浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

複数性と公共性(3) 「社会的なもの」への批判の陥穽

齊藤純一『公共性』(7) 齊藤の説明から察するに、アーレントは「社会的なもの」を、以下のような意味で使っているようだ。 ――社会にはさまざまな規則(法と言っても良い)がある。その規則は規範である(法は守らなければならないものである)。社会の成…

クオリア(3) 知識論法

金杉武司『心の哲学入門』(6) 金杉は、「物的一元論」が誤りであることを論証しようとする議論に、「想定可能性論法」と「知識論法」があると言っている。今回は「知識論法」の話である。 まず、心の状態に関する事実を「心的事実」と呼び、物理的状態に…

夏の風物詩スペシャル

今年ももうすぐ夏が終わります。特に何ということもなく季節が移り変っていきます。 特別に悲観することもなく、特別に楽観することもなく……。 ・いまこの瞬間における世界の断片 ・忘却 ・渦流のリアル

生の直観

北川東子『ジンメル-生の形式』(11) 本書第7章「生の形式」で、1.境界と2.生の直観について書かれている。境界(内と外)と言うのは、非常に面白いテーマで、今後取り上げたいと思っているのだが、本書での記述は、私にはあまり得るところがなかったの…

処暑

「夏の終わり」を表わす言葉がきっとあるはずだと思い探していたら、「処暑(しょしょ)」という言葉が見つかりました。 次のような意味なんですね。 処暑(8月23日頃)…夏の暑さに陰りが見えはじめる頃。「処暑」とは、暑気が止むという意味。萩の花が咲き…

「黙考」の絵画 - 山口長男、斎藤義重、吉原治良

大岡信『抽象絵画への招待』(8) ロバート・マザ-ウェルは、「最もすぐれた絵画においては、作家は黙考しているのである」といった。 山口長男。斎藤義重。吉原治良。

「見たくない現実を無視する」のは、病気であるか?(3)

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(10) タイトルの「見たくない現実を無視する」のは、病気であるか? に対する私見を最後のほうで少し述べます。 ラマチャンドランはフロイトの心理的防衛について、次のように言っている。 フロイトの…

法とは何か(2) 法は強制秩序なのか?(2)

平野・亀本・服部『法哲学』(2) 法を強制的な命令(強制秩序)とみる見方には、いくつかの問題点がある。…法規範とは何か。…法と道徳の関連。…法準則とは何か。…法的思考とは何か。…法的思考の問題点は?

鳴り響く沈黙

岡田暁生『音楽の聴き方』(1) 素敵なコンサートの後の帰路、せっかく知人と一緒なのに、互いに押し黙ったままでいるくらいつまらないことはないだろう。自由闊達に語り合えれば合えるほど、やはり音楽は楽しい。 オルフェの堅琴。 フランツ・リストの交響…

複数性と公共性(2) 共通世界  悪の凡庸さ

齊藤純一『公共性』(6)。 アーレントの公共性概念の2つ目-共通世界。共通世界の公共性が成立するための条件は何か。 世界をただ一つの観点から説明し尽す全体主義のイデオロギーについて。アドルフ・アイヒマンと「悪の凡庸さ」。「悪の表層性」。思考…

エルネスト・コルタサル(Ernesto Cortazar)

YYJT(3) 今回は、Ernesto Cortazar (1940-2004)です。 2曲紹介します。 Just for You www.youtube.com My Love For You www.youtube.com (付録) かって、よく ピアノの貴公子 Richard Clayderman を聴いたものです。(聴いたことのない人にはおすすめしま…

クオリア(2) 想定可能性論法-クオリアの逆転

金杉武司『心の哲学入門』(5) 今回の話は「論理的思考」というものに興味がないと面白くないかもしれない。 物的一元論とは、「世界は物理的な存在のみによって構成されている。世界にはモノしかない。」という考え方。クオリアとは、「イチゴのあの赤い…

哲学的文化

北川東子『ジンメル-生の形式』(10) 世界の物的性格と多次元の混在 ジンメルの「椅子の哲学」は、マイネッケにとって「すぐに消えてしまう花火」であったのに対し、ズスマンにとって、それは絶対的なものが放つ「きらめき」であった。はかない一瞬の思…

「見たくない現実を無視する」のは、病気であるか?(2)

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(9) 現実の「苦難」を「どうしようもない」と思うとき、それを無視する(すぐに答えを求めない)のは、精神衛生上たいへん良いのではないか、これを「病気」と診断し治療を施そうとすることは、危険な…