以下に、2014年と2015年の高校の試験問題を掲載します。これは実際の試験問題で、理系、文系問わず必須です。どこの学校の試験問題かは後で書きます。これに合格しないと、高校卒業の資格は与えられません。
問題は、どれか1つのテーマを選んで論述しなさいというもので、制限時間は4時間です。
ちょっと考えてみてください。…いくら時間があっても、何をどう書いていいか見当もつかない?
はい、わかりました。履歴書に高卒と書いてはいけません。あなたは大学に入れません。
1.理系
(2015年)
テーマ1:どんな芸術作品も何らかの意味を持つか?
テーマ2:政治は真実の要求を免れ得るか?
テーマ3:以下のキケロ『予言について』の抜粋を説明せよ。(略)
(2014年)
テーマ1:人は幸せになるために生きるのか?
テーマ2:芸術家は自分の作品の主なのか?
テーマ3:以下のルネ・デカルト『精神指導の規則』(1628年)の抜粋を説明せよ。(略)
2.経済・社会系
(2015年)
テーマ1:個人の意識は自らの所属する社会を反映したものでしかないのか?
テーマ2:芸術家の生み出すものは理解可能か?
テーマ3:以下のスピノザ『神学・政治論』の抜粋を説明せよ。(略)
(2014年)
テーマ1:自由であるためには選択するだけで十分なのか?
テーマ2:なぜ自分のことを知ろうとするのか?
テーマ3:以下のハンナ・アレント『人間の条件』(1958年)の抜粋を説明せよ。(略)
3.文系
(2015年)
テーマ1:あらゆる生物を尊重することは倫理的な義務であるか?
テーマ2:人は自らの過去の所産なのか?
テーマ3:以下のトクヴィル『アメリカのデモクラシー』の抜粋を説明せよ。(略)
(2014年)
テーマ1:芸術作品は知覚を育むか?
テーマ2:幸せになるためならなんでもすべきか?
テーマ3:以下のカール・ポパー『客観的知識』(1972年)の抜粋を説明せよ。(略)
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フランスには、高校(後期中等教育)の修了資格および大学入学資格を得るためのバカロレア試験があります(<富裕層はリベラルアーツを学ぶ(4)あなたは、どんな人ですか?>参照)。そのうち、哲学試験問題が上記のとおりです。記憶力ばかりの勉強をしていると、○×問題や選択問題は解けるが、「唯一の解答のない」思考力を問う問題には答えられないですね。
私は、日本でもこのような試験を取り入れるべきだと言うつもりはありません。ただ、コミュニティにおける「教育」のあり方を考える際のヒントにはなると思います。