気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

読書ノート

自己増殖がかかえる矛盾

木下清一郎『心の起源』(18) 今回は、第3章 「世界」とは何か 第3節 自己増殖がかかえる矛盾 である。 自己触媒と自己複製 考えてみれば、自己触媒の働きとは随分と奇妙なものである。自己触媒とは自らの構造に依存した機能であるのに、その構造を変化…

音楽の中に「場の鼓動」を聴く

岡田暁生『音楽の聴き方』(25) 今回は、第5章 アマチュアの権利 の最後の部分である。 アマチュアは、プロが作り、プロが演奏する音楽を、作曲家自身が書いた解説を拝読しながら、黙々と拝聴するしかなくなる。自分で演奏して楽しむことも、それについ…

「独裁」と「結論を出せない民主主義」をどう調停すればよいのか?

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(22) 今回は、第5章 みんなで考え合う技術 第4節 クリティカルシンキングの倫理性 である。 地球温暖化に関して、次のような三段論法がある。 [式5-4] (大前提)温暖化への取り組みが遅れるのは望ましくないこと…

政治家・議員・公務員は、恣意的に権力を行使してはならない

平野・亀本・服部『法哲学』(39) 今回より、第5章 法的思考に入る。第1節は、法的思考とは何か である。 私は、「法」を「私たちが共によりよく生きていくためのルール」だと考えている。したがって、本章の「法的思考」もそのようなルールに関係する話…

貧富の差 成長か分配か?

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(25) 前回で対談は終わりなのだが、補論がある。一つは稲葉の「経済成長の必要性について」であり、もう一つは立岩の「分配>成長? 稲葉「経済成長の必要性について」の後に」である。ここでは、稲葉の補論…

枡野俊明 セルリアンタワー東急ホテル日本庭園 閑坐庭

末永照和(監修)『20世紀の美術』(20) 本書ではとりあげていないが、前回の「イサム・ノグチ」との関連で、枡野俊明(ますの しゅんみょう、1953 - )をとりあげよう。枡野は、「日本の僧侶、作庭家。曹洞宗徳雄山建功寺住職、日本造園設計代表、多摩…

心の理論 あなたは相手の気持ちが理解できますか?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(3) 他者の心の状態を推測する 他者の心の状態(信念や欲求)を推測し、他者の行動を予測したり解釈したりする能力は「心の理論」と呼ばれる。(長谷川、本書) このような心の機能の有無を調べる実験の一…

オキュパイ・ラブ 人類の危機をラブ・ストーリーに変える

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(19) 塚越は本章 仮面の集団アノニマス で、オキュパイ・ウォールストリートをとりあげているが、一部のアノニマスもこの運動に参加したという程度のようだ。しかし、このオキュパイ運動*1というのは興味深い。アノニ…

生物世界と物質世界とは、連続しているのか? 不連続なのか?

木下清一郎『心の起源』(17) 前回は、世界が開かれるための4条件(世界の始まりを考えるための4つの要請…特異点、基本要素、基本原理、自己展開)を、物質世界にあてはめてみたらどうなるかであった。次に、この4条件を生物世界にあてはめてみたらど…

どのように見えるか どのように見るか

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(21) 今回は、第5章 みんなで考え合う技術 第3節 立場の違いに起因する問題 の続きである。 本章は、みんなで考え合うには、どうすれば良いのかの話であるが、みんなで話し合う(議論する)技術と言い換えてもよい…

相互了解と合意の形成

平野・亀本・服部『法哲学』(38) 今回は、第4章 法と正義の基本問題 第6節 議論 の続きである。議論の理論は、民主主義を考える場合の最重要なテーマである。なお、今次衆院選により改憲勢力(自民党、公明党、希望の党、日本維新の会)が、国会発議に…

国家の責任

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(24)*1 稲葉は、「国家には、社会的に不利な状況に落ちた人、社会的弱者に対する責任はない」という。 本当に国家に責任はないのか 立岩 例えば、誰かが脚を折ったとか、その結果これこれがあって、というレ…

イサム・ノグチ モエレ沼公園

末永照和(監修)『20世紀の美術』(19) 今回は、第11章 20世紀後半の彫刻 である。 伝統的な彫刻概念を根本からゆるがすような基本的要素は、第2次大戦前のヨーロッパにおいて既に出そろっていた。キュビスムが先鞭をつけるアサンブラージュ*1は…

愛着障害 スキンシップがないと……

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(2) 今回は、第3章 心の発達-乳幼児期の心理 のうち、「愛着」をとりあげよう。 あなたのまわりに次のような大人はいませんか? A1 傷つきやすい A2 怒りを感じると建設的な話し合いができない A3 過去…

大盛りねぎだくギョク 繋がりの社会性

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(18) 第4章 仮面の集団アニニマス の続きである。塚越は、ゲームフィケーション*1とスラックティビズム*2について述べているが、詳細は省略し(必要があれば、後で参照する)、次の要約のみ引用しておく。 ゲームフィ…

世界が開かれるための4条件

木下清一郎『心の起源』(16) 今回より、第3章 「世界」とは何か である。木下は、本章冒頭で次のように言う。 議論を先へ進める前に、まずはっきりさせておかねばならぬことがある。物質世界を超えたところに生物世界が開かれ、生物世界を超えたところ…

連弾

岡田暁生『音楽の聴き方』(24) アマチュアの領分(続き) 岡田は、アドルノ(1903-1969、ドイツの哲学者、社会学者、音楽評論家、作曲家)の連弾(1台の鍵盤楽器を複数人で同時に演奏すること)についてのエッセイ(「四手で、もう一度」)を引いた後、…

確率的な推論は妥当なものとして受け入れてよい

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(20) 前回、「事実関係をはっきりさせることが難しい政策決定一般にかかわる問題」として、次の3点があげられていた。 不確実な状況における推論の問題 立場の違いに起因する問題 クリティカルシンキングそのものの…

理性的議論の条件 - 理想的発話状況、原理整合性、普遍化可能性

平野・亀本・服部『法哲学』(37) 今回は、第4章 法と正義の基本問題 第6節 議論 である。 ものごとを決めるにあたり、話し合い(議論)が重要だということは誰もが知っているだろう。しかし、この話し合い(議論)がどうあるべきか、ということを、ま…

「損害保険組合としての国家には責任はない」とは、どういう意味か?

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(22) 今回も、第4章 国家論の禁じ手を破る 第2節 国家の存在理由 の続きである。 稲葉 ところで、不平等とか格差という現象の主要な発生原因の一つは当然、搾取・収奪、持っていたものを奪われる、横取りさ…

アースワーク (マイケル・ハイザー、ウォルター・デ・マリア)

末永照和(監修)『20世紀の美術』(18) 今回は、第10章 視覚と認識の変革 のうち、「アースワーク」をとりあげる。 アースワーク 既存の芸術や社会体制から自由になろうとする欲求からパフォーマンスが生まれたのと相まって、「アースワーク」あるい…

生物としての人間

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(1) 第1章は、心理学とは-歴史と方法 なので省略し、第2章 心の進化-動物としての人間 から見ていくことにします。(なお、以下の引用は、「です、ます調」から「である調」に変更します。) 動物にも…

アノニマス ガイ・フォークスの仮面 オキュパイ運動

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(17) 今回より、第4章 仮面の集団アニニマス である。アノニマスとはどういう集団であるか、ここでは次の解説を参照しよう。 インターネット上の匿名性や情報発信の自由を守ることを旗印に掲げ、これに制限や規制を加…

心の働きの最初の兆候を、行動の能動性の発揮という点に認めるとするならば、それは記憶の成立から始まる

木下清一郎『心の起源』(15) 今回は、第2章 心の原点をたずねる 第6節 負の記憶・空白の記憶・正の記憶 である。これまでの「まとめ」でもある。 本節を読んで、木下の言わんとすることがようやく少し分かってきたような気がする。(以下に述べること…

「地球温暖化」のウソ?ホント?

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(19) 今回から、第5章 みんなで考え合う技術 である。 合意に達しようとみんなで考えあう際には、少ない情報で判断を下さねばならないことが多い。さらに、事実についてのCT(クリティカルシンキング)と価値につ…

自由主義、共同体主義、民主主義

平野・亀本・服部『法哲学』(36) 第4章 法と正義の基本問題 第5節 共同体と関係性 の続きである。 前回は、「自由主義と共同体主義の主張のまとめ」のその1.「秩序原理」についてみた。今回は、2.人格概念~4.思想基盤についてみてみよう。 自由…

民主主義を抑制する?

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(21) 今回は、第4章 国家論の禁じ手を破る 第2節 国家の存在理由 の続きである。 稲葉は、相変わらず(学識を示したいのかどうか知らないが)ルーマンやらケルゼンやらシュミットやらの名前を出して何か話…

キネティック・アート (シェフェール、パルク、グルッポ・T)

末永照和(監修)『20世紀の美術』(17) 前回は、第7章 抽象表現主義からミニマル・アートへ のうち、アンフォルメル(パリの実存的な抽象)をとりあげた。つづく「アメリカ抽象表現主義」については、読書ノート:大岡信『『抽象絵画への招待』で取り…

科学と人間 見るものすべてが花であり、思うところすべてが月のように美しい

加藤尚武『現代倫理学入門』(33) 今回は、第15章 科学の発達に限界を定めることができるか の続きである。 科学は中立的か これに対する反論は、「科学・技術は、善悪どちらにでも使えるもので価値中立的であるから、巨大技術を含めて科学研究・技術開…

Zマシンは核実験装置か? 科学批判の思想

加藤尚武『現代倫理学入門』(32) 今回は、第15章 科学の発達に限界を定めることができるか である。 ながらく人間の文化には、科学や技術の目的の倫理性と道程の安全性についてチェックするシステムが存在しなかった。科学技術から生まれた自然破壊な…