫びして訂正いたします。 今回から「価値相対主義」の話に入るが、その前に、取り残した「社会的正義」について、簡単にみておこう。 社会的…

水俣病(9) 国・県の責任と義務 なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ?

2016年5月1日、水俣病の公式確認(1956年5月1日)から60年を経過したが、問題は解決していない。畠山武道「水俣病事件と国・県の責任」*1は、こう述べている。 問題解決の兆しはいっこうに見えない。なぜ、問題解決がかくも長引いたのか。その原因、背景、責…

所有論(2) 赤の世界

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(2) 今回は、「第1章 所有の自明性のワナから抜け出す 第2節 どこまでが自分のものか」である。 形の上では「対談」だが、ここまでのところ、全く「対話」がないように思う。 稲葉は何を言いたいのかよくわ…

事実認識と価値評価(1) 「格差が拡大している。是正策を打つべきである」と主張してはいけないのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(12) 今回から、第7章 <……である>から、<……べきである>を導き出すことはできないか に入る。 加藤は、「<……である>から<……べきである>を導いてはならない」は、現代倫理学の基本的なドグマ[教義、堅固な信条]とな…

人工知能(3) アルファ碁 2045年問題 AI兵器

吉成真由美『知の逆転』(9) ミンスキーに対するインタビューから離れるが、アルファ碁-思考するコンピュータの話を続けよう。この話の焦点は、次の点にあると思う。 1) 一つのネットワークが次の一手(ポリシーネットワーク、小局)を考え、別のネットワ…

手続的正義(2) 立法と行政と裁判

平野・亀本・服部『法哲学』(16) 今回は、「法における手続的正義」の話であるが、話がやや抽象的なので、何を問題にしているのかをよく把握したい。 まずは、本書第2章「法システム」において、法システムの重要な構成要素として、「法的活動」(広義…

水俣病(8) 見て見ぬふり 川崎市水道局いじめ自殺事件

職場でのパワハラ、セクハラ等のハラスメントは珍しいことではない。そして、そのような行為を「見て見ぬふり」をしている者も多い。一例として、「川崎市水道局いじめ自殺事件」を取り上げよう。 以下のような事件である。 Aは、昭和63年4月、川崎市の職員…

所有論(1) お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(1) 本書は、稲葉振一郎(1963-)と立岩真也(1960-)の対談(2005)をもとに構成されており、次の章からなる。 第1章 所有の自明性のワナから抜け出す 第2章 市場万能論のウソを見抜く 第3章 なぜ不平等は…

生命倫理学(4) 先日出産したのですが、先天性多発奇形児でした

加藤尚武『現代倫理学入門』(11) 加藤の生命倫理学の検討に入る前に、YAHOO知恵袋にあったQ&Aを転載しておこう。 layc91113さん2013/3/5 15:08:22 先日出産したのですが、先天性多発奇形児でした。染色体には異常がないため、親より長く生きてしまい…

手続的正義(1) ミス・キャンパスを選考する

平野・亀本・服部『法哲学』(15) 今回は「手続的正義」の話である。しかし、いきなり「手続的正義」と言われても、一体何を問題にしているのかよくわからない。亀本は、次のように説明している。 手続的正義の考え方は、実質的正義の問題について一致が…

水俣病(7) 公務員の「不作為」という犯罪(2)

*タイトルを、「アート空間と政治空間」から「水俣病」に変更しました。 水俣事件の教訓の一つに、「公務員の不作為という犯罪」の問題がある。今回はこれの2回目である。 「犯罪」というのは言い過ぎかと思うが、「許されることではない」を強調したもの…

自己と公共性(2) 生の様式のディスプレイ

齋藤純一『公共性』(19) アーレントやフーコーに依拠した次の文章は、素人にはなかなか難しい。しかし、的外れや誤解を恐れず、コメントしてみよう。(連想したことを書いてみたということである) 公共性は、生命の保障や共通世界の正義には還元されな…

生命倫理学(3) 重度の意識障害者は「人間」か?

加藤尚武『現代倫理学入門』(10) 生命倫理学は、「人工妊娠中絶、重度障害児の出生直後の安楽死(または治療停止)、苦痛回避のための安楽死、脳死者からの臓器摘出」といった問題を扱う。「人間とは何か?」が問われている。 加藤は、生命倫理学で主流…

形式的正義と普遍化可能性

平野・亀本・服部『法哲学』(14) 権利・義務としての正義 ある学者(U)は、正義を次のように定義した。 各人に、各人のものを、配分する恒常不変の意思 これでは意味不明である。亀本は次のような意味であると言う。 各人に、各人の当然受けてしかるべ…

水俣病(6) 公務員の「不作為」という犯罪

水俣事件の教訓の一つに、「公務員の不作為という犯罪」の問題がある。今回はこれを取り上げよう。 「犯罪」というのは言い過ぎかと思うが、「許されることではない」を強調したものと受け止めて欲しい。 不作為とは何かというと、 自ら進んで積極的な行為を…

自己と公共性(1) アイデンティティという危機

齋藤純一『公共性』(18) 齋藤は、「自己」も「公共性」も一義的なものではないとして、次のように述べている。 個人と共同体という問題系は、個と共同の関係を、一人の個人が一つの国家に帰属する、ある成員がある共同体に帰属するという仕方で描き出す…

生命倫理学(2) 「障害児」であっても、産むべきなのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(9) 生命倫理学は何を問題にしているのか。それは、「人工妊娠中絶、重度障害児の出生直後の安楽死(または治療停止)、苦痛回避のための安楽死、脳死者からの臓器摘出」といった問題である。こういう問題を考えているから「生…

正義の観念

平野・亀本・服部『法哲学』(13) 今回から「正義」の話に入る。亀本は、正義の定義に関する様々な考え方を整理しているので、ざっと見ておきたい。 戦争の正義 どのような場合に戦争が許されるかという、多少なりとも学問的な正義論の分野がある。 独裁政…

親密圏/公共圏(3) 別様の暮らし方を提示する

齋藤純一『公共性』(17) 斎藤は、「公共圏が人びとの〈間〉にある共通の問題への関心によって成立するのに対して、親密圏は具体的な他者の生/生命への配慮・関心によって形成・維持される」と述べていた(親密圏/公共圏(2)愛の共同体(2)参照)。…

水俣病(5) 今も世界中で《水俣》が繰り返されているのではないか?

明日(2016年5月1日)、水俣病の公式確認(1956年5月1日)から60年となります(水俣病の発生はそれ以前)。未だに、患者認定を求める人や裁判を起こしている人がいます。水俣病事件は解決済みの過去の事件とは言えないでしょう。 来る5月3日~5日に、東大…

生命倫理学(1) 自己意識を持った存在?

加藤尚武『現代倫理学入門』(8) 生命倫理学では、人工妊娠中絶、安楽死、臓器移植などの問題を扱う。何が問われているのか。 「生きている」とはどういうことか。「植物人間」は人間なのか。「精神異常者」は人間なのか。胎児は人間なのか。奴隷は人間な…

法の射程と限界(4) 法は「自由」を脅かすものなのか?

平野・亀本・服部『法哲学』(12) 法の限界 法のそのつどの守備範囲は、①法の基本原理に照らして正当化されうるものか。②法の基本的特質――その内的構造や作動様式による制約――及び規制対象の性質から見て、法の規制になじむものか、と言う観点から絶えず…

水俣病(4) 官僚「山内豊徳」の死

1990年12月5日、水俣病裁判の国側の責任者として、和解拒否の弁明を続けていた環境庁企画調整局長(山内豊徳)が自殺した。53歳であった。 山内豊徳とは、 陸軍軍人であった山内豊麿の子として福岡市に生まれる。幼くして両親は離婚し、9歳の時に父は出征…