浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

グローバルなコミュニティーの責任ある一員となる(4) 誰も置き去りにしない - 持続可能な開発目標(SDGs)

2015年9月29日のクローズアップ現代(NHK)は、「国連70年② "誰も置き去りにしない"世界を目指して」を放送した。http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3708.html

世界で激しさを増す過激組織の活動。今も止むことがない民族間などの対立。国連は、「格差」と「貧困」、さらにそれらの根源でもある環境破壊など地球規模の問題を根本から解決しない限り、事態の打開にはならないと訴え続けてきた。そして国連は、設立70年の今年、新たな野心的な目標を掲げる。その名は「SDGs=Sustainable Development Goals(持続可能な発展目標)」。「誰も置き去りにしない(no one will be left behind)」を基本理念に、2030年の世界を見据えた新たな指針だ。17分野169項目という多岐にわたる目標で、途上国だけでなく、先進国も生産・消費のあり方を変える必要があるなど、人々のライフスタイルにまで踏み込んだ大胆な挑戦である。この壮大な目標の背景には何があるのか。そしてそれをどう実現していくのか。 

 SDGsについては、後で内容を紹介する。誰も置き去りにしない(no one will be left behind)これは実に素晴らしいスローガンだ。含蓄がある。こういう言葉が定着してほしいものだ。…後でもふれるが、169項目という多岐にわたる目標、これは現実の「複雑さ」を表わしているのだろう。また途上国だけでなく、先進国にも言及している。これがどの程度のものなのかも注目点だ。

アフリカ東部のケニア…国連や各国の支援で社会基盤の整備が次々に進み、ケニアはこの15年で激変しました。2000年以降、GDPが2倍に伸びるほどの成長を遂げ、豊かになる人たちが増えました。しかし、一方で顕在化したのが繁栄から取り残された人たちの怒りです。2年前、首都ナイロビの高級ショッピングモールで悲劇が起きました。イスラム過激派組織アッシャバーブが買い物客たちを襲撃。60人以上が命を落としました。アッシャバーブの勧誘の魔の手が向かうのは、格差に不満を持つ若者たちです失業率は実に60%。大学を卒業しても、限られた人しか就職できません。行き場のない怒りが若者たちに鬱積しています。かつて、アッシャバーブに所属したことがある若者に取材をすることができました。「安定した仕事が欲しいのです。でもそんなものはありません。とても苦しい状況でした。子ども2人と年老いた母親の面倒を見ることは、とても出来ません。」いくらあがいても、はい上がれない絶望感。男性は2年前、見知らぬ女に声をかけられました。

金になる仕事がある。行き着いた先はテロ組織でした。「金持ちは景気の良さを実感していますが、私たち貧しい人間には関係ありません。政府は貧しい人がたくさんいるのに見て見ぬふりです。とても悲しい。金のためなら何でもやってやろうと、あんな所(テロ組織)に入ってしまったのです。」 国を豊かにして国民全体の暮らしを底上げするはずが、むしろ格差という火種を生んでしまっている現実

f:id:shoyo3:20151011210403j:plain

アッシャバーブ  https://www.youtube.com/watch?t=8&v=x9bF_UvY0M0

 

取り残された人たち。「仕事がない」ということは、「あなたはこの世界で不要な人間です」と宣言されるに等しい。やっと仕事を見つけても、信じられない過酷な条件で働かなければならない。なぜか。世の中どうなっているのか。彼等の怒り・絶望感は想像に難くない。こんなとき、テロ組織は彼らを傭兵として雇用する。いやテロ組織に限らない。米軍もそういう若者を雇用する(堤未果『貧困大陸アメリカ』)。イスラム過激派に限らず、政府軍、反政府軍など、実戦部隊のかなりの数はそのような傭兵らしい。彼らは、カネ(生活)のために戦っているのであって、イデオロギーのためではない。しかし、その組織の中で教化されていく。…ただし、現代の「顔の見えない戦争」は、これとはまた様相が異なる。空爆をするパイロット、核兵器や化学・生物兵器を開発する科学者・技術者、サイバー攻撃を仕掛ける技術者。彼らは「残虐」ではないのか。

国連が今回打ち出したSDGsでは、格差の是正が重要な目標として掲げられました。さらにSDGsには、ほかの目標と連携して解決するというねらいがあります。例えば、格差是正を実現するにも、教育の分野では“教育格差をなくす”。都市環境では“スラムの改善”。司法制度の整備では“すべての人に法的な地位を与える”など、あらゆる角度からアプローチしていこうというのです。

一言に「格差」といっても、「所得格差」だけではない。…「格差」の問題は、いずれ本格的にとりあげたい。

 

持続可能な開発目標(SDGs)

グローバル・ゴールズ(持続可能な開発目標)に寄せるスティーブン・ホーキング博士からのビデオメッセージ

www.youtube.com

スティーブン・ホーキング(「車椅子の物理学者」として知られるイギリスの理論物理学者)の言葉;

人生は、できることに集中することであり、できないことを悔やむことではない。

仕事は目的と意義を与えてくれる。それが無くなると人生は空っぽだ。

http://matome.naver.jp/odai/2130578288716523201

 

f:id:shoyo3:20151011210936j:plain

http://www.familyplanning.org.nz/media/234624/sdgs.bmp

 

ここでは、SDGsの17の目標をみておこう。(詳細は、ネット検索してみてください。)

http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sdg.html

 

私たちは、どのような世界に生きているのか。地球上に、およそ70億人の人間が相互に影響を及ぼしながら生活している。この瞬間にも人は生れ、死んでいる。2050年には100億人にも達すると予測されている。

何も問題はないと、笑っていれば良いのだろうか。自分のことだけ、自分の身の回りのことだけ考えていれば良い、というのだろうか。そんなことを考えてもどうなるものでもない、と思考停止すれば良いのか。

「世の中のことを総じてシニカルに見るという知識人は少なくない。芥川龍之介はその典型でしょう。彼は自分を普通人より一段高いところにおいて、人生の全体を「フン、バカバカしい!」と侮蔑的視線で見ておりますが、私にはちっともおもしろくない。」(中島義道『人生を<半分>降りる』)

 

もっと素直に、まじめに考えてみてはどうだろうか。(何も冗談を言うな、といっているのではない)

しばらく目をつむり、この世界がどうなれば良いかを考えてみよう。何か考えが浮かんだら、書きだしてみよう。そして、それを以下に掲げるSDGsの17の目標と比較してみよう。自分の視野の狭さを感じるに違いない。

 

目標1: No poverty(貧困をなくす)

あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

 

目標2: No hunger(飢餓をなくす)

飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する

 

目標3: Good health(健康と福祉

あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

 

目標4: Quality education(質の高い教育)

すべての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

 

目標5: Gender equality(ジェンダー平等)

ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

 

目標6: Clean water and sanitation(きれいな水と衛生)

すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する

 

目標7: Clean energy(誰もが使えるクリーンエネルギー)

すべての人に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

 

目標8: Good jobs and economic growth(人間らしい仕事と経済成長)

すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する

 

目標9: Innovation infrastructure(産業、技術革新、 社会基盤)

強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る

 

目標10: Reduce inequality(格差の是正)

国内および国家間の格差を是正する

 

目標11: Sustainable cities and community(持続可能な都市、コミュニティづくり)

都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする

 

目標12: Responsible consumption(責任ある生産と消費)

持続可能な消費と生産のパターンを確保する

 

目標13: Protect the planet(気候変動への緊急対応)

気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る

 

目標14: Life below water(海洋資源保全

海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する

 

目標15:Life on land( 陸上資源の保全

陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る

 

目標16: Peace and justice(平和、法の正義、有効な制度)

持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

 

目標17: Partnerships for the goals(目標達成に向けたパートナーシップ)

持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

 

国連サミットは、2015年9月25日、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択した(この中に一連の持続可能な開発目標(SDGs)が含まれる)。時事通信(2015/9/28)は次のように報じている。

2030年までの極度の貧困の撲滅など、国際社会の16年以降の新たな共通開発目標を採択するためニューヨークで開かれていた国連サミットは27日、各国首脳らの演説を終え、閉幕した。

オバマ米大統領は演説で「もし各国が国民の生活に本当の投資をしていれば、この数年間の紛争や難民危機、軍事介入は避けられたかもしれない」と強調。さらに「米国はあなたのパートナーであり続ける」と述べ、開発促進に取り組む方針を表明した。

今後の焦点は新目標「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の履行に移る。モハメド国連事務総長特別顧問は同日記者会見し、全ての加盟国が策定に関与したことで当事者意識を強めたとの見方を示し、「履行を楽観している」と目標達成に期待を表明した。コロンビアなど一部の国は、採択を待たずに委員会を設置するなど履行準備に既に着手したという

一方、同特別顧問は中東などの難民・移民が欧州に殺到している問題に関し、持続可能な開発には紛争など難民らを生む根本原因の解決が必要だと訴えた。

 

このような目標が、「国連」という曲がりなりにも権威ある機関によって策定され、加盟各国がこれを「持続可能な開発のための2030アジェンダ」として採択したということは、本当に重要な第一歩を踏み出したという感じがする。もちろんこれは「目標」であり、国連加盟各国を縛るものではない(だからこそ採択されたとも言える)が、「目標」の合意を得ることがいかに困難なことであるかということに鑑みれば、これは「希望の光」であるに違いない。

  

(つづく)かどうか未定。

論点は、多岐にわたるので、これを(つづき)で書いていたら、いつ終わるかわからない。

特定のトピックを、(つづき)または別の記事で書くことになろう。