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気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

ロシア・アヴァンギャルド(シュプレマティズムと構成主義)

末永照和(監修)『20世紀の美術』(4)

今回は、第3章 抽象と構成 である。本章に出てくる絵画で魅力的なものはほとんどないので、スルーしようかと思ったが、いくつかの用語については、知っておいても悪くはないだろうと思い直し、採りあげることにした。

 

アヴァンギャルド(avant‐garde)

前衛〉の意。元来はフランスの軍隊用語で,本隊に先がけて敵陣を偵察し奇襲する精鋭の小部隊。次いで政治に転用されて,大衆の自然発生的反抗を目的意識的な体制変革へと組織する,革命運動の指導部ないし革命政党の意。さらに芸術に転じて,因襲や社会通念を打破し,未知の表現を切り開こうとする,芸術上の実験や冒険をさす。アヴァンギャルドとは,一般にはこの前衛芸術のことをいう。(世界大百科事典

主としてシュルレアリスム,抽象主義,キュビスム未来派,ダダなどの傾向をさしたが,今日では既成の芸術観念や形式を否定する先端的な芸術の一般的呼称となった。(ブリタニカ国際大百科事典)

アヴァンギャルドという言葉は忘れてもいい。だが、赤字にした部分「因襲や社会通念を打破し,未知の表現を切り開こうとする,芸術上の実験や冒険」は、芸術家に限らず、科学者や思想家に求められる資質であろう。もちろん、単に「既成の芸術観念や形式を否定」しさえすれば良いというものではない。

 

レイヨニスム(rayonnisme)

ロシアの画家ラリオノフが20世紀の初めに提唱した絵画理論。ロシア語ではルチズムЛучизмで、光線を意味するルチから生まれた用語。光線主義。…その主張するところは、絵画を純粋化していけば究極のところ光線を描くことになるとして、画面を光線の交錯によって構成するものである。(木村浩日本大百科全書

「純粋化」というと聞こえは良いが、人間にとって「大切なもの」を捨象していくことになりはしないか。

 

シュプレマティズム(suprematizm)

ロシアの画家マレービチが1915年に描き始めた幾何学的な抽象絵画の名称。ロシア語で正しくは〈スプレマティズム〉。〈絶対主義〉〈至高主義〉と訳されるが,彼自身によれば〈シュプリーム〉とは自然形態を制覇し,それを描写対象とせず,幾何学的な色彩平面形態だけを描くことである。そこではただ色彩と表面の様子のみが重要であって,この抽象化への決断は,彼の言う〈形態のゼロ〉から出発することで可能となった。(世界大百科事典

1915年、ゼロをめざす10人の「最後の未来派展、0-10」に、マレーヴィチは39点の無対象絵画を展示した。彼はそれを「創造的な芸術における純粋な感覚の絶対性」と定義した。『黒の正方形』は、自然から抽象された形態ではない絶対的な無対象性、それが黒の正方形である。物体や物質からなる現実の世界に束縛されない感覚の自由が実現でき、現実世界から精神の世界へ飛躍できる道を絵画で探求していた。(本書)

 抽象絵画は、現実世界の物体を「抽象」したものである。しかし、無対象絵画は、現実世界の物体を対象としないから「無対象」である。シュプレマティズムを、絶対主義とか至高主義とか訳しても何のことか分からない。無対象絵画と理解すればよいだろう。…私は、この意味で「抽象絵画」よりは「無対象絵画」に惹きつけられるものがある。しかし、無対象絵画が精神世界を描くものだとしても、それが現実世界と遊離した世界であるかどうか自明ではない。

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左は、マレーヴィチ『黒の正方形』(1915) https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/57/Malevich.black-square.jpg

右は、マレーヴィチ『シュプレスム No.56』(1915)  http://img10.shop-pro.jp/PA01047/075/product/13969161.jpg

 

ロシア構成主義

もともとは1921年ころ革命後のロシアに現れた前衛美術運動の一派であるが,その後東欧から中欧にかけて,ジャンルのうえではデザインや建築にまで広がった大規模な国際的芸術運動である。画架(イーゼル)にのせて描く絵画を否定し,現代社会で普通にみられる工業材料(金属,ガラスなど)を使って物理学的な均衡感覚に基づく抽象的な美や,運動という力動的な美を表現する構成主義的な作品としては,1920年のロドチェンコの《吊り構成》やタトリンの《第三インターナショナル記念塔》(案)などがある。(世界大百科事典

絵画を超えた空間的な構成…その主な源泉はキュビスムやイタリア未来派である。造形的要素である点、線、面、そして三角形、円、矩形などの幾何学的形態を用いて、「もの」よりもそれを成り立たせている組立方や関係、構造などを重視する。(本書)

 

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ロドチェンコ 『空間に吊るされた構成』(1921) 

http://www.ggccaatt.net/2012/10/17/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E6%A7%8B%E6%88%90%E4%B8%BB%E7%BE%A9/

 

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第三インターナショナル記念塔』(完成予定CG画像)

http://karapaia.livedoor.biz/archives/51980334.html

 

ロトチェンコについて

2010年4月、東京都庭園美術館で、「ロトチェンコ+ステパーノワ/ロシア構成主義のまなざし」展があった。1920年代には絵画をやめ、グラフィックデザイン、舞台装置、工業デザインなども手掛けたという。現在の美術家、デザイナー、建築家、写真家などにも影響を与えている。(http://www.museum-cafe.com/special/2451.htmlより)

2012年3月、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで、「ロトチェンコ -彗星のごとく、ロシア・アヴァンギャルドの寵児-」展があった。20世紀のデザイン史に最も影響を与えたという。

同展覧会では、ロトチェンコが独創的な写真家ならびに優れたデザイナーとしても紹介されている。…構成主義の代表者ロトチェンコは、芸術によって「未来を創造」できると確信していた。ロトチェンコは1920年代に多くの発見をし、独自の手法を生み出した。「ロトチェンコ遠近法」、「ロトチェンコ短縮法」という用語は、現代の写真家にとって馴染みのものとなっている。…「ロトチェンコのインテリアは、あらゆる建物や部屋に調和することができた。なぜならそられは、特に機能的だったからだ。新たな美学もそこにつくられた。品物は簡素かつ機能的で、多目的のために使用することができた。私たちがそれを理解できるか否かにかかわらず、構成主義の美学は、取り巻く世界や21世紀の現代美学における私たちの認識を確立した。こんにち私たちが簡素だと感じるものには、便利かつ機能的で生活に役に立つものが根底にある。」(ゴリャチェワ)…ロトチェンコにとっては全てが芸術だった。お菓子の包み紙、ラベル、クッキーの箱などは一見些細なようだが、ロトチェンコは大きな芸術的課題として取り組んだ。

https://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2012_03_03/67400316/

 「構成」という概念は、ちょっと面白そうだ。

構成主義は、シュプレマティズムと共にロシア・アヴァンギャルドの双璧をなしたとされる。