2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧
伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(7) 今回から、第3章 疑いの泥沼からどう抜け出すか-哲学的懐疑主義と文脈主義 である。 疑いだせばきりがない。どこまでも問い続けていくと、「宇宙の成立」や「物質と精神」の話にいきつく。「疑いの泥沼」にはま…
平野・亀本・服部『法哲学』(24) 政府の失敗 中央集権的な政府機能が効率的でないことを、通常「政府の失敗」という。主要なポイントは3点にわたる。 官僚機構が非効率…集権化された政府機能を果たすために組織運営費用がかかり、各部局の機能は配分さ…
稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(10) 前回、立岩は、次のようなことを言っていた。 中央指令型の統制経済はうまくいかない。実際にうまくいかなかったし、理論的に正当化もできない。 協同組合主義は「参加」とか言っているが、なんか「だる…
岡田暁生『音楽の聴き方』(15) ケージ美学のルーツ それだけではない。ケージたちの思想は決して単なる珍奇な思いつきではなく、ある歴史的必然性の中で出てきたものであることも理解しておかねばならないだろう。例えばケージ美学のルーツの一つとして…
加藤尚武『現代倫理学入門』(20) 今回は、第9章「思いやりだけで道徳の原則ができるか」の続きである。加藤は、ヘア(1919-2002、イギリスの哲学者)の普遍化理論について、次のように述べている。 彼が挙げる例はだいたいこんな話である。私が大学の駐…
塚越健司『ハクティビズムとは何か』(4) 今回から、第2章 ハッカーと権力の衝突 に入る。テーマは、「情報共有と情報秘匿」である。塚越は、まず情報秘匿のツールである「暗号」について説明している。 https://tozny.com/wp-content/uploads/2014/11/cr…
木下清一郎『心の起源』(1) 本書の副題は「生物学からの挑戦」である。怪しげな本ではない。 心とはいったい何なのか。…いったい、心とはどこからやってきたものであろう。植物などを考えてみればわかるように、すべての生物が私たちと同じような意味での…
末永照和(監修)『20世紀の美術』(5) デ・ステイルとは、モンドリアン(1872-1944)、ドゥースブルフ(1883-1931)らが、オランダのライデンで1917年に創刊した美術雑誌およびそれに基づくグループの名称である。 スタイル(様式)を意味するオラン…
伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(6) 今回は、第2章「科学」だってこわくない の第6節「科学的に実証」はどれだけ信用できるかと、第7節 科学の思考法を日常に生かす をとりあげる。 最初に、「科学的に実証」はどれだけ信用できるか であるが、 科…
平野・亀本・服部『法哲学』(23) 今回は、第4章 法と正義の基本問題 第3節 市場-効率性と倫理 である。平野は、「経済市場に対する法的規制の基本的な役割は何か。全体社会の中に市場を適切に位置づけるためには、どのような考慮が払われなければなら…
稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(9) 「仕事」は、金儲けのためだけではなく、それ自体「生きがい」でもあるという論点について、稲葉は次のように述べる。 稲葉 人に何か有意義な仕事を割り当てる社会が望ましいとは思っていても、その割り当…
岡田暁生『音楽の聴き方』(14) 岡田がこれまで説明してきたのは、「構造的聴取」と呼ばれるものだそうである。 (構造的聴取においては)個々の音は、それこそ言語と同じように、意味の担い手である。音による言語的/建築的構築物のパーツだと言っても…
加藤尚武『現代倫理学入門』(19) 今回は、第9章「思いやりだけで道徳の原則ができるか」である。 相手の気持ちになってあげることが道徳の基本だという考え方は、東洋でも西洋でも語られている。…「わが身をつねって人の痛さを知れ」と諺に言うのは、痛…
塚越健司『ハクティビズムとは何か』(3) インターネットの前身が米国防総省の高等研究計画局(ARPA、アーパ)が構築したコンピュータ・ネットワーク「アーパネット(ARPANET)」であることは、よく知られている。 注目すべきは、コンピュータ間の情報交換…