気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

婚活の社会学

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 比嘉愛未(記事とは直接関係ない写真です)

 「当時は毎週のように合コンに参加していました。普段読まないファッション雑誌をチェックして、黒髪ストレートだった髪を少し明るくし、巻髪にイメチェン。メイクもきちんとするようになり、お洒落にも手を抜きませんでした。それでも、なかなか良い人に巡り会えず、焦って結婚相談所に駆込みました。でも35歳を過ぎていると“選ぶ余地がない”んですよね。選ばれないと選べないという現実を知り、かなり落ち込みました」…結局、ミカさんは精神衛生上良くないので婚活をやめた。今は趣味で始めたベリーダンスに没頭し婚活どころではないそうだ。

婚活疲れから依然復活できないシノブさんもそのひとり。お見合いパーティーや合コンの場で気の合う男性がいたものの、なかなか次のステップへ繋がらなく自信喪失してしまったという。「無理に自分を奮い立たせて婚活していたのがいけなかったのかもしれませんが、よい出会いがありませんでした。お見合いパーティーや飲み会に参加するたび自己嫌悪に陥り、婚活にも向き不向きがあるという結論を自分で下し、婚活をやめました。今はリハビリ期間中、一度リセットしたい」(http://dokujo.jp/archives/51789669.html

 いったい世の中にはどれほどの結婚しない(できない)男女がいるのだろうか?

2010(平成22)年の総務省国勢調査」によると、25~39歳の「未婚率」は下記の通りで、近年急上昇している。

  男性 女性
25~29歳 71.8% 60.3%
30~34歳 47.3% 34.5%
35~39歳 35.6% 23.1%

そして「生涯未婚率」は、男性:20.1%、女性:10.6%である。

また、30歳代前半の未婚女性の51%,未婚男性の56%が,恋人はおろか異性の友人すらもっていないという統計もある。

 

未婚でいるとはどういうことか?…親や兄弟姉妹と一緒にいればまだ良いが、一人住まいで、ひとりぼっちのクリスマスや正月ほど侘しいものは無い。これまで一緒に遊んでいた友達も次々と結婚しこどもを生み次第に疎遠になっていく。旅行や海水浴にも行けない。でも若いうちはまだいい。一人でも行動できる。仕事や趣味に没頭することもできる。しかし仕事も先が見えてくる。趣味も人生をかけるというものではない。…テ-ブル一つ動かすこともできず、夢を語り合える相手もいない。病気で倒れたらどうしよう。病院にも行けない。歳をとって介護が必要になっても、誰も面倒を見てくれない。何故こんなふうになったのだろう。どこで間違えたのか。そんなに高望みしたわけでもないのに…。

 

なぜこれほどまでに未婚率が上昇したのか。加藤が的確な分析をしているように思われる。

全国家族調査データを用いてイベント・ヒストリー分析を行うと,未婚化をもたらす2つの主要な要因が浮かび上がる.1つはマクロ経済成長の低下にともなう階層格差の拡大である.経済成長には,結婚のチャンスに格差を生じさせる社会階層の力を緩和する効果がある.1970年代半ば以降,経済成長の低下にともない,この緩和効果が衰えたことが,潜在化していた階層本来の力を呼び覚まして,男性の未婚化を進展させた.相対的に低階層の男性で未婚化が進むと,経済的に結婚可能な男性の人口規模が漸進的に縮小する.それとともに女性の側でも結婚相手の供給不足が生じて未婚化が進むことになった.

未婚化のもう1つの主因は,個人主義イデオロギーの普及による共同体的結婚システムの弱体化である.親族・地域社会・会社などの身近な共同体による配偶者選択の支援には,結婚確率を高める強力な効果がある.しかし,高度経済成長期に広まった近代核家族(恋愛結婚と夫婦家族)のイデオロギーは,バブル経済崩壊後の1990年代に,よりラディカルな自己選択・自己決定・自己責任のイデオロギーとして喧伝され,共同体的結婚システムを否定した.とくに,経済力のある男性の供給不足に直面した女性にとって,共同体的結婚システムの衰退は相手探しのコストと困難がさらに増加することを意味する.女性の未婚化が1990年代に一挙に進んだのはそのためである.(加藤彰彦「未婚化を推し進めてきた2つの力」…この論文は → http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19513802.pdf

第1の「マクロ経済成長の低下にともなう階層格差の拡大」であるが、ここから「経済成長すれば、未婚率は下がるので、成長政策を推進しなければならない。」とするのは誤りだろう。論点は「我慢できない(許容できない)くらいの格差の拡大」である。大企業管理職候補(未婚者)の給与と派遣社員の給与を比べてみよ。日雇労働者(アルバイト)の給料を調べてみよ。雇用の安定度を比較してみよ。この差があまりにも大きいから、「経済力」が結婚の大きな条件になるのだろう。…なお、経済成長至上主義者は、トリクルダウン理論(「おこぼれ経済」とも言う)に依拠しているのではないかと思われるが、いずれこのブログで取り上げよう。

トリクルダウン理論とは、富裕層が経済的に豊かになることで、最終的には貧困層も豊かになり、全体に富が行き渡るという理論、または仮説のこと。「トリクルダウン」とは、「したたり落ちる」という意味で、富裕層から貧困層へ富がしたたり落ちることを意味している。(はてなキーワード

「格差問題」は、本当に大問題で多くの論者が議論を展開している。解決済みの問題とは思われない。これについてもいずれ。

第2の「個人主義イデオロギーの普及による共同体的結婚システムの弱体化」について…「個人主義」について、ここで論じることはしない。「共同体的結婚システムの弱体化」とは、「仲人」が少なくなったということ。自己責任で相手を見つけなさいというわけだ。しかし地域社会でのつながりは薄く、会社でも相手はみつからず、民間の結婚相談所でもなかなか相手は見つからず、ネットは何やらうさんくさい。そこで最近は、市町村の「結婚支援事業」が盛んになってきている。「少子化対策」の一環だ。別にこれを批判するつもりはない。仮にそれが、労働力確保、社会保障費削減、財政再建、経済成長の文脈にあったとしても、個人主義、自己責任で突き放すものではないことは確かだろう。

 

さて、「テツガク」好きの我輩としては、ここでこの記事を終わるわけにはいかない。…最初のほうで、未婚でいるとはどういうことか?について書いたが、「人は、ひとりでは生きていけない」ということだ。何を「当たり前」のことをいうのかと思われるかもしれないが、それはあなたが社会の中でそれなりの場所を占め、ひとりになったことがないからだ。誰の助けも得られない極限の状況を想像してみよ。世界の誰も自分をみていない。私は世界から見捨てられ死んでいくのみ。…ならば、他者である私は、どう声をかければよいのか? ひとつの答えはコミュニティの再生だ。だが、それは果たして可能な途なのか? コミュニティって何だ?