気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

読書ノート

コモンズの悲劇

立岩真也『私的所有論』(6) 第2章 私的所有の無根拠と根拠 第3節 効果による正当化と正当化の不可能性 第3項に、共有地(コモンズ)の悲劇がとりあげられている。「コモンズの悲劇」といっても、ドラマティックな話ではない。しかし、「社会の有りよう」…

杓子定規な考え方を打破する

平野・亀本・服部『法哲学』(45) 今回は、第5章 法的思考 第2節 制定法の適用と解釈 第2項 解釈の技法 である。 この「解釈の技法」の話は、法解釈にとどまらず、円滑なコミュニケーションのためには、非常に有用な技法である。場合によっては、屁理屈…

貧困とセーフティネット 生活保護とスティグマ

久米郁男他『政治学』(6) 今回は、第4章 福祉国家 第1節 福祉国家の政策レパートリー である。 病気、老後の不安、失業、子育て等にどう対処するのかという話である。「そんなもの、関係ない」などと思っていると痛い目に合う。 本書は、福祉国家が提供…

生活を豊かにするデザイン  国立西洋美術館

柏木博『デザインの教科書』(4) 今回は、第3章 心地よさについて である。 生活を豊かにするデザイン…椅子やテーブルや食器などのデザインが暮らしを経済的に豊かにするとは誰も思わない。したがって、この「豊かさ」は、メンタルな豊かさということにな…

心の扉はノブが内側にしか付いてはいない。だから、真正面からの正攻法では、相手は心の扉を開いてはくれません。

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(9) 今回は、第9章 カウンセリングと心理療法 のうち、「クライエント中心療法」をとりあげよう。最初、本書やwikipediaや脳科学辞典の説明を読んでも、興味を持てないのでパスしようと思ったのだが、まと…

統覚(心の世界を開く特異点)

木下清一郎『心の起源』(23) 今回は、第5章 心の世界を覗きみる 第1節 心をその働きからみる と 第2節特異点としての統覚 である。 心の働く「場」を構成している要素は、どうやら生物世界に属しているらしい。…心とは、その「場」をみる限りでは生物…

人間の敗北である単なる事実を正義と言いなす

立岩真也『私的所有論』(5) 立岩は、決定の分散と集権について、次のように述べていた。所有の「初期値」をなぜ問題にしないのか? 参照。 決定の分散が決定の集権化よりも好ましいものだとしても、それはある特定の、例えばこの社会における分散された決…

「法の欠缺」(ルールの不存在)に、どう対処すべきか?

平野・亀本・服部『法哲学』(44) 今回は、第5章 法的思考 第2節 制定法の適用と解釈 第1項 法の解釈とは何か である。*1 ここで「法」を、いろいろな組織、団体、グループの決め事、行動の手順(仮に「ルール」と呼んでおく)と考えれば、ルールの解釈…

リベラリズム ロールズ ハイエク ノージック

久米郁男他『政治学』(5) 今回は、第3章 自由と自由主義 第3節 福祉国家型自由主義とその批判 である。 資本主義経済の発展は何をもたらしたか。 産業革命によってもたらされた本格的な資本主義経済の発展は、子どもや女性にまで及ぶ劣悪な労働条件の強…

デザインの社会性と普遍性

柏木博『デザインの教科書』(3) 柏木は、デザインを考える4つの視点を挙げていた。(1) 心地良さという要因、(2) 環境そして道具や装置を手なづける、(3) 趣味と美意識、(4) 地域・社会 である。 視点4 地域・社会 人々は、生活する地域に特有のデザイン…

うつ病 認知の歪みを正す

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(8) 今回は、第9章 カウンセリングと心理療法 である。「心理療法」とは、どういう意味だろうか。前章で、「心理病理*1」について、原因からの心理病理の分類がされていた。 ①外因性(器質性)…脳血管性精…

統覚(統合能力)とは

木下清一郎『心の起源』(22) 今回は、第4章 心のはたらく「場」 第3節 統覚なしには心は生まれない である。 統合能力の存在 自己回帰が働くと、瞬間の堆積はやがて時間となり、位置の堆積はやがて空間になると述べた(時空の特性)。また、原因と結果…

「労働→所有」図式 再起動(restart)によりバージョンアップする

立岩真也『私的所有論』(4) 今回は、第2章 私的所有の無根拠と根拠 の(注14)をとりあげる。 第1 この労働→所有の図式に乗った上で、個々の取り分を問題にする主張が大きな勢力としてあった(マルクス主義の搾取の議論)。…本来は自分に帰属すべき自分の…

規範的判断の正当化の根拠としての「法原理」

平野・亀本・服部『法哲学』(43) 今回は、第5章 法的思考 第1節 法的思考とは何か 第5項 制定法主義と判例法主義 の続きである。 前回ふれたレイシオ・デシデンダイratio decidendi(判決理由)とオービタ・ディクタobiter dicta(傍論)に関しては、本…

不可解・不明瞭な、「消極的自由」と「積極的自由」

久米郁男他『政治学』(4) 今回は、第3章 自由と自由主義 第2節 古典的自由主義の展開 の続き。バーリン(1909-1997)の「消極的自由」と「積極的自由」が説明されている。 消極的自由と積極的自由 バーリンの説明によれば、消極的自由とは、ある人がいか…

ル・コルビュジエのモデュロール

柏木博『デザインの教科書』(2) 第1章 デザインって何? 視点(3) 趣味と美意識 の続き。 秩序としての装飾(非装飾)は、規範(カノン)や様式を生みだしてきた。それは地域や民族そして宗教によって異なり、また時代によって変化してきた。私たちが、デ…

「こころの病気」とは何か?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(7) 第8章は、「ストレスとメンタルヘルス」であるが、本書によらずに、厚労省のサイト「みんなのメンタルヘルス」とwikipediaの記述に従って、「メンタルヘルス」について概観しておこう。最初に「みん…

なぜ「不正」が繰り返し生ずるのか?

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(23) 最終章において、サイバーテロやサイバー犯罪について、少しふれられている。「イランのナタンズにある核施設へサイバー攻撃を行った「スタックスネット(Stuxnet)」と呼ばれるマルウェア(悪意あるソフトウェ…

記憶から、時間・空間、論理、感情が導き出される

木下清一郎『心の起源』(21) 今回は、第4章 心のはたらく「場」 第2節 時空・論理・感情 で、「記憶と照合の相互作用によって情報の自己回帰が始まり、そこから時空・論理・感情の特性が生みだされる」という話である。 記憶と自己回帰 記憶と照合の二つ…

所有の「初期値」をなぜ問題にしないのか?

立岩真也『私的所有論』(3) 第2章 私的所有の無根拠と根拠 第2節 自己制御→自己所有の論理 の続きである。 自由は何も言わない ある範囲のものが(全面的であるにせよ、一定の制約下にあるにせよ)その者の決定のもとにある時、その者の決定は「自由」で…

レイシオ・デシデンダイ 「先例」に拘束されなければならないのか?

平野・亀本・服部『法哲学』(42) 今回は、第5章 法的思考 第1節 法的思考とは何か 第5項 制定法主義と判例法主義 である 裁判官は、何を根拠に(何を判断基準として)判決を下しているのだろうか? もし裁判員になったら、何を根拠に判断することになる…

自由主義は、自分勝手やわがまま放題の別名ではないのか?

久米郁男他『政治学』(3) 今回は、第3章 自由と自由主義 第2節 古典的自由主義の展開 である。 自由主義とは、生命や財産や思想・信条に関する個人の自由を、他者に同等の自由を認めるかぎりにおいて最大限に認めようという思想である。リベラルな国家に…

デザインとは何か?

柏木博『デザインの教科書』(1) 第1章 デザインって何? 4つの視点が挙げられている。 (1) 心地良さという要因 (2) 環境そして道具や装置を手なづける (3) 趣味と美意識 (4) 地域・社会 である。 柏木の説明を聞く前に、この視点について言えば、デザイ…

知能指数(IQ) 監視と保護

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(6) 今回は、第7章 知能である。(第6章 性格 はパスする)。「知能」というのは、いささか問題含みのテーマである。 最初に本書の説明をざっとみて、その後、少し考えてみよう。 20世紀初頭、フランス政…

アノニマスとDDoS攻撃

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(22) アノニマスと市民的不服従の意味を再確認しておこう。 アノニマスとは、 インターネット上の匿名性や情報発信の自由を守ることを旗印に掲げ、これに制限や規制を加えようとする政府や団体、企業などにサイバー攻…

草履虫に、「心」はあるのか?

木下清一郎『心の起源』(20) 抽象的な話で、言葉遊びに終わらないためには、例えば、「草履虫に心はあるのか?」というような具体的な問いを持っていることが必要だろう。抽象的な説明であっても、そのような問いに答えうるものなのかの観点からみていけ…

「自己労働→自己所有」というおかしな論理

立岩真也『私的所有論』(2) 第2章 私的所有の無根拠と根拠 第2節 自己制御→自己所有の論理 私的所有を正当化しようとする言説はどういうものか。 ロック(1632-1704)をはじめとする論者達が持ち出すのは、自己労働→自己所有という図式である。自己に属…

疑わしきは罰せず (オウム真理教)菊池被告は無罪である

平野・亀本・服部『法哲学』(41) 今回は、第5章 法的思考 第1節 法的思考とは何か 第4項 事実認定 であるが、本書の説明ではよく分からないので、wikipedia等を参照し、その後、オウム真理教元信者の菊池被告の上告審(最高裁第一小法廷は、2017年12月2…

古典的自由主義(生命と私的所有の保障、信仰・思想・表現の自由、権力の多元性の確立)

久米郁男他『政治学』(2) 前回は「市場の失敗」の話であった。市場の失敗に対しては政府が出動するという。 多くの経済学の入門書は、政府の役割として、第1に、「公共財」を中心とする資源配分、その典型として司法・警察・消防、国防・外交、教育・文…

ナン・ゴールディン ビル・ヴィオラ

末永照和(監修)『20世紀の美術』(22) 今回は、(最終章)第12章 モダニズムを越えてである。1980~1990年代の作品がとりあげられている(本書発行は2000年)。 1980年代の美術は、ヨーロッパとアメリカの双方で大きなうねりとなった新表現主義によ…