気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

民間給与実態統計調査 - あなたの給与はどのレベル?

格差社会(3*1

私たちは、社会生活を送るにあたり(世の中で生きていくためには)、それなりの「衣・食・住」を必要とする。必要な衣食住は「お金」を媒介として得られる。その「お金」は、多くの人にとって、会社等で働くことによって得られる。それは「給与」と呼ばれる。つまり多くの人にとって、給与の多寡(多いか少ないか)が、生活のレベルを左右する。以下に給与に関する統計を見るが、それは単なる数字ではなく、生活レベルを左右するものであることを認識しておく必要がある。日々の食事代も切り詰めた生活を送っているか、何度も海外旅行に出かける生活をしているか。高卒でとどまるか、海外の有名大学(院)に留学するか。夜遅くまであくせく働いているか、優雅な余暇・休日を過ごしているか。いったいこの差は何に起因するのか。「お金」の話は、私たちがどのような社会生活を送るのかという話でもある。…自慢話や金儲けの話には辟易するが、「お金」の話は避けていてよいものではない。

 

所得格差をあらわす「ジニ係数」の話(前回と前々回にとりあげた)は終わっていないのだが、今回は中断して、給与に関する統計をみてみよう。その統計というのは、国税庁の「(平成28年民間給与実態統計調査」(H29/9、以下「報告書」という)である。民間給与実態統計とは、

目的…民間の事業所における年間の給与の実態を、給与階級別、事業所規模別、企業規模別等に明らかにし、併せて、租税収入の見積り、租税負担の検討及び税務行政運営等の基本資料とすることを目的としている。

このような統計であるから、公務員の給与所得や不動産所得、配当所得、譲渡所得などの給与所得以外の所得は含まれない。*2

 

図1 給与所得者数・構成比(年収区分別)

まず、給与階級別の給与所得者数を見てみよう。なお、このグラフは、「1年を通じて勤務した給与所得者」のものである。「1年未満勤続者」を含まない。*3(以下のグラフも同様)

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このグラフは、「報告書」の(第16表)「給与階級別給与所得者数・構成比」の数表のうち、平成28年分の男・女のデータを基に作成したものである。

X軸は「年収」である。「報告書」の表現では「給与」であり、これは「給料・手当」に「賞与」を加えたものである。いずれも年間の数字である。残業代や家族手当等の諸手当を含む。

  • 不動産所得、配当所得、譲渡所得などの給与所得以外の所得は含まれない。個人の所得全体を示したものではない。
  • 税金や社会保険料控除前の数字である。いわゆる「手取り金額」ではない。税法上、「収入」と「所得」は、異なる意味で使われるが、ここでの数字は「収入」である。
  • X軸を「年収」と呼んだのは、「年間給与収入」の意味である。

Y軸は、「給与所得者数」の構成比である。「給与所得者数」は、(第16表)「給与階級別給与所得者数・構成比」では、男性:28,622千人、女性:20,069千人である。*4

「報告書」は、「給与階級」と言い方をしているが、「年収区分」と言った方が分りやすい。

男性の場合、年収区分:300万円超400万円以下が最も多く、男性全体の18%を占めている。

女性の場合、年収区分:100万円超200万円以下が最も多く、女性全体の25%を占めている。

男性の場合、400万円以下の年収の者は、男性全体の41%(=3+7+13+18)を占めている。

女性の場合、200万円以下の年収の者は、女性全体の41%(=16+25)を占めている。

 

次からは、いくつかの観点から見た「平均年収」の「差異」を見ることにしよう。これは「差異」であって、「格差」のような価値評価(望ましい/望ましくない)を含むものではない。差異=格差ではない。

 

図2 平均年収(従業員数別)

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このグラフは、「報告書」の(第11 表) 「事業所規模別の平均給与」の数字を基にしたものである。

X軸は、「事業所の従業員数」の区分である。この調査は、標本として抽出された源泉徴収義務者(以下「標本事業所」という。)及び標本事業所に勤務する給与所得者(以下「標本給与所得者」という。)について行われているので、ここでの「事業所」とは、「源泉徴収義務者」のことであり、源泉徴収義務者とは、給料や報酬などの支払金額から所得税を差し引いて、国に納める義務のある法人や個人のことをいうので、ほぼ、会社=企業=法人と考えてよいだろう。

Y軸は、「平均年収」である。平均年収とは、「給与支給総額を給与所得者数で除したもの」である。役員の給与もパートの給与も含む平均である。再度、図1を参照願いたい。ご覧の通り「正規分布」ではなく、平均値=中央値=最頻値ではない。給与分布は、右の裾の長い分布となるので、平均値>中央値>最頻値となる。平均値にごまかされてはいけない。「平均値」であれこれ言うのは慎重でなければならない。このグラフを見て、何が言えるか。「大企業と中小企業には大きな給与格差があり問題だ」などとは、単純には言えない。

平均年収は、男性:520万円、女性:280万円、全体:420万円である。(以下のグラフも同じ)

 

図3 平均年収(資本金別)

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このグラフは、「報告書」の(第12表)「企業規模別の平均給与」の数字を基にしたものである。

X軸は、「報告書」によれば、「企業規模」である。企業規模を何によって表すか。従業員数、資本金、売上高などが考えられるが、本調査では、資本金の他に、「個人」や「その他の法人」などというおかしなものを「企業規模」に含めている。そこは、あまりこだわらずに(個別にみることにして)、「資本金」で「企業規模」を表していると考えておこう。中小企業基本法では、中小企業を以下のように定義している。業種と資本金と従業員数による定義である。

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会社法の「大企業」の定義は、「①資本金として計上した額が5億円以上、②負債として計上した額の合計額が200億円以上」のいずれかである。法人税法の「中小企業」の定義は、「資本金(出資金)が1億円以下」である。法の目的により、同じ言葉でも定義が異なる。

企業規模により「平均年収」が異なるかどうかを見ようとする場合、どちらというと「従業員数」が良いのではないかと思われる(「給与」に関係するのは、「設備」等ではなく、「従業員」である)が、こだわらずに「資本金」も見ておけばよいだろう。

なお、中小企業白書によると、規模別の従業者数は以下の通りとなっている。

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よく企業全体のうち、99%は中小企業で、大企業は1%にしか過ぎないという。しかし上表の従業者数に注目しよう。大企業に勤務する者は30%であり、中小企業に勤務する者は70%である。さらに中小企業を中規模と小規模に区分すると、計算すれば分かるように、およそ中規模45%、小規模25%である。ごく少数の大企業に勤務している者のみが恵まれているかのように錯覚しているかもしれないが、このような比率なのである。

「報告書」第2図(P8)に、「事業所規模別給与所得者数の構成割合」のグラフがある。この数字を見ると、500人未満の規模で67%、500人以上規模で33%の人数である。

 

図4 平均年収(年齢階層別)

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このグラフは、「報告書」の(第14図)「年齢階層別の平均給与」の数字を基にしたものである。

私はこのグラフを見て、意外と「年功序列制度」が維持されているなと感じた。同時に、男女の差別的取り扱いも変わらないとも。女性の管理職割合が低水準であることを反映しているとも言えよう。

 

図5 平均年収(勤続年数別)

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このグラフは、「報告書」の(第15 図)「勤続年数別の平均給与」の数字を基にしたものである。

通常、勤続年数=能力向上であるから、能力主義を採用しても、このような傾向になるのであろう。

 

以上、いくつかの観点から、「平均年収」の差異をみてきたが、いずれもこの差異をもって、「格差」(不当な望ましくない差異)があるとは言えないだろう。何を持って「格差」というのか、その定義なしに、差異を指摘したところで、「あ、そうですか」で終わるだろう。

*1:カテゴリー「読書ノート」で、熊沢誠格差社会ニッポンで働くということ』(1)(2)を、とり上げてきましたが、これをやめ、格差社会(1)(2)に変更し、あわせてごく一部の関連部分を修正しました。

*2:正確には、「この調査は、平成28 年12 月31 日現在の源泉徴収義務者(民間の事業所に限る。)に勤務している給与所得者所得税の納税の有無を問わない。)を対象としている」。給与所得者には、「役員」(法人の取締役、監査役、理事、監事等)や「非正規」(パートタイマー、アルバイト、派遣社員契約社員、嘱託等)を含む。

*3:1年を通じて勤務した給与所得者とは、「平成28 年の1月から12 月まで引き続き勤務し、給与の支給を受けた月数が12 か月の者」をいう。1年未満勤続者とは、「1年を通じて勤務した給与所得者」以外で、12 月31 日現在在職している者」をいう(P3)

*4:この調査は標本調査である。標本事業所に勤務する標本調査対象の給与所得者数は、合計:312,309人である(P2)。