読書ノート
芝垣亮介・奥田太郎編『失われたドーナツの穴を求めて』(1) 先日、BOOKOFFでぶらぶらしていたら、面白い本が見つかった。『失われたドーナツの穴を求めて』という本である。 タイトルに惹かれて手に取ってみると、右上に穴があいている。実際には、 こん…
神野直彦『財政学』(37) 今回は、第15章 要素市場税の仕組みと実態(p.213~)をとりあげる。 神野は、生産物市場税(前章)と要素市場税(本章)に大きく区分している。次の説明は、唐渡広志による*1。 生産物市場:財・サービスを売買する市場。…企業…
山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(39) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き「パターンの生成と個体の生成」(p.203~)である。 山口は次のようなことを述べている。 DNA分子が担う情報には、タンパ…
香取照幸『教養としての社会保障』(32) 今回は、第9章【改革の方向性】「安心」を取り戻すために、どう改革を進めるべきか 第3節 社会経済の変化に対応できるシステムへと自らを改革する(p.266~)と第4節 成長に貢献する制度を作る(p.275~) をとり…
ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(9) 今回は、第3章 無の小史(p.72~)である。(久しぶりに本書を読むことにします*1)。 ホルトは、「何もない(無)とはどういうことだろう?」と問い、「存在しないもの」と答えている。 貧乏人はそれ(無)…
井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(23) 今回は、第2章 エゴイズム 第4節 ディケーの弁明 2 普遍化可能性 の続き(p.78~)である。(D:正義論者、E:エゴイスト。緑字は傍点の代わり) 第3の疑問 Eが提起する第3の疑問は、「なぜエゴイストは…
山岸俊男監修『社会心理学』(23) 今回は、第4章 対人認知と行動のうち、「表情の認知」(p.104)である。 表情は、非言語コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション、non-verbal communication)の一つである。非言語コミュニケーションとは…
アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(31) 今回は、第5章 競争が人格をかたちづくるのだろうかー心理学的な考察 第2節 勝利、敗北、自尊心 の続き(P.180~)である。 「協力は自尊心を高めるのに役立つが、競争はそれとは全く逆の効果をもたらす」と…
久米郁男他『政治学』(38) 久しぶりに本書を読むことにする。 本人-代理人関係論(プリンシパル・エージェント理論、Principal-Agent Theory) 国会改革-委任の終わりか 日本官僚制論 迷える官僚 国士無双 利害調整 アイヒマン 今回は、第12章 官僚制…
戸田山和久『哲学入門』(1) 読みたい本は多々あるのだが、本書もその1冊である。 哲学系としては、ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』の次にとりあげようかと思っていたのだが、忘れないようにここにメモしておこう。 本書の内容は、次の通りである…
野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(8) 今回から、第Ⅲ部 演繹 である。第7章 否定、第8章 条件構造、第9章 推論の技術 となっている。 冤罪 陰謀論 and の意味 野矢は「演繹」について次のように述べている。 演繹は、論証のための基本技術である。 正し…
神野直彦『財政学』(36) (前々回の続き) 1.輸出取引に係る消費税の処理 2.「消費税」再考 3.「輸出取引に係る消費税の処理」再考 4.取引高税の可能性 5.取引高税の逆進性 1.輸出取引に係る消費税の処理 今回は「輸出取引に係る消費税の処…
神野直彦『財政学』(35) (前回の続き) 免税点制度 1.「消費税」と「売上税」と「付加価値税」 2.「消費税」という言葉の誤用 3.国税庁による「消費税」の説明は正しいか? 免税事業者の大部分は個人事業者や自営業者であり、一部小規模企業が含…
神野直彦『財政学』(34) 「インボイス制度」の導入(2023/10)が話題になっている(※)。今回は、第14章 生産物市場税の仕組みと実態 の続き(p.202~)であるが、インボイス制度にも言及がある。 (※)課税事業者が消費税を算定するにあたり、仕入控除…
山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(38) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き「自己組織化臨界」(p.202~)である。 カウフマンは、「生物圏の共構築を支配する法則の候補」を、「カオスの縁」や「自…
野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(7) https://classy-online.jp/fashion/176426/ 1.マスクをすべきである/マスクをする必要はない。(規範) 2.マスクを外しても美人である/美人ではない。(価値判断) この主張の根拠は何であるか? そして説得力は…
井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(22) 「正義の理念が含意する禁止」、「集団的エゴイズム」の概念を念頭に、下の写真を見てみよう。 8日、キーウ(キエフ)の街角に飾られた「クリミア橋」爆破を描いたアート作品を前に記念撮影するウクラ…
香取照幸『教養としての社会保障』(31) 今回は、第9章【改革の方向性】「安心」を取り戻すために、どう改革を進めるべきか 第2節 持続可能な社会をつくる である。 香取は、次のようなことを述べている。 経済成長を遂げて日本社会と社会保障を維持する…
山岸俊男監修『社会心理学』(22) 前回は、第3章 社会の中の個人 のうち、「内発的動機付け」であった。次に「自己効力感*1」、「セルフ・モニタリング*2」と続くが、これは面白くないので省略する。 次は、第4章 対人認知と行動 である。最初に「対人認…
伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(13) 今回は、第7章 上級編:データ分析の不完全性や限界を知る の続き(p.249~)である。 外的妥当性[一般化可能性]の問題と関連して、「出版バイアス」と「パートナーシップ・バイアス」の問題…
野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(6) 今回は、第Ⅱ部 論証 第5章 演繹と推測(p.71~)である。 演繹と推測はどう違うのだろうか? 演繹も推測も、ある事柄を根拠として何らかの結論を導くものである。 演繹と推測は、その使われる目的が全く異なってい…
アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(30) 今回は、第5章 競争が人格をかたちづくるのだろうかー心理学的な考察 第2節 勝利、敗北、自尊心である。 コーンは、次のように述べている。(p.179) ①アメリカ社会のような競争社会においては、ふつう協力に…
山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(37) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き(p.196~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論(反応拡散系、散逸構…
山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(36) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル(p.192~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論の概略が説明されている。 シ…
野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(5) 今回は、第Ⅱ部 論証 第4章 論証の構造と評価 の続き(p.64~)である。 根拠となる主張の (1)意味規定、(2)事実認識については前回みたので、今回は (3)価値評価である。 (3)価値評価 価値評価に関わる主張には、…
野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(4) 今回は、第Ⅱ部 論証 第4章 論証の構造と評価 である。 ここで「論証」とは、「なぜ」の問いかけに対して「なぜなら」と答えていく、日常的に為されるそうしたやり取りのことである。(p.56) 論証の構造 論証とは…
井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(21) 今回は、第2章 エゴイズム 第4節 ディケーの弁明 2 普遍化可能性(p.71~)である。(D:正義論者、E:エゴイスト。緑字は傍点の代わり) 正義理念の正当化の問題について、D(ディケー)は一つの例から…
伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(12) 今回は、第7章 上級編:データ分析の不完全性や限界を知る(p.240~)である。 伊藤は、「どのようなデータ分析手法にも不完全性や限界があることを認識しておくことが重要である」として、以下…
香取照幸『教養としての社会保障』(30) 今回は、第9章【改革の方向性】「安心」を取り戻すために、どう改革を進めるべきか 第1節 安心社会の基盤をつくる である。 自立と連帯、競争から共生へ スローガンは、「自立と連帯」、「競争から共生へ」である…
久米郁男他『政治学』(37) 前回、最後のほうで「水道事業の民営化」について、新聞記事や動画を紹介した。この話題は興味深いのでもう少し検討したいと考えていたのだが、あまり深入りすると先に進めないので、一旦保留にして、今回は、第12章 官僚制 …