浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

2017-01-01から1年間の記事一覧

疑わしきは罰せず (オウム真理教)菊池被告は無罪である

平野・亀本・服部『法哲学』(41) 今回は、第5章 法的思考 第1節 法的思考とは何か 第4項 事実認定 であるが、本書の説明ではよく分からないので、wikipedia等を参照し、その後、オウム真理教元信者の菊池被告の上告審(最高裁第一小法廷は、2017年12月2…

古典的自由主義(生命と私的所有の保障、信仰・思想・表現の自由、権力の多元性の確立)

久米郁男他『政治学』(2) 前回は「市場の失敗」の話であった。市場の失敗に対しては政府が出動するという。 多くの経済学の入門書は、政府の役割として、第1に、「公共財」を中心とする資源配分、その典型として司法・警察・消防、国防・外交、教育・文…

ナン・ゴールディン ビル・ヴィオラ

末永照和(監修)『20世紀の美術』(22) 今回は、(最終章)第12章 モダニズムを越えてである。1980~1990年代の作品がとりあげられている(本書発行は2000年)。 1980年代の美術は、ヨーロッパとアメリカの双方で大きなうねりとなった新表現主義によ…

情動 恋の吊り橋実験

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(5) 今回は、第5章 動機づけと情動 にでてくる情動をとりあげよう。情動とは、具体的には、喜び,悲しみ,怒り,恐れ等である。この話は「面白い」はずだが、本書の説明はまったく面白くない。何故なのか…

アノニマス 市民的不服従とテロ

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(21) アノニマスの活動は、「市民的不服従」とみなせるようなものだろうか。 市民的不服従とは何か 政治哲学者の寺島俊穂(1950-)は、市民的不服従を「自らの行為の正当性の確信のもとに行われる非合法行為」と定義…

仙台中2自殺 いじめ自殺の「事故調査委員会」は正常に機能するのか?

ハラスメント(3) 今回は、仙台中2自殺の事例をとりあげよう。 2017年4月26日(水)、仙台市青葉区の折立中学校で、中学二年生の男子生徒が自殺。 2017年4月29日(土)、大越裕光仙台市教育長と髙倉祐一校長らは「(いじめと)はっきり断定したものはない…

「自己複製(増殖)に含まれる矛盾」から「生命世界」が開かれる?

木下清一郎『心の起源』(19) 今回は、第3章 「世界」とは何か 第4節 自己矛盾から世界は開かれる である。本節で主張されていることは、「自己複製(増殖)に含まれる矛盾」から「生命世界」が開かれる、ということであろう。これはどういう意味だろう…

百万本のバラ

久保田早紀 www.youtube.com Volver www.youtube.com Philip Kirkorov www.youtube.com 別府葉子 www.youtube.com 以下の画像は、いずれも最初の動画「百万本のバラの花 ・久保田早紀 Photo to Movie」より。

所有という問題-初期値の設定を定める規範は、市場の中にはない

立岩真也『私的所有論』(1) 立岩に『私的所有論』なる著作があることはだいぶ前から知っていた。しかし、amazonの商品説明では、「「私のもの」とは何か? 代理母、女性の自己決定権、臓器移植など、所有と他者と生命をめぐり、社会・倫理を横断して考える…

法的思考 法的三段論法(判決三段論法)

平野・亀本・服部『法哲学』(40) 今回は、第5章 法的思考 第1節 法的思考とは何か 第3項 判決三段論法 である。 亀本の説明は少し分かりにくい。そこで最初に分かりやすい説明をみてみよう。 法規の適用において用いられる三段論法を「法的三段論法」な…

七人の侍 統治の正統性 市場の失敗

久米郁男他『政治学』(1) 序章 「七人の侍の政治学」で、久米は、「本書では、政治をこの映画[黒沢明監督の七人の侍]に示される「本人」「共通の目的」「代理人」という三つの要素に注目して整理し説明する」と述べている。(以下の引用では、原文のま…

アントニー・ゴームリー 身体の現前

末永照和(監修)『20世紀の美術』(21) 今回は、第11章 20世紀後半の彫刻 の最後のほうに出てくるアントニー・ゴームリー(Antony Mark David Gormley、1950-、イギリスの彫刻家)をとりあげよう。どの作品も興味深い。 OBJECT ON VIEW AT NATIONA…

あなたを行動に駆り立てるものは何か?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(4) 今回は、第5章 動機づけと情動 にでてくる動機づけをとりあげる。 内発的動機 人間は感覚刺激が適度に変化していないと、正常に生きていけない。…動物は絶えず環境から情報を収集し、環境に働きかけ…

アノニマスは、なぜDDoS攻撃を仕掛けるのか?

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(20) 今回は、第5章 ハクティビズムはどこに向かうのか である。 ソニーの大規模個人情報流出事件 2011年4月のアノニマスによるソニーのプレイステーションネットワークに対するDDoS攻撃*1(これがソニーグループの1…

福井中2自殺 パワハラ教師と教育委員会の責任は? 調査報告書の「再発防止の提言」を読む

ハラスメント(2) https://picapickup.click/wp-content/uploads/2017/10/yakusokusoukan.jpg テレビドラマ「明日の約束」は、低視聴率*1らしいがなかなか面白い。「いじめ」をスクールカウンセラーの目からみた社会派ドラマ(というふれこみ)。私は、「…

自己増殖がかかえる矛盾

木下清一郎『心の起源』(18) 今回は、第3章 「世界」とは何か 第3節 自己増殖がかかえる矛盾 である。 自己触媒と自己複製 考えてみれば、自己触媒の働きとは随分と奇妙なものである。自己触媒とは自らの構造に依存した機能であるのに、その構造を変化…

音楽の中に「場の鼓動」を聴く

岡田暁生『音楽の聴き方』(25) 今回は、第5章 アマチュアの権利 の最後の部分である。 アマチュアは、プロが作り、プロが演奏する音楽を、作曲家自身が書いた解説を拝読しながら、黙々と拝聴するしかなくなる。自分で演奏して楽しむことも、それについ…

「独裁」と「結論を出せない民主主義」をどう調停すればよいのか?

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(22) 今回は、第5章 みんなで考え合う技術 第4節 クリティカルシンキングの倫理性 である。 地球温暖化に関して、次のような三段論法がある。 [式5-4] (大前提)温暖化への取り組みが遅れるのは望ましくないこと…

政治家・議員・公務員は、恣意的に権力を行使してはならない

平野・亀本・服部『法哲学』(39) 今回より、第5章 法的思考に入る。第1節は、法的思考とは何か である。 私は、「法」を「私たちが共によりよく生きていくためのルール」だと考えている。したがって、本章の「法的思考」もそのようなルールに関係する話…

貧富の差 成長か分配か?

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(25) 前回で対談は終わりなのだが、補論がある。一つは稲葉の「経済成長の必要性について」であり、もう一つは立岩の「分配>成長? 稲葉「経済成長の必要性について」の後に」である。ここでは、稲葉の補論…

枡野俊明 セルリアンタワー東急ホテル日本庭園 閑坐庭

末永照和(監修)『20世紀の美術』(20) 本書ではとりあげていないが、前回の「イサム・ノグチ」との関連で、枡野俊明(ますの しゅんみょう、1953 - )をとりあげよう。枡野は、「日本の僧侶、作庭家。曹洞宗徳雄山建功寺住職、日本造園設計代表、多摩…

心の理論 あなたは相手の気持ちが理解できますか?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(3) 他者の心の状態を推測する 他者の心の状態(信念や欲求)を推測し、他者の行動を予測したり解釈したりする能力は「心の理論」と呼ばれる。(長谷川、本書) このような心の機能の有無を調べる実験の一…

オキュパイ・ラブ 人類の危機をラブ・ストーリーに変える

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(19) 塚越は本章 仮面の集団アノニマス で、オキュパイ・ウォールストリートをとりあげているが、一部のアノニマスもこの運動に参加したという程度のようだ。しかし、このオキュパイ運動*1というのは興味深い。アノニ…

福井中2自殺 教師による「教育(指導)」と言う名の「虐待」

ハラスメント(1) https://www.ktv.jp/yakusoku/index.html (空にいる息子へ) :如月 2017年05月17日 あなたの誕生日に、ロックがかかって開けれなかったスマホが開けられました。 4千回以上のパスワードを入れ続け、やっと見れたスマホには 未送信のメー…

生物世界と物質世界とは、連続しているのか? 不連続なのか?

木下清一郎『心の起源』(17) 前回は、世界が開かれるための4条件(世界の始まりを考えるための4つの要請…特異点、基本要素、基本原理、自己展開)を、物質世界にあてはめてみたらどうなるかであった。次に、この4条件を生物世界にあてはめてみたらど…

デュエット曲(それぞれの人生) - 浮気者のために、酔わせてヨコハマ、自由、私をたどる物語、祈り、都会の天使たち

1.Pour un flirt www.youtube.com 2.酔わせてヨコハマ www.youtube.com 3.Լib℮rtà www.youtube.com 4.熊木杏里 X 武田鉄矢(海援隊) 「私をたどる物語」 www.youtube.com 5.The prayer www.youtube.com 6.都会の天使たち www.youtube.com (付…

どのように見えるか どのように見るか

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(21) 今回は、第5章 みんなで考え合う技術 第3節 立場の違いに起因する問題 の続きである。 本章は、みんなで考え合うには、どうすれば良いのかの話であるが、みんなで話し合う(議論する)技術と言い換えてもよい…

相互了解と合意の形成

平野・亀本・服部『法哲学』(38) 今回は、第4章 法と正義の基本問題 第6節 議論 の続きである。議論の理論は、民主主義を考える場合の最重要なテーマである。なお、今次衆院選により改憲勢力(自民党、公明党、希望の党、日本維新の会)が、国会発議に…

国家の責任

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(24)*1 稲葉は、「国家には、社会的に不利な状況に落ちた人、社会的弱者に対する責任はない」という。 本当に国家に責任はないのか 立岩 例えば、誰かが脚を折ったとか、その結果これこれがあって、というレ…

イサム・ノグチ モエレ沼公園

末永照和(監修)『20世紀の美術』(19) 今回は、第11章 20世紀後半の彫刻 である。 伝統的な彫刻概念を根本からゆるがすような基本的要素は、第2次大戦前のヨーロッパにおいて既に出そろっていた。キュビスムが先鞭をつけるアサンブラージュ*1は…