気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

読書ノート

アノニマスとDDoS攻撃

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(22) アノニマスと市民的不服従の意味を再確認しておこう。 アノニマスとは、 インターネット上の匿名性や情報発信の自由を守ることを旗印に掲げ、これに制限や規制を加えようとする政府や団体、企業などにサイバー攻…

草履虫に、「心」はあるのか?

木下清一郎『心の起源』(20) 抽象的な話で、言葉遊びに終わらないためには、例えば、「草履虫に心はあるのか?」というような具体的な問いを持っていることが必要だろう。抽象的な説明であっても、そのような問いに答えうるものなのかの観点からみていけ…

「自己労働→自己所有」というおかしな論理

立岩真也『私的所有論』(2) 第2章 私的所有の無根拠と根拠 第2節 自己制御→自己所有の論理 私的所有を正当化しようとする言説はどういうものか。 ロック(1632-1704)をはじめとする論者達が持ち出すのは、自己労働→自己所有という図式である。自己に属…

疑わしきは罰せず (オウム真理教)菊池被告は無罪である

平野・亀本・服部『法哲学』(41) 今回は、第5章 法的思考 第4節 事実認定 であるが、本書の説明ではよく分からないので、wikipedia等を参照し、その後、オウム真理教元信者の菊池被告の上告審(最高裁第一小法廷は、2017年12月25日、検察側の上告を棄却…

古典的自由主義(生命と私的所有の保障、信仰・思想・表現の自由、権力の多元性の確立)

久米郁男他『政治学』(2) 前回は「市場の失敗」の話であった。市場の失敗に対しては政府が出動するという。 多くの経済学の入門書は、政府の役割として、第1に、「公共財」を中心とする資源配分、その典型として司法・警察・消防、国防・外交、教育・文…

ナン・ゴールディン ビル・ヴィオラ

末永照和(監修)『20世紀の美術』(22) 今回は、(最終章)第12章 モダニズムを越えてである。1980~1990年代の作品がとりあげられている(本書発行は2000年)。 1980年代の美術は、ヨーロッパとアメリカの双方で大きなうねりとなった新表現主義によ…

情動 恋の吊り橋実験

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(5) 今回は、第5章 動機づけと情動 にでてくる情動をとりあげよう。情動とは、具体的には、喜び,悲しみ,怒り,恐れ等である。この話は「面白い」はずだが、本書の説明はまったく面白くない。何故なのか…

アノニマス 市民的不服従とテロ

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(21) アノニマスの活動は、「市民的不服従」とみなせるようなものだろうか。 市民的不服従とは何か 政治哲学者の寺島俊穂(1950-)は、市民的不服従を「自らの行為の正当性の確信のもとに行われる非合法行為」と定義…

「自己複製(増殖)に含まれる矛盾」から「生命世界」が開かれる?

木下清一郎『心の起源』(19) 今回は、第3章 「世界」とは何か 第4節 自己矛盾から世界は開かれる である。本節で主張されていることは、「自己複製(増殖)に含まれる矛盾」から「生命世界」が開かれる、ということであろう。これはどういう意味だろう…

所有という問題-世界にある財が、交換の始まる時点において誰のものであるかが決定されていなければ、交換は起こりようがなく、その初期値の設定を定める規範は、市場の中にはない

立岩真也『私的所有論』(1) 立岩に『私的所有論』なる著作があることはだいぶ前から知っていた。しかし、amazonの商品説明では、「「私のもの」とは何か? 代理母、女性の自己決定権、臓器移植など、所有と他者と生命をめぐり、社会・倫理を横断して考える…

法的思考 法的三段論法(判決三段論法)

平野・亀本・服部『法哲学』(40) 今回は、第5章 法的思考 第3節 判決三段論法 である。 亀本の説明は少し分かりにくい。そこで最初に分かりやすい説明をみてみよう。 法規の適用において用いられる三段論法を「法的三段論法」などと呼ぶ。法的三段論法…

七人の侍 統治の正統性 市場の失敗

久米郁男他『政治学』(1) 序章 「七人の侍の政治学」で、久米は、「本書では、政治をこの映画[黒沢明監督の七人の侍]に示される「本人」「共通の目的」「代理人」という三つの要素に注目して整理し説明する」と述べている。(以下の引用では、原文のま…

アントニー・ゴームリー 身体の現前

末永照和(監修)『20世紀の美術』(21) 今回は、第11章 20世紀後半の彫刻 の最後のほうに出てくるアントニー・ゴームリー(Antony Mark David Gormley、1950-、イギリスの彫刻家)をとりあげよう。どの作品も興味深い。 OBJECT ON VIEW AT NATIONA…

あなたを行動に駆り立てるものは何か?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(4) 今回は、第5章 動機づけと情動 にでてくる動機づけをとりあげる。 内発的動機 人間は感覚刺激が適度に変化していないと、正常に生きていけない。…動物は絶えず環境から情報を収集し、環境に働きかけ…

アノニマスは、なぜDDoS攻撃を仕掛けるのか?

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(20) 今回は、第5章 ハクティビズムはどこに向かうのか である。 ソニーの大規模個人情報流出事件 2011年4月のアノニマスによるソニーのプレイステーションネットワークに対するDDoS攻撃*1(これがソニーグループの1…

自己増殖がかかえる矛盾

木下清一郎『心の起源』(18) 今回は、第3章 「世界」とは何か 第3節 自己増殖がかかえる矛盾 である。 自己触媒と自己複製 考えてみれば、自己触媒の働きとは随分と奇妙なものである。自己触媒とは自らの構造に依存した機能であるのに、その構造を変化…

音楽の中に「場の鼓動」を聴く

岡田暁生『音楽の聴き方』(25) 今回は、第5章 アマチュアの権利 の最後の部分である。 アマチュアは、プロが作り、プロが演奏する音楽を、作曲家自身が書いた解説を拝読しながら、黙々と拝聴するしかなくなる。自分で演奏して楽しむことも、それについ…

「独裁」と「結論を出せない民主主義」をどう調停すればよいのか?

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(22) 今回は、第5章 みんなで考え合う技術 第4節 クリティカルシンキングの倫理性 である。 地球温暖化に関して、次のような三段論法がある。 [式5-4] (大前提)温暖化への取り組みが遅れるのは望ましくないこと…

政治家・議員・公務員は、恣意的に権力を行使してはならない

平野・亀本・服部『法哲学』(39) 今回より、第5章 法的思考に入る。第1節は、法的思考とは何か である。 私は、「法」を「私たちが共によりよく生きていくためのルール」だと考えている。したがって、本章の「法的思考」もそのようなルールに関係する話…

貧富の差 成長か分配か?

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(25) 前回で対談は終わりなのだが、補論がある。一つは稲葉の「経済成長の必要性について」であり、もう一つは立岩の「分配>成長? 稲葉「経済成長の必要性について」の後に」である。ここでは、稲葉の補論…

枡野俊明 セルリアンタワー東急ホテル日本庭園 閑坐庭

末永照和(監修)『20世紀の美術』(20) 本書ではとりあげていないが、前回の「イサム・ノグチ」との関連で、枡野俊明(ますの しゅんみょう、1953 - )をとりあげよう。枡野は、「日本の僧侶、作庭家。曹洞宗徳雄山建功寺住職、日本造園設計代表、多摩…

心の理論 あなたは相手の気持ちが理解できますか?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(3) 他者の心の状態を推測する 他者の心の状態(信念や欲求)を推測し、他者の行動を予測したり解釈したりする能力は「心の理論」と呼ばれる。(長谷川、本書) このような心の機能の有無を調べる実験の一…

オキュパイ・ラブ 人類の危機をラブ・ストーリーに変える

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(19) 塚越は本章 仮面の集団アノニマス で、オキュパイ・ウォールストリートをとりあげているが、一部のアノニマスもこの運動に参加したという程度のようだ。しかし、このオキュパイ運動*1というのは興味深い。アノニ…

生物世界と物質世界とは、連続しているのか? 不連続なのか?

木下清一郎『心の起源』(17) 前回は、世界が開かれるための4条件(世界の始まりを考えるための4つの要請…特異点、基本要素、基本原理、自己展開)を、物質世界にあてはめてみたらどうなるかであった。次に、この4条件を生物世界にあてはめてみたらど…

どのように見えるか どのように見るか

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(21) 今回は、第5章 みんなで考え合う技術 第3節 立場の違いに起因する問題 の続きである。 本章は、みんなで考え合うには、どうすれば良いのかの話であるが、みんなで話し合う(議論する)技術と言い換えてもよい…

相互了解と合意の形成

平野・亀本・服部『法哲学』(38) 今回は、第4章 法と正義の基本問題 第6節 議論 の続きである。議論の理論は、民主主義を考える場合の最重要なテーマである。なお、今次衆院選により改憲勢力(自民党、公明党、希望の党、日本維新の会)が、国会発議に…

国家の責任

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(24)*1 稲葉は、「国家には、社会的に不利な状況に落ちた人、社会的弱者に対する責任はない」という。 本当に国家に責任はないのか 立岩 例えば、誰かが脚を折ったとか、その結果これこれがあって、というレ…

イサム・ノグチ モエレ沼公園

末永照和(監修)『20世紀の美術』(19) 今回は、第11章 20世紀後半の彫刻 である。 伝統的な彫刻概念を根本からゆるがすような基本的要素は、第2次大戦前のヨーロッパにおいて既に出そろっていた。キュビスムが先鞭をつけるアサンブラージュ*1は…

愛着障害 スキンシップがないと……

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(2) 今回は、第3章 心の発達-乳幼児期の心理 のうち、「愛着」をとりあげよう。 あなたのまわりに次のような大人はいませんか? A1 傷つきやすい A2 怒りを感じると建設的な話し合いができない A3 過去…

大盛りねぎだくギョク 繋がりの社会性

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(18) 第4章 仮面の集団アニニマス の続きである。塚越は、ゲームフィケーション*1とスラックティビズム*2について述べているが、詳細は省略し(必要があれば、後で参照する)、次の要約のみ引用しておく。 ゲームフィ…