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気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

音楽の建築的な構造 フィガロの結婚 夕鶴 テンペスト

読書ノート アート

岡田暁生『音楽の聴き方』(10) 

岡田の説明はなかなか面白い。音大の学生に教えているのではないから、専門用語にこだわる必要はない。音楽の建築性ということで、岡田が言わんとすることが了解できれば良いだろう。

音楽のロジックの中に「接続詞」が入ってくると、もっと複雑な建物を作ることが可能になってくる。例えば、文と文、段落と段落を「そして」でつなぐタイプ。「昔あるところに王子がいた。その王子は荒野に出かけた。そこで彼は不思議な美女に出会った。そして…」といった具合に、ある種の物語構造を持つ音楽である。この典型はオペラの序曲であって、そこでは大抵、「聴きどころ」の旋律がメドレー形式で並べられていくショパンのバラードのような音楽も、似た構成をとることが多い。この「そして」型では、音楽が複内容的になってくる。記号にすれば、ABCDEAGB……といった具合に、いろいろな小さなお話から大きな物語が出来上がっているのだ。但し、個々の内容は、あまり論理的に密接に関連していたりはせず、むしろ緩やかに並列されていることの方が多い。

ある種の物語構造を持つ音楽の典型が、オペラの序曲であるというが、序曲とはどういうものか。

多くのクラシック音楽のコンサートは、序曲や交響詩で始まります。演奏時間は10分前後と短い曲が多く、クラシック音楽初心者にはおすすめ。 序曲とは、オペラ(歌劇)や劇付随音楽、古典組曲などの最初に演奏される音楽です。例えば、オペラや劇付随音楽の序曲は、聴衆がまだざわめいている中で、聴衆の注意を引くために演奏されていました。ベートーヴェン以降は、劇全体の性格や粗筋、雰囲気を伝えるよう作曲されている作品が多く、オペラ等の魅力がぎゅっと凝縮されています。

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次に、三部形式とか、ロンド形式という言葉が出てくるが…

「そして」の接続詞より、むしろ「セミコロンによってつなぐ」という比喩の方が似つかわしい音楽もある。例えば、シューマン子供の情景》などの多くは、いわゆる三部形式(ABA形式)で作られる。「彼は幸福だった(A);悲しいこともあった(B);それでも彼は幸福だった(A‘)」といった文章を想像してみよう。物語が「先へ」と進むわけではない。少し気分や場面の転換を図るのである。いわゆるロンド形式(ABACADA……)なども、このセミコロン型として理解できるかもしれない。いろいろなエピソードが挿まれる。しかし絶えず元の場所へ戻ってくる。先へは進まないのだ。例えばモーツァルトは、どんな形式で作曲するときであれ、こうしたセミコロンでもって多彩なアイデアをつなぎ、巧みに気分を交替させ、しかも絶妙のバランスを取る名手だった。私は彼の音楽を聴くたびに、「そういえば」とか「ちなみに」とか「ただし」といった接続詞を連想する。

専門家でもない者が(専門家になろうという人は別だが)、三部形式とか、ロンド形式とかいう言葉を覚えて、生半可な知識を振り回すよりは、それよりも「気分転換」とか「エピソード」という言葉を覚えておいた方が良い。いま聴いているこの部分は、「そういえば」か、「ちなみに」か、「ただし」かと考えながら聴くのも面白いかもしれない。

 

構成の壮大さという点での音楽のロジックの最高峰は、やはりベートーヴェンソナタ形式に止めを刺す。彼の音楽の最大の特徴の一つは、「しかし」と「故に」を駆使する点だ。よく言われるように弁証法的に曲を構築するのである。例えば、《第九》フィナーレでバリトンが出てくるあたり。「こうか?」-「いや違う!」-「ではこうか?」-「いや、それも違う、こうだ! こうでなければならない!」と言った具合に、否定と肯定を繰り返しながら音楽が進んでいくのである。19世紀における交響曲弦楽四重奏やピアノ・ソナタなどは、こうした論理的性格を持つ音楽ジャンルの代表であって、それは西洋的音楽の金字塔であると同時に、理解するのが極めて難しい。それらは「聞き流す」ことができない。論理学のテーゼを組み立てていくように作られているせいで、気を抜いてどこかを聴き落とすと、すぐに前後の脈絡がまったく分らなくなってしまうのである。

そうか、交響曲弦楽四重奏やピアノ・ソナタなどは「弁証法」なのか。寝ておれないね。

 

まとめ

曲における文と文、段落と段落の関係が、①同じセリフの反復演奏によって作られているか、②それとも「そして」でつないで物語的になっているか、③あるいは「セミコロン」を入れて気分転換を図っているか、④または否定の「しかし」を音楽のロジックの中へ持ち込むか。どんなものでもいい、自分のお気に入りの曲について、その建築的な構造に注意しながら聞いてみてはどうだろう。構成を自由にメモしても面白いかもしれない。…単に響きに身を任せていたときには印象派の絵画のように滲み、魅力的ではあるがぼんやりとしか見えていなかった音楽の彫塑的構造が、かなりクリアに浮き上がってくるはずである。

「彫塑的構造」とは、彫刻のような立体的な構造という意味だろう。建築的な構造の言い換えだ。

 

オペラの序曲としては、モーツァルトの「フィガロの結婚」が有名ですね。


ウィーン・フィル New Year's Concert 2006 - 歌劇 「フィガロの結婚」序曲

 

日本のオペラに「夕鶴」というのがあります。

オペラ「夕鶴」は、民話に題材をとった木下順二の名作戯曲に、團伊玖磨が作曲した日本オペラ史上最高傑作のひとつです。国内外での上演は1952年の初演以来800回を超えており、今や世界的に愛され親しまれている作品です。美しい詩と抒情性あふれるメロディは、深く心に染み透り、感動を覚えずにはいられません。栗山民也演出によるプロダクションは、能舞台を思わせる装置に、「空」をイメージする背景、その中に与ひょうの住む家が一軒というシンプルで美しい舞台が特徴。つうはそこから「自分の本当の住処」である空へと戻っていきます。

http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/150109_006155.html

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http://art9.photozou.jp/pub/416/3050416/photo/230884418_624.jpg

 

ベートーヴェンピアノソナタテンペスト』を聴いてみましょう。

弁証法

 


ベートーヴェン/ピアノソナタ第17番「テンペスト」第3楽章,Op.31-2