浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

手続的正義(2) 立法と行政と裁判

平野・亀本・服部『法哲学』(16) 今回は、「法における手続的正義」の話であるが、話がやや抽象的なので、何を問題にしているのかをよく把握したい。 まずは、本書第2章「法システム」において、法システムの重要な構成要素として、「法的活動」(広義…

水俣病(8) 見て見ぬふり 川崎市水道局いじめ自殺事件

職場でのパワハラ、セクハラ等のハラスメントは珍しいことではない。そして、そのような行為を「見て見ぬふり」をしている者も多い。一例として、「川崎市水道局いじめ自殺事件」を取り上げよう。 以下のような事件である。 Aは、昭和63年4月、川崎市の職員…

所有論(1) お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(1) 本書は、稲葉振一郎(1963-)と立岩真也(1960-)の対談(2005)をもとに構成されており、次の章からなる。 第1章 所有の自明性のワナから抜け出す 第2章 市場万能論のウソを見抜く 第3章 なぜ不平等は…

色目(2) ホーム・パーティーを楽しく

上図の左は早蕨(さわらび)、右は青柳(あおやなぎ)と呼ばれる春の「かさねの色目」です(中紫と濃青)。 でも、あまり魅力的な色ではないですね。少し範囲を広げて、赤紫と緑色全般で考えてみましょう。 <赤紫> これは、次の記事で取り上げました。 sho…

生命倫理学(4) 先日出産したのですが、先天性多発奇形児でした

加藤尚武『現代倫理学入門』(11) 加藤の生命倫理学の検討に入る前に、YAHOO知恵袋にあったQ&Aを転載しておこう。 layc91113さん2013/3/5 15:08:22 先日出産したのですが、先天性多発奇形児でした。染色体には異常がないため、親より長く生きてしまい…

人工知能(2) 自立的に(人間を離れて)思考し行動するコンピュータ

吉成真由美『知の逆転』(8) ミンスキー(Marvin Minsky、1927-2016)に対するインタビューは、2011年に行われた。 チェスのようなものは、実はコンピュータにとっては非常に易しい問題なんです。…ある種の数学などは、コンピュータにとっては実に簡単な…

多重人格障害 浮遊する自己

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(23) 多重人格障害とは何か。ラマチャンドランの説明は、なかなかうまい。 多重人格障害(MPD)は、医学にとって地質学における大陸移動と同じくらい重要である。多重人格障害は、心身医学の主張を…

反復と変化 アヴェ・マリアとミニマル・ミュージック(Minimal Music)

岡田暁生『音楽の聴き方』(9) 音楽における言語ないし建築性とはどういうものか。それを理解するには、音楽のロジックのパターンを知ることが近道であるという。 音楽のセンテンス(例えばメロディ)が、どういう論法でもって互いに関連づけられ、大きな…

手続的正義(1) ミス・キャンパスを選考する

平野・亀本・服部『法哲学』(15) 今回は「手続的正義」の話である。しかし、いきなり「手続的正義」と言われても、一体何を問題にしているのかよくわからない。亀本は、次のように説明している。 手続的正義の考え方は、実質的正義の問題について一致が…

水俣病(7) 公務員の「不作為」という犯罪(2)

*タイトルを、「アート空間と政治空間」から「水俣病」に変更しました。 水俣事件の教訓の一つに、「公務員の不作為という犯罪」の問題がある。今回はこれの2回目である。 「犯罪」というのは言い過ぎかと思うが、「許されることではない」を強調したもの…

自己と公共性(2) 生の様式のディスプレイ

齋藤純一『公共性』(19) アーレントやフーコーに依拠した次の文章は、素人にはなかなか難しい。しかし、的外れや誤解を恐れず、コメントしてみよう。(連想したことを書いてみたということである) 公共性は、生命の保障や共通世界の正義には還元されな…

気になるアート(2) モニカ・ソスノフスカ(Monika Sosnowska)

1972年ポーランド生まれ。ワルシャワ在住。ボズナン美術大学、アムステルダムのライクスアカデミーで学ぶ。第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2007年)のポーランド館代表。主な個展に「Monika Sosnowska」(サーペンタイン・ギャラリー・ロンドン:2004年…

生命倫理学(3) 重度の意識障害者は「人間」か?

加藤尚武『現代倫理学入門』(10) 生命倫理学は、「人工妊娠中絶、重度障害児の出生直後の安楽死(または治療停止)、苦痛回避のための安楽死、脳死者からの臓器摘出」といった問題を扱う。「人間とは何か?」が問われている。 加藤は、生命倫理学で主流…