浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

事実認識と価値評価(2) 「彼女は八頭身で知性もある。ミス・キャンパスにすべきである」と主張してはいけないのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(13) 前回、次のような問題をたてた。 A:所得格差・資産格差が拡大している。格差是正策を打つべきである。 B:彼女は八頭身で知性もある。ミス・キャンパスにすべきである。 現代倫理学の基本的なドグマからすれば、A,…

アカマイ アノニマス ハクティビズム

吉成真由美『知の逆転』(10) 今回は、トム・レイトン(Tom Leighton、1956-)に対するインタビュー。アカマイ・テクノロジーズ社のサイエンティストを14年間務め、現在はCEO(最高経営責任者)。ネットワークへのアルゴリズムの応用において世界有数…

STAP細胞研究不正事件 雑感

以下は、STAP細胞研究不正事件に対する「雑感」である。 事件は、理研の「研究不正行為に関する処分」で終結した 理研は、研究不正疑惑が持ち上がった後、一連の調査を経たのち、2015年2月の「研究不正行為に関する処分」をしたことにより、「研究不正事件」…

クオリアとは何か? クオリア問題とは? 翻訳とは?

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(25) クオリアとは何か? 「痛み」「赤」「トリュフ添えのニョッキ」といった主観的性質を感じる生[なま]の感覚のことである。 これを簡潔に「主観的感覚」とよぶ。私はこれを<私の感覚>と理解し…

コミカル・クラシック ハンガリー舞曲第5番 他

1.Tanz mit Badetuch 2.Ungarischer Tanz Nr.5 - Josh Wave & Stephan Fischer 3.Salut Salon "Wettstreit zu viert" | "Competitive Foursome"

価値相対主義(1) 学者は「正義」を主張してはならない?

平野・亀本・服部『法哲学』(17) これまで「亀本」氏を、「亀田」氏と誤記していたところが多数ありました。お詫びして訂正いたします。 今回から「価値相対主義」の話に入るが、その前に、取り残した「社会的正義」について、簡単にみておこう。 社会的…

水俣病(9) 国・県の責任と義務 なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ?

2016年5月1日、水俣病の公式確認(1956年5月1日)から60年を経過したが、問題は解決していない。畠山武道「水俣病事件と国・県の責任」*1は、こう述べている。 問題解決の兆しはいっこうに見えない。なぜ、問題解決がかくも長引いたのか。その原因、背景、責…

所有論(2) 赤の世界

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(2) 今回は、「第1章 所有の自明性のワナから抜け出す 第2節 どこまでが自分のものか」である。 形の上では「対談」だが、ここまでのところ、全く「対話」がないように思う。 稲葉は何を言いたいのかよくわ…

気になるアート(3) 川内倫子(Rinko Kawauchi)

1972年滋賀県生まれ。93年成安女子短期大学卒業。97年よりフリーランスとして活動開始。2001年写真集『うたたね』『花火』『花子』を同時にリトル・モアより上梓。02年『うたたね』『花火』で第27回木村伊兵衛写真賞を受賞。著作は他に『AILA』、『the eyes,…

事実認識と価値評価(1) 「格差が拡大している。是正策を打つべきである」と主張してはいけないのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(12) 今回から、第7章 <……である>から、<……べきである>を導き出すことはできないか に入る。 加藤は、「<……である>から<……べきである>を導いてはならない」は、現代倫理学の基本的なドグマ[教義、堅固な信条]とな…

人工知能(3) アルファ碁 2045年問題 AI兵器

吉成真由美『知の逆転』(9) ミンスキーに対するインタビューから離れるが、アルファ碁-思考するコンピュータの話を続けよう。この話の焦点は、次の点にあると思う。 1) 一つのネットワークが次の一手(ポリシーネットワーク、小局)を考え、別のネットワ…

宇宙の中心的な謎 しかし僕にはどうだったんだろう?

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(24) 今回より、最終章(第12章 火星人は赤を見るか)に入る。 来世紀[21世紀]の前半、科学は過去最大の難問にたちむかう。これまでずっと神秘主義や形而上学のものだった「自己の本質は何か」と…

音楽の建築的な構造 フィガロの結婚 夕鶴 テンペスト

岡田暁生『音楽の聴き方』(10) 岡田の説明はなかなか面白い。音大の学生に教えているのではないから、専門用語にこだわる必要はない。音楽の建築性ということで、岡田が言わんとすることが了解できれば良いだろう。 音楽のロジックの中に「接続詞」が入…