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気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

読書ノート

男性ホルモン、エクスキュルの環世界、南北を向いて糞をする犬

木下清一郎『心の起源』(9) 神経系と心 神経系がどれほど特異な位置を占めるとしても、神経系を持たない生物には心はないなどと言い切るのは差し控えておきたい。例えば、内分泌系という液性のコミュニケーションによって、生物体の隅々にまで平穏な状態…

時空を超えたコミュニケーションとしての音楽

岡田暁生『音楽の聴き方』(20) ポリーニのショパン《エチュード集》をどう聴くか 岡田の話を聞く前に、次の曲を聴いてみよう。 Pollini plays Chopin Etude Op.10 No.5 (黒髪エチュード) Pollini plays Chopin Etude Op.25 No.2 (参考)Op.10 No.5の…

「生きる意味」のクリティカルシンキング

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(14) 今回は、第4章 「価値観の壁」をどう乗り越えるか 第4節 倫理的懐疑主義 および 第5節 倫理的懐疑主義への回答(一部)である。「生きる意味」のような価値主張に対して、「各人はどのような価値観を持とうと…

共同体論(3) 各人は自由に、自分が良いと思う生き方を追求してよいのか?

平野・亀本・服部『法哲学』(31) 共同体論者の言う「自由社会の病弊」とは、次のようなものであった。(共同体論(1)彼氏レンタル/彼女レンタル 参照) 共同体を衰退させ、歴史や伝統に培われた共同体の価値を失わせる 人間関係の希薄化を招く 個々人…

不平等論(12) 「私はこの社会に居場所はない」と呟く人を生み出すような社会は望ましい社会なのか?

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(16) 前回、立岩は、(1)権利は人々の承認を待って初めて実効力を持つ。(2)しかしそれだけではなく、人の権利は、人が認めたり承認したり、好きだったり嫌いだったりすることと独立して存在するべきである。と…

シュルレアリスム(2) 球体関節人形 ハンス・ベルメール 清水真理

末永照和(監修)『20世紀の美術』(12) 美術史を語ろうとするなら、サルバドール・ダリ(Salvador Dalí、1904-1989)は外せないだろうが、私は「好み」で作品をとりあげているので、これはパスする。 今回とりあげるのは、ハンス・ベルメール(Hans Be…

「他人に迷惑をかけなければ何をしても良い」という自由の空しさ

加藤尚武『現代倫理学入門』(27) 加藤は、自由主義の原則を次の5つ(の条件)に要約していた。 ①判断能力のある大人なら、 ②自分の生命、身体、財産に関して、 ③他人に危害を及ぼさない限り、 ④たとえその決定が当人にとって不利益なことでも、 ⑤自己決…

著作物のフェアユース(fair use、公正な使用)

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(11) 塚越は、実際のハクティビズムの例をいくつか挙げている。すべてがハクティビズムかどうか分からないが、ともかく順番にみていこう。 まず最初にDeCSSであるが、要約すれば、次のようになろう。 映画というのは…

細胞の情報処理 ホメオスタシス マイクロバイオーム

木下清一郎『心の起源』(8) 今回は、第2章 心の原点をたずねる 第3節 なぜ神経系のみに心の座を求めるのか である。 神経系の独自性 生物が外界の情報を受け入れるのは、神経系によるばかりでなく、そのほかに内分泌系もあれば免疫系もある。それにもか…

価値主張の無限連鎖

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(13) 今回から、第4章 「価値観の壁」をどう乗り越えるか に入る。 「死刑制度は廃止するべきだ」とか「アメリカはイラクに戦争をしかけるべきではなかった」とかという主張は、単なる事実ではなく、ある行為や状態…

共同体論(2) 共同体論者の自由主義(リベラリズム)批判

平野・亀本・服部『法哲学』(30) 前回に引き続き、共同体主義(コミュニタリアニズムcommunitarianism)の話である。平野は、共同体論者による「自由主義的な正義の議論」の批判を紹介しているのだが、その説明にやや分かりにくいところがあるので、以下…

不平等論(11) 思いを超えてあってほしいという思い

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(15) 前回、稲葉は、「所有のみならず、権利一般に関して、周囲の同じ世界に共存している他人が認めようが認めまいが、人はある権利を持っているというふうに、多くの場合において言える」と述べていた。これ…

シュルレアリスム(1) - 夢・驚異・想像・無意識・狂気・偶然

末永照和(監修)『20世紀の美術』(11) 形而上絵画 キリコらの作品が「形而上絵画」と称されるが、私にはあまり魅力的なものではないので、解説だけ引用しておこう。どういう絵画なのかの雰囲気だけは分かる。 目に見える何気ない世界にも、その背後に…

タバコを吸うという愚かなことをする権利

加藤尚武『現代倫理学入門』(26) 今回は、自由主義の原則の第4番目、「④たとえその決定が当人にとって不利益なことでも」についてである。 ある行為をすること、または差し控えることが、彼のためになるとか、あるいはそれが彼を幸福にするであろうとか…

サイバースペースの自治から現実の社会改革へ

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(10) 今回より、第3章 創造性とウィキリークス に入る。世間(世界)を騒がせたウィキリークスをどう評価するか。 コンピュータとインターネットの普及は、軍と政府の巨大な投資によってしか成立し得なかった。ハッ…

音楽作品の客観的存立とその解釈

岡田暁生『音楽の聴き方』(19) 岡田は「音楽作品」について話しているのだが、これは「芸術作品」全般にあてはまるように思われる。 次の作品は、「芸術作品」であるや否や? ピンクノイズ www.youtube.com 4分33秒 (John Cage) www.youtube.com 音楽…

疑うべきか、はたまた、疑うべきにあらざるか、ここが思案のしどころぞ

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(12) 文脈主義の考え方の続きである。文脈主義とは何であったか。 文脈主義とは、あることを知っているかどうか、ある主張が妥当かどうか、といったことについての判定は、その判定を下す文脈(何のために判定するの…

共同体論(1) 彼氏レンタル/彼女レンタル

平野・亀本・服部『法哲学』(29) 今回は、第4章 法と正義の基本問題 第5節 共同体と関係性 である。本節では、共同体主義(コミュニタリアニズムcommunitarianism)が扱われている。 まず共同体主義とは何かについての概要を3つ並べてみよう。ブリタ…

不平等論(10) 土地所有権について

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(14) 前回、稲葉は、 稲葉 「所有はたった一人で始めることができるのか、たった一人で、ほかの誰のことも気にせずに、「これは俺のものだ」というふうに人は言うことができるのか」という問いを立てて、それ…

キリストと姦通をした女/マックス・ベックマン

末永照和(監修)『20世紀の美術』(10) 新即物主義とはいかなる絵画か。 1920年代から30年代初頭のドイツにおける、克明な形態描写と社会批判的なシニシズム[冷笑主義]を特徴とするリアリズム絵画の総称。…グループとしてのまとまりはなく、それぞれ…

他人に危害を及ぼさない限り、何をしても良いのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(25) 今回は、自由主義の原則の第3番目、「③他人に危害を及ぼさない限り」についてである。 この条件は、「他者危害の原則」とも呼ばれる。自由主義の原理の中心部分であり、アトミズム[個人主義]と功利主義の性格の強い規…

ふしだらな結合 カリフォルニアン・イデオロギー

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(9) カリフォルニアン・イデオロギー 東浩紀は1970年代から80年代にわたるハッカー文化の中に二面性を見出し、「ハッカーたちは、プログラミングのような専門技術の習得に大きな価値を置くが、同時にその技術は大衆と…

アブダクション

木下清一郎『心の起源』(6) 今回から、第2章 心の原点をたずねる である。どういう内容か。 循環を止めねば先へ進めない 生物体は要請する なぜ神経系のみに心の座を求めるのか 記憶の成立 生物的情報から自発的行動へ 負の記憶・空白の記憶・正の記憶 …

指揮者フルトヴェングラーとトスカニーニ

岡田暁生『音楽の聴き方』(18) 演奏家を信じない作曲家たち ストラヴィンスキー(1882-1971)は演奏家の解釈を信用せず、「通訳(traduttore)は、いつも裏切り者(traditore)である」と言っていた(通訳はいつも裏切り者である 参照)。シェーンベルグ(1874-…

主張の妥当性の判断に、「文脈主義」の考え方を適用する

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(11) いま文脈主義の考え方を取り上げている。文脈主義とは何であったか。(前々回および前回の記事参照ください) 文脈主義とは、あることを知っているかどうか、ある主張が妥当かどうか、といったことについての判…

平等(3) 「福利の平等批判」の批判、「アファーマティブ・アクション批判」の批判

平野・亀本・服部『法哲学』(28) 福利(結果)の平等に対する批判をみておこう。 「平等化」批判論 福利の平等論は、スタートラインの平等ではなくゴールの平等を目指す点で機会の平等論とは根本的に異なる。初期格差としてのハンディキャップの埋め合わ…

不平等論(9) ヴィーナスはいかが? 金星の土地売ります!

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(13) 前回、立岩は六つ目の話として、次のように述べていた。 立岩 国家については、マルキシズムとのからみで加えておけば、世界同時なんとかっていうのが昔流行ったんだが、ある種の国際主義はロジカルには…

花嫁はその独身者達によって裸にされてさえも/マルセル・デュシャン

末永照和(監修)『20世紀の美術』(9) 前回、ダダを取り上げ、私は「ダダの作品に魅力的なものはない」と書いたが、どういう作品なのかざっと見ておこう。チューリヒ・ダダのジャンス・アルプ(1886-1966)、ベルリン・ダダのハンナ・ヘッヒ(1889-1978)、…

いのち(臓器)の売買 所有と自己決定

加藤尚武『現代倫理学入門』(24) 加藤は、自由主義の原則を次の5つ(の条件)に要約している。 ①判断能力のある大人なら、 ②自分の生命、身体、財産に関して、 ③他人に危害を及ぼさない限り、 ④たとえその決定が当人にとって不利益なことでも、 ⑤自己決…

猥褻で下品な電脳空間 (?)

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(8) ハクティビズムとは、「ハック(hack)とアクティビズム(activism,積極行動主義)とを組み合わせた造語」である。ハクティビズムの活動家はときとしてハクティビスト(Hacktivist)と呼ばれる。 Hackは俗語で、「…

哲学ではなく、自然学の対象として「心の問題」に取り組む

木下清一郎『心の起源』(5) 心とどう取り組むか 不用意に心の問題に足を踏み入れても道を踏み迷うばかりであろう。道を進むには何らかの知恵が必要になる。いまここで探ろうとしているのは、「心とは何であるか」を理解するというよりも、「心をつくり上…

通訳はいつも裏切り者である(ストラヴィンスキー)

岡田暁生『音楽の聴き方』(17) 今回から、第4章 音楽はポータブルか?-複文化の中で音楽を聴く に入る。 再生技術史としての音楽史 世界の他のどんな文化にも見られない西洋音楽の特質の一つに、それが「再生技術」の開発に全力を傾注し、それをモータ…

あなたはどうしてそう思うのですか?

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(10) 第4章 疑いの泥沼からどう抜け出すか 第4節 文脈主義の考え方 の続きである。 私たちが日常的によく抱く「疑い」がある。 もう一つ、科学との関連ではヒューム流の懐疑主義というものがある。これは、今までう…

平等(2) 「機会の平等」と「結果の平等」

平野・亀本・服部『法哲学』(27) 前回記事の「機会の平等」と「結果の平等」についての引用部分を再掲する。 分配的正義については、財の分配方式に関して、「機会の平等」と「結果の平等」という相異なる考え方がある。前者は、財を獲得するための機会…

不平等論(8) SDGsに合致しているかどうかを問うことが、政治や経済、生活のありようを変えていく糸口になります(国谷)

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(13) 立岩 マルキシズムについては、ぼくはほとんど書いたことがないのだけれど、いくつか列挙します。一つ、搾取の議論をそのままで使わないというか使えないというのは出発点にあった。…そういう話をされて…

yeah! yeah! ダダは何も意味しない!

末永照和(監修)『20世紀の美術』(8) 今回から、第4章 ダダ的反抗と夢の開拓 である。 ダダとは何か。次の説明が簡明である。 1916~22年頃ヨーロッパ,アメリカに起った反文明,反合理的な芸術運動。ダダイズムともいう。伝統的なヨーロッパ文明を否…

判断力のない大人 判断力のある子ども

加藤尚武『現代倫理学入門』(23) 加藤は、自由主義の原則を次の5つ(の条件)に要約している・ ①判断能力のある大人なら、 ②自分の生命、身体、財産に関して、 ③他人に危害を及ぼさない限り、 ④たとえその決定が当人にとって不利益なことでも、 ⑤自己決…

電子フロンティア財団とサイファーパンク

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(7) 電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation, EFF)は、1990年6月に設立された。これは、「デジタル時代の市民的自由を擁護する非営利組織」である。「市民的自由」と「非営利組織」という2つの言葉に…

心と遺伝子 ニワトリとタマゴ

木下清一郎『心の起源』(4) 二つの立場 ここで私たちは二つの立場に分かれざるを得ない。 その一つは、生命発生以来の歴史が示す通り、細胞、個体といった生命形態を通じて、遺伝子の支配はすべてに優先するものであって、個体の中に現れた心の働きも、そ…

毛な疑い? 関連する対抗仮説型の文脈主義とは

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(9) 伊勢田は、本書の「序」で、次のように述べていた。 懐疑主義という言葉はいろいろな文脈で使われる。懐疑と言えばもちろん「疑う」ことだから、懐疑主義というのは平たく言えば「疑うという立場」である。昨今の…

平等(1) Suum cuique 各人に各人のものを!

平野・亀本・服部『法哲学』(26) 今回は、第4章 法と正義の基本問題 第4節 平等である。*1 平等の理念 私たちは平等ではない。容貌が違い、性格が異なり、体力、知力、芸術的才能、いずれにおいても十人十様である。人種が異なり、性別が異なり、信条…

不平等論(7) 赤ちゃんは、社会主義的人間である?

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(12) 前回、立岩は次のようなことを話していた。 何をするか、しないかを考えること。 乱暴に考えないこと。 人間ってこんなもんさねっていうところで話を収めないこと。 この件に関してはこの方が良いはずだ…

退廃芸術 内なるファシズム

末永照和(監修)『20世紀の美術』(7) 前回、バウハウス(国立の美術工芸学校)をとりあげたが、その最後に「1933年、バウハウスはナチス政権によって弾圧を受け、解散させられた」という記述があった。 「ナチス=悪」との先入観を捨てて考えてみよう…

アローの不可能性定理 多数決 民主主義

加藤尚武『現代倫理学入門』(22) 前回の「囚人のジレンマ」に続き、「アローの不可能性定理」が取り上げられているので、これを理解しようと思ったのだが、なかなか難しい。今後ゆっくりと勉強することにして、思いついたことをメモしておこう。 アロー…

ストールマンのコピーレフト 著作物は「より優れたもの」にならなければならない

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(6) 塚越は、「コピーレフト」の概念について説明している。これはソフトウェアに限らない応用範囲の広い概念ではないかと思う。塚越の説明だけではちょっと分かりにくいので、今回は、wikipediaの説明を先にみておこ…

遺伝子 プログラム 天からの手紙

木下清一郎『心の起源』(3) 今回は、第1章 第2節「心が生まれてくるまでの道のり」の後半、「個体の誕生」、「心の誕生」、「利己的遺伝子」を取り上げよう。 個体の誕生 生命が誕生して長い時間が経つと、多くの細胞が集まった個体が現れてくる。多細…

サウンドの世界

岡田暁生『音楽の聴き方』(16) 岡田は、「構造的聴取」について次のように述べていた。(ジョン・ケージとサウンドスケープ(音風景)参照) (構造的聴取においては)個々の音は、それこそ言語と同じように、意味の担い手である。音による言語的/建築…

論理的推論 ウェイソンの「4枚カード問題」

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(8) ※ 紛らわしい部分があり変更しました(前提P→前提R)。(2017/1/20) 今回の記事のメインは、ウェイソンの「4枚カード問題」であるが、その前に「演繹的妥当性」についてみておこう(わかりきったことだと思われ…

市場(3) 外部経済、外部不経済を考える

平野・亀本・服部『法哲学』(25) 前回、市場の失敗として、①独占・寡占、②外部性(外部経済、外部不経済)、③情報の非対称性、④公共財についてふれたが、今回はこのうち②の外部性について、もう少し詳しく見ておこう。 まず、外部経済・外部不経済とは、…

不平等論(6) 誤った二分法 乱暴に考えないこと

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(11) 何をするか、しないかを考える 立岩 第1点。何をするか、しないかを考えること。…人がスタートラインにつくときに自分が持ってる自分の身体以外の手持ちの部分をわりとフラットにしよう、そしたら結構…