浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

トリアージ(選別) 

児玉聡『功利主義入門』(1)

トリアージ(選別)という言葉を、児玉聡の著書で初めて知った。

トリアージとは、災害などで大勢の負傷者が出た場合に、「どの患者を優先的に病院に運んだり、治療を行ったりすべきか」を決めるための選別作業のことを指す。日本ではJR福知山線脱線事故秋葉原の通り魔事件などで使われた。(…)トリアージの基本的な発想は、治療を必要とする患者を緊急度に応じて選別し、病院への搬送や治療を行う優先順位を決めるというものだ。ただちに治療しなければ命にかかわる緊急度の高い患者は赤色タグ、それほど緊急ではないが早めに治療を行うべき患者は黄色タグ、軽傷の場合などすぐに治療を行う必要のない患者は緑色タグ、そしてすでに死んでいるか治療が不可能な患者は黒色タグを付け、通常は赤色から優先的に搬送や治療を行う。(第5章)

そういえば、「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」というテレビ番組で、トリアージを描いたシーンがあった。(もっともトリアージをテーマにしたものではなかったように思うが、忘れてしまった)。

大阪府医師会の「災害時における医療施設の行動基準」でも次のように紹介されているように、このトリアージの考え方の背景には功利主義的な発想がある。

<災害医療の目標は、「負傷者の最大多数に対して、最良の結果を生み出す」ことである。そのために重要なことは、助けうる負傷者に対して適切な医療を提供し救命することであり、救命の可能性が乏しい負傷者に対して人的、物的医療資源や時間を無駄に費やさないことである。>(第5章)

 功利主義を理念的に批判する者は、このアクチュアルな問題にどのような対案を示すことができるか?

容易に想像されるように、誰が(どのような能力を持った人間が)タグを付けるのか、判定ミス(医療ミス?)の可能性をどう考えるか、医師や看護師の動員体制をどうするのか等の問題に対して、最終的には法整備が必要なのだろうが(wikipedia参照)、 功利主義者や功利主義の批判者はこれをどう考えるか?