浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

近視眼のマチス ニンフと笛を持つパン

宇佐美圭司『20世紀美術』(1)*1 宇佐美は、マチス(Henri Matisse、1869-1954)の次の晩年の作品を、最高傑作の一つと評価している。 ニンフと笛を持つパン 1940-43 *2 https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/736x/a3/f2/34/a3f234f87999e5291c8ba87ea4…

事実認識と価値評価(3) 普遍的な価値判断 (キリスト教の黄金律?)

加藤尚武『現代倫理学入門』(14) 今回は、前回に引き続き、本書を離れて、細見論文*1にしたがい、価値判断論争をみていくことにしよう。 価値判断論争とは、 価値判断は客観的に正当化されうるか。事実判断または事実認識は価値判断から中立でありうるか…

数学と経営 もしもし、スティーブ・ジョブスですが…

吉成真由美『知の逆転』(11) トム・レイトン(Tom Leighton、1956-)に対するインタビューの続きをみていこう。 多くのユーザーが、アノニマスなどのグループの掲げる目的や目標に、ある程度賛同しているんですね。「動物への虐待をやめよう」とか、け…

クオリアの特徴 黄色いドーナツと満月

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(26) ラマチャンドランは、クオリアとは、「痛み」「赤」「トリュフ添えのニョッキ」といった主観的性質を感じる生[なま]の感覚のことである、と言っていた。では、そのようなクオリアの特徴は、ど…

リオ・オリンピックに寄せて こんな曲はいかがでしょうか

ブラジルと言えば、「サンバ」のリズムを思い出しますが、ここで取り上げるのは「ボサノバ」です。ボサノバは、「第二次世界大戦後、アメリカ合衆国のポピュラー音楽の影響を受けてサンバはより現代的になり、都会の白人向けサンバとして生まれた」(由比邦…

命の限りに 蝉(セミ)が鳴く

今回は、前半でいささか思考をめぐらし、後半で感傷的な解釈をしましょう。 私たちにお馴染みの蝉の種類とその鳴き方は、次の通りです。 http://siritai-zatugaku.com/archives/944.html (http://yahuhichi.com/archives/342.html)より ちょっと、理科の知…

価値相対主義(2) 人間としての矜持を持つ

平野・亀本・服部『法哲学』(18) いま読んでいる箇所は、第3章 法的正義の求めるもの 第2節 価値相対主義 である。 本節では、イギリスの哲学者ムーア(1873-1958)の「自然主義的誤謬」や「直覚主義」や「情動主義」などのメタ倫理学について、簡潔に…

水俣病(10) 行政は、水俣病の「負」の主役である

行政とは、公務員の行為であるが、それは同時に、民主主義の理念を尊重する者にとっては、「私たち」の行為でもある。それゆえ、タイトルの「行政」は、「私たち」とも言い換えることができる。 2015年6月、衆議院調査局環境調査室は、「水俣病問題の概要」…

市場万能論(1) 取引しなきゃ死んじゃうよ

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(3) 今回は、「第2章 市場万能論のウソを見抜く 第1節 市場のロジックを検証する」である。(引用は、文意を損なわない程度に、若干変形したところがある) 最初に、市場における取引の話があり、 稲葉 譲渡…

気になるアート(4) 沼倉真理(Mari Numakura)

1991年茨城県取手市生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻空間・演出研究室在籍。光と影、その関係性を研究題材とし、鑑賞者に視点・視感を自覚させる作品を制作している。 《主な展覧会・賞歴》 2012年 グループ展「yucaci」 UPSTAIRS GALLERY…