浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

「黙考」の絵画 - 山口長男、斎藤義重、吉原治良

大岡信抽象絵画への招待』(8)

ロバート・マザ-ウェルは、「最もすぐれた絵画においては、作家は黙考しているのである」といった。マザウェルの場合、「スペイン共和国への哀歌(エレジー)」の連作により、タイトルから何か政治的なものを連想させるが、絵画はもちろん政治をダイレクトに表現しない。(私は、作家[画家]が「黙考」しているのなら、タイトルも黙考しているべきではないかと思うのだが。)

大岡は、本節で「黙考」の日本人画家を取り上げている。彼らが戦争の時代を生きたからと言って、現代の私たちが彼らの絵に戦争を感じとらなければならないというものでもない。彼らは「軽々しく精神的なものを再現しようとはしていない」のだから。

 

山口長男(1902 - 83)

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http://www.natsume-books.com/list_photo.php?id=158734

一見無表情でありながら、パネルに絵具が強固に食い入って、あらゆる細部で悠然と呼吸しているようにみえる豊かな色面。

 

斎藤義重(1904 - 2001)

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https://www.fashion-press.net/img/news/8634/hyogo_art_14.jpg

ベニヤ板の上を木目にさからって進む電気ドリルの痕跡が、あたかも乾燥地帯の古代遺跡を現出するかのような絵画。

 

吉原治良(1905-72)

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https://www.google.co.jp/search?q=Jiro+Yoshihara&biw=1435&bih=903&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0CAYQ_AUoAWoVChMI0NKRzt-2xwIVCCqUCh0nOgAR#imgrc=__-qNjZrgrjgGM%3A

全円をねじって渦動させた形態によって伝えようとする原初的なエネルギーの定着。