浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

国会議員はいったい何をしているのだろうか?

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(7)

今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 2国会の構成と活動 の続き(p.534~) である。

私は、以前から国会議員はいったい何をしているのだろうかという疑問を持っている。マスメディアは選挙の時だけ大々的に報道するが、国会議員の日常の活動についての報道を見たことがない。(地方議会議員も同様)

国会議員の仕事

国会議員は、以下のような仕事をしていると説明されている。

  1. 法律案を国会に提出し、立法に主体的にかかわる。
  2. 会議での質疑や文書による質問、国政調査などを通じて、行政を監視し、コントロールする。
  3. 法律の制定、予算の議決、条約の承認、内閣総理大臣の指名など、国政の重要事項に関する国会の意思決定に参加する。
  4. 選挙や国民からの請願・陳情などを通じて国民の意思をくみ取り、国政に反映させる。
  5. 外国の政治経済情勢を調査し、国政に反映させる。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/taiken/bochou/pdf/student/201912-16-17.pdf

本当だろうか?

1:国会議員は、「法律案を国会に提出」しているのだろうか? 最近の「内閣提出法律案」と「議員提出法案」(議員立法)の提出件数と成立件数は、以下のとおりである。

f:id:shoyo3:20201118180203j:plain

https://www.clb.go.jp/contents/all.html

議員提出件数は内閣提出件数より多いものの、成立の率は圧倒的に少ない。この数字は何を意味するのだろうか。ここでは、これ以上立ち入らないが、「法律案を国会に提出し、立法に主体的に関わっている」と言えるのか、甚だ疑問である。

 

2:会議での質疑や文書による質問国政調査などを通じて、行政を監視し、コントロールする

国会法第74条~76条は、質問権について定めている。下記のような内容である・

・質問は、簡明な主意書を作り、これを議長に提出しなければならない。

・議長又は議院の承認した質問については、議長がその主意書を内閣に転送する。

・内閣は、質問主意書を受け取つた日から七日以内に答弁をしなければならない。

例えば、第203国会(衆議院)における質問主意書は、http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/menu_m.htmで見ることができる。

国政調査権とは国会が有する権限の1つであり、国政に関する問題が起こった際にその事案を調査できる権利のことである(国政調査権は、憲法第62条や国会法第104条に定められている)。この調査の際、

・証人の証言を得るための証人喚問(当事者や関係者を呼び出して事実の確認を行うこと)

・事実関係確認のために資料の収集(資料提出請求

参考人招致

などの手段を取ることができる。実際の調査は常任委員会または特別委員会により行われる。(詳細は、政治ドットコムの「国政調査権とは?3つの調査を簡単解説」などを参照のこと)

しかし、野党がいかに質問し、証人喚問や資料提出請求や参考人招致を要求しても、与党はこれを拒否するという事例をこれまで数多く目にしてきた。行政を監視し、コントロールしているとは言い難いのではないか。

 

冒頭の国会議員の仕事の3番目(国会の意思決定)については、党議拘束により、議員ではなく操り人形になっている場合もあるだろう。

4番目(国民の意思をくみ取り、国政に反映させる)は、一部の団体や後援者の意思が「国民の意思」とされ、国政に反映されているのではないかと疑念がある。

5番目の「外国の政治経済情勢の調査」がどの程度なされているのかも疑問である。例えば、今回のCOVID-19パンデミックに関して、どれほど諸外国の状況を調査把握しているのか疑問である。

 

委員会制度

なぜ本会議のほかに、委員会が設けられるのか?

それは、「議案の増加、専門的・技術的知識の必要性」から、本会議では十分に審議を尽くすことが困難であるからである。

  • 委員会中心主義では、少人数の各委員会ごとに、付託された案件の審査が行われる点で、委員の専門的知識、自由な討議、審議の効率化という長所がある。
  • 日本における現行制度は、衆議院参議院は、それぞれ全議員を構成員とする本会議のほか、本会議に付すべき議案をあらかじめ審査するために、国会法により委員会を設けている。
  • 委員会には、常任委員会特別委員会の2種類がある。各委員会は、議長により付託された議案の審査を行うが、常任委員会衆議院参議院にそれぞれ17委員会)は、付託される議案の有無にかかわらず常設され、特別委員会は、各院においてとくに必要があると認めた案件、または、いずれの常任委員会の所管にも属さない特定の案件を審査するために設置される。
  • 議員は少なくとも一つの常任委員となる。常任委員および特別委員は、各会派の所属議員数の比率により割り当てられる。
  • 委員会は、国会の会期中に限り審査を行うが、各議院の議決でとくに付託された案件については、閉会中も審査することができる。
  • 委員会は公聴会を開くことができ、また、議員以外の傍聴は報道関係者その他、委員長が許可した者に限られる

以上、日本大百科全書の説明であるが、これで委員会がどういうものかのイメージがつかめる。

例えば、国土交通委員会の所管事項は、「国土交通省の所管に属する事項」であり、国政調査案件には、「国土交通行政の基本施策に関する事項、国土計画、土地及び水資源に関する事項、都市計画、建築及び地域整備に関する事項、河川、道路、港湾及び住宅に関する事項、陸運、海運、航空及び観光に関する事項、北海道開発に関する事項、気象及び海上保安に関する事項」がある。

国会議員の業務遂行の場は、(建前として)委員会にあると考えられる。少なくとも一つの常任委員会の委員となるのであるから、そこで専門的・技術的知識のもとに、審議を尽くすことが期待されている。

 

浦部は、委員会制度について、次のように述べている。

  • 委員会制度は、審議の効率化が図れること、専門的な観点からの立ち入った審理が可能であることなど、そのメリットは小さくない。反面、本会議が、委員会での決定を承認する儀式の場でしかなくなり、形骸化するといった問題もある。
  • 憲法が会議の公開原則を定めている(本会議についての規定)にも関わらず、委員会は議員のほか報道関係者以外の傍聴を許さないものとされており*1国民は、実質的な国会審議を直接傍聴することができないということになっている。

傍聴に関して言えば、現在は「インターネット審議中継」や「ビデオライブラリ」があるので、傍聴とほとんど同じと言ってよいかと思う。

試しに、ビデオライブラリを検索してみよう。(https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php#library

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2020/11/4の予算委員会は、7時間14分あるが、ここで辻本清美をクリックすると、38分のビデオが再生される。

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*1:国会法52条…委員会は、議員の外傍聴を許さない。但し、報道の任務にあたる者その他の者で委員長の許可を得たものについては、この限りでない。委員会は、その決議により秘密会とすることができる。委員長は、秩序保持のため、傍聴人の退場を命ずることができる。