ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(1)
私の診察室で、宝石をちりばめた大きな十字架がぶらさがった金鎖を首に下げた男が、神と交わしたという会話や、宇宙の「本当の意味」や、皮相の下に隠れた深遠な事実について語っている。波長をあわせさえすれば、宇宙は霊的なメッセージに満ちているのだ、と男は言う。私はカルテにちらりと目をやって、彼が「神の語りかけが聞こえはじめた」という思春期前期から側頭葉てんかんを患っていることに目をとめた。彼の宗教的な体験は、側頭葉てんかんと関係しているのだろうか?(第一章 内なる幻)
いまでも「精神世界」や「スピリチュアリティ」や「世俗的ではない宗教」に、そこそこ人気があるようだ。しかしここでは、そのことを論じるつもりはない。
ラマチャンドラン(神経科医、神経科学者)が、宗教的体験を側頭葉てんかんと関連づけて考えようとしていることが興味深い。
ここで「側頭葉てんかん」を「病気」ではなく、脳の「モジュール(基本単位)」あるいは「領域」の損傷と考えると、おもしろい知見が得られるように思われる。
それは…(続きは、12月に書くであろう記事で)