浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

表現の自由 二枚舌 角を矯めて牛を殺す

平野・亀本・服部『法哲学』(33) いま問題にしているのは、「表現の自由」と「ヘイトスピーチ」である。前回はこの関連で、「憎悪のピラミッドとマイクロアグレッション」を紹介した。 マイクロアグレッション(microaggression)とは、「悪意なき差別」…

権力とは 支配と服従

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(18) 第4章 国家論の禁じ手を破る の続きである。 フーコー権力論の衝撃 私はフーコーを読んでいない*1ので、いい加減なコメントになるかもしれないが、気にしないで読みすすめよう。 稲葉 フーコーの議論は…

ブランクーシの彫刻 <抽象ではなく本質を表現した具象>

末永照和(監修)『20世紀の美術』(14) 今回とりあげるのは、彫刻家コンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brâncuşi、1876-1957)である。 彫刻といっても、(美術愛好家でなければ)あまり馴染みがないので、解説をみておこう。 木,石,金属,…

世代間の対立?

加藤尚武『現代倫理学入門』(29) 今回は、第13章 現在の人間には未来の人間に対する義務があるか である。 現在の人の未来の人への犯罪 現在の世代が未来の世代の生存のために、環境と資源の保護という義務を負うとしよう。現在の地球人と未来の地球人…

ウィキリークス(1) 忖度まんじゅう 法では解決困難な問題にどのように踏み込むか

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(13) 塚越は、ウィキリークス*1について、次のように説明している。 不正に関する情報の公開という、法では解決困難な問題に踏み込むことで、法や政策の無能さを示すと同時に社会貢献を目指す集団がある。ハクティビ…

介在神経系

木下清一郎『心の起源』(10) 木下は、前節において「神経系がどれほど特異な位置を占めるとしても、神経系を持たない生物には心はないなどと言い切るのは差し控えておきたい」と言い、また「これとは逆に、神経系があれば心もあるに決まっているとも言い…

音楽の力(ベートーヴェン、絢香)

岡田暁生『音楽の聴き方』(21) 今回から、第5章 アマチュアの権利 に入る。 岡田は、西洋近代音楽を念頭に置いて話をしているが、ここで述べられていること(考え)は、他分野(芸術全般及びその他の分野)にも拡張可能かもしれないということに留意して…

「価値観の違い」で済まして良いのか?

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(15) 今回は、第4章 「価値観の壁」をどう乗り越えるか 第6節 価値主張のクリティカルシンキングの手法(前回の続き)である。…価値観が対立したらどうしようもないのか? 価値観が多様化しているからといって、相…

憎悪のピラミッドとマイクロアグレッション(悪意なき差別)

平野・亀本・服部『法哲学』(32) 今回は、「表現の自由」と「ヘイトスピーチ」の話の関連で、(本書を離れるが)「憎悪のピラミッド」(Pyramid of Hate)と「マイクロアグレッション」(microaggression)についてみていこう。 テキストは、金友子「マ…

国家論の禁じ手? なぜ、「なぜ?」と問わないのか? 仕事しかしてないよ……

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(17) 今回から、第4章 国家論の禁じ手を破る に入る。 立岩は、国家を論ずるのに2通りの考え方があると言う 立岩 一つは、今ある国家の現状なり成り立ちの説明(事態の説明)。どういう力関係で今の政策決…

エコール・ド・パリのマルク・シャガール

末永照和(監修)『20世紀の美術』(13) 今回は、第5章 両大戦間の国際的動向 である。内容は、エコール・ド・パリ、パリの抽象美術、イギリスの抽象美術、メキシコ壁画運動、アメリカン・モダン、第二次大戦下の美術。…しかし、ざっと見た限り、とり…