浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

キネティック・アート (シェフェール、パルク、グルッポ・T)

末永照和(監修)『20世紀の美術』(17) 前回は、第7章 抽象表現主義からミニマル・アートへ のうち、アンフォルメル(パリの実存的な抽象)をとりあげた。つづく「アメリカ抽象表現主義」については、読書ノート:大岡信『『抽象絵画への招待』で取り…

科学と人間 見るものすべてが花であり、思うところすべてが月のように美しい

加藤尚武『現代倫理学入門』(33) 今回は、第15章 科学の発達に限界を定めることができるか の続きである。 科学は中立的か これに対する反論は、「科学・技術は、善悪どちらにでも使えるもので価値中立的であるから、巨大技術を含めて科学研究・技術開…

Zマシンは核実験装置か? 科学批判の思想

加藤尚武『現代倫理学入門』(32) 今回は、第15章 科学の発達に限界を定めることができるか である。 ながらく人間の文化には、科学や技術の目的の倫理性と道程の安全性についてチェックするシステムが存在しなかった。科学技術から生まれた自然破壊な…

安倍内閣の支持率 55か月連続100%で推移の快挙(内閣府調査)

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(16) ウィキリークスとハクティビズム ウィキリークスが情報技術を用いて可能にしたこと、それは、世界中に不正の「潜在的暴露可能性」を叩きつけたことであり、リークによって社会を「ハック」したことである。不正…

「不安な個人、立ちすくむ国家」…総会議事概要を読む。総会は何をするところなのか?

経産省 次官・若手プロジェクト 「不安な個人、立ちすくむ国家」(3) 経産省 次官・若手プロジェクト 「不安な個人、立ちすくむ国家」の審議がされた第20回産業構造審議会総会(2017/5/18)の「議事要旨」が、2017/8/15にアップされた*1。総会開催後のお…

パヴロフの犬

木下清一郎『心の起源』(14) 第2章 心の原点をたずねる 第5節 生得的情報から自発的行動へ の続きである。 条件反射 動物がある刺激を受けると、否応なしに一定の反応が起こってしまうことがある。これは生得的反射であって無条件反射と呼ばれる。これ…

アマチュアの領分

岡田暁生『音楽の聴き方』(23) 第5章 アマチュアの権利 の続きである。 「聴く音楽」と「する音楽」 大戦中にベッカーが提起した音楽と社会をめぐる問題を、1920年代に入ってさらに展開させたのがドイツの音楽学者ハインリッヒ・ベッセラーである。…ベッ…

価値観の壁を乗り越える その先は?

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(18) 第4章 「価値観の壁」をどう乗り越えるか の第8節は、結局「生きる意味」とは何だったのか である。ここで伊勢田は、生きる意味の問題について、ここまでで紹介してきた手法がどう使えるのかをおさらいしてい…

各人は自由に自らの幸福を追求できる ???

平野・亀本・服部『法哲学』(35) いま読んでいる箇所は、第4章 法と正義の基本問題 第5節 共同体と関係性 である。 平野は、共同体論者の言う「自由社会の病弊」を紹介した後、次のように書いていた。 このような自由社会の病弊は、共同体論によれば、…

「国家」を主語にするということは…… (軍事大国への道)

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(20) 今回は、第4章 国家論の禁じ手を破る 第2節 国家の存在理由 である。 なぜ国家があるのか 例の如く、稲葉の話はわけが分からないので、省略しようかとも思ったのだが、「わけの分からなさ」を書きとめ…

アンフォルメル - パリの実存的な抽象

末永照和(監修)『20世紀の美術』(16) 前回クイズ(次の彫刻の作者は誰でしょうか? 参照)の答えです。 (A)バーバラ・ヘップワース、(B)アルベルト・ジャコメッティ、(C)パブロ・ピカソ 美術愛好家でなければ、たぶんヘップワースやジャコ…

相対主義

加藤尚武『現代倫理学入門』(31) 今回は、第14章 正義は時代によって変わるか である。加藤は、価値基準が場所や時代によって変わるとして、ヘロドトス等から色々な例を簡単に紹介しているが、あまり面白くないので、これは省略する。 加藤は、相対主…

ウィキリークス(3) 内部告発は、情報漏洩の犯罪なのか?

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(15) ウィキリークス関連で、内部告発と公益通報についてみておこう。ウィキリークスは、内部告発や公益通報とどう違うのかを認識しておく必要がある。(私は前回、ウィキリークスとは「不正告発サイト」であるとした…