浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

人工知能(1) ジャガイモの皮をむくロボット(マービン・ミンスキー)

吉成真由美『知の逆転』(7) 今回は、マービン・ミンスキー(Marvin Minsky、1927-2016)に対するインタビュー。アメリカのコンピュータ科学者で、認知科学者。MIT人工知能研究所の創設者の1人。「人工知能(AI)の父」と呼ばれる。インタビューは、201…

「異常」を愛する人たち

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(22) 予断を持たず、素直に次の文章を読んでみよう。 科学の日々の進歩は、壮大な建造物にレンガを一つ付け加えることによっている――科学史家の故トマス・クーンが「標準科学」と呼んだ、どちらかと言…

形式的正義と普遍化可能性

平野・亀本・服部『法哲学』(14) 権利・義務としての正義 ある学者(U)は、正義を次のように定義した。 各人に、各人のものを、配分する恒常不変の意思 これでは意味不明である。亀本は次のような意味であると言う。 各人に、各人の当然受けてしかるべ…

蓮實重彦、三島由紀夫賞を受賞し、「馬鹿な質問はやめていただけますか」

今回は、ちょっと軽い話題。 蓮實重彦が「伯爵夫人」で三島由紀夫賞を受賞し、報道陣に「馬鹿な質問はやめていただけますか」 と言って話題になった話です。 受賞会見の質疑応答は、http://www.huffingtonpost.jp/2016/05/16/hasumi-mishima_n_9998942.html …

水俣病(6) 公務員の「不作為」という犯罪

水俣事件の教訓の一つに、「公務員の不作為という犯罪」の問題がある。今回はこれを取り上げよう。 「犯罪」というのは言い過ぎかと思うが、「許されることではない」を強調したものと受け止めて欲しい。 不作為とは何かというと、 自ら進んで積極的な行為を…

自己と公共性(1) アイデンティティという危機

齋藤純一『公共性』(18) 齋藤は、「自己」も「公共性」も一義的なものではないとして、次のように述べている。 個人と共同体という問題系は、個と共同の関係を、一人の個人が一つの国家に帰属する、ある成員がある共同体に帰属するという仕方で描き出す…

気になるアート(1) ヴィヴィアン・サッセン(viviane sassen)

ヴィヴィアン・サッセン(viviane sassen)は、オランダの写真家です。 1972年アムステルダムに生まれ、アーネム王立芸術アカデミーでファッションデザインと写真を学んだ後、2000年頃よりファッションフォトグラファーとして活躍してきました。『Purple 』…

生命倫理学(2) 「障害児」であっても、産むべきなのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(9) 生命倫理学は何を問題にしているのか。それは、「人工妊娠中絶、重度障害児の出生直後の安楽死(または治療停止)、苦痛回避のための安楽死、脳死者からの臓器摘出」といった問題である。こういう問題を考えているから「生…

音楽の力 (オリバー・サックス)

吉成真由美『知の逆転』(6) 今回は、オリバー・サックス(Oliver Sacks、1933-2015、イギリスの神経学者)に対するインタビュー(その2)。 音楽の力 音楽は、人間の閉じ込められた欲望や記憶を体から解放し、人間に落ち着いたまとまりをというものをも…

心と体の相互作用

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(21) ラマチャンドランは、想像妊娠の話を取り上げている。想像妊娠とは、 妊娠したいと思い詰めていると――妊娠を極度に恐れているケースもときおりあるが――本当の妊娠の兆候や症状がすべて出てしまう…

正義の観念

平野・亀本・服部『法哲学』(13) 今回から「正義」の話に入る。亀本は、正義の定義に関する様々な考え方を整理しているので、ざっと見ておきたい。 戦争の正義 どのような場合に戦争が許されるかという、多少なりとも学問的な正義論の分野がある。 独裁政…

官能的な豚にしてくれ (三島由紀夫)

岡田暁生『音楽の聴き方』(8) 音楽/言語の分節規則 例えば、ベートーヴェンの《運命》冒頭を「ダダ・ダダーン」と区切って聴く(弾く)人など、まずいないだろう。こんな聴き方をしたのではややこしくて仕方がない。このように普段からなじんでいる音楽に…

親密圏/公共圏(3) 別様の暮らし方を提示する

齋藤純一『公共性』(17) 斎藤は、「公共圏が人びとの〈間〉にある共通の問題への関心によって成立するのに対して、親密圏は具体的な他者の生/生命への配慮・関心によって形成・維持される」と述べていた(親密圏/公共圏(2)愛の共同体(2)参照)。…

蘇芳、マルサラ、バーガンディー

今回は「色」の話です。「蘇芳色」というのがあります。「蘇芳」を何と読むのかですが、これは「スオウ」と読むそうです。読み方の話は後でするとして、まず「蘇芳色」というのがどういう色なのか見ておきましょう。 「花蘇芳」の写真を見てください。これは…