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「不安な個人、立ちすくむ国家」…総会議事概要を読む。総会は何をするところなのか?

経産省 次官・若手プロジェクト 「不安な個人、立ちすくむ国家」(3)

経産省 次官・若手プロジェクト 「不安な個人、立ちすくむ国家」の審議がされた第20回産業構造審議会総会(2017/5/18)の「議事要旨」が、2017/8/15にアップされた*1。総会開催後のおよそ3カ月後である。のんびりしたものである。

総会の議題は、①中長期的な日本社会の在り方について(次官・若手プロジェクトによる提言)、②新産業構造ビジョンの検討状況について の2つである。以下、気になった部分のみ、私の「感想」を述べる。

 

大串経済産業大臣政務官挨拶

経済産業省として中長期的、構造的課題を見据えた上で、今何をすべきかについてさまざまな切り口からご議論頂ければと思っております。…ご議論頂くための参考といたしましては、中長期的な日本社会のあり方について、将来を担う若手が主体となりまして、菅原次官のもとで検討いたしましたので、議論の方向性をご紹介させて頂きます。本日は、この内容のみならず、成長戦略、通商政策、エネルギー政策、中小企業政策、あるいは地域経済の活性化など幅広い観点からご議論頂ければと考えております。もう1つの議論の材料といたしまして、昨年から議論しております新産業構造ビジョンについて、成長戦略に向けた具体的な方向性もご紹介させて頂きます。

たったの2時間(資料説明を含め)で、多数の委員が出席して、まともな議論が可能なのだろうか。

 

秋山委員(株式会社サキコーポレーション代表取締役社長)

私がやっております電子部品の実装のものづくりの世界で、実は実装する機械と検査をする機械をマシン・トゥ・マシンでつなぐということが…なかなか実現しなかったのは、技術をオープンにして他社と連携をするということに対してネガティブな思い込みがあったということです。今はそれを乗り越えて、実際につないでみると、そこで初めて具体的な技術の課題が出てきて、その課題を一つ一つ解決して、理想の世界をつくるという取り組みがやっと始まったところでございます。

「技術をオープンにして他社と連携をする」ことが、社会にとって望ましいことではあっても、容易に「他社と連携をする」ことは出来ないだろう。「私企業」尊重の「公」がそのような(技術のオープン)政策を推進するだろうか。経産省としては「一つの意見として承る」だけではないだろうか。

 

五神委員(東京大学総長/知的財産分科会会長)

グローバル化が加速する中で、経済、産業の構造が今までの資本集約型から知識集約型、つまりナレッジインテンシブ、あるいはウィズダムインテンシブなものへと大きく転換しています。その中で、コネクテッド・インダストリーズというコンセプトも提示されています。

コネクテッド・インダストリーズについては、いずれ考えてみたい。異業種交流(連携)と何か違うのだろうか。

2025年には団塊世代の方が後期高齢者になります。団塊世代健康寿命を伸ばし、彼ら彼女らが生産活動に参加し続けられるような取組を進め、貴重な労働力である団塊ジュニア世代が介護離職しないようにすることが大切です。

団塊世代に限らず、健康寿命を伸ばすことは望ましいことだろう。健康な間は、(生産活動に限らず)「仕事」をすることは望ましいことだろう。団塊ジュニア世代に限らず、介護離職しなくてもすむようにすることが望ましいであろう。では、「社会保障問題」を解決するための基本的な考え方は何なのか。

2006年から2016年の間に40歳以下の(東京大学の教員の)任期なし雇用903人から383人ということで実に520人も減っている[若手研究者の大半は任期付である]。…若手教員の雇用を守るための先行的な投資が必要ですが、それがこれまで十分ではなかった。

「任期なし雇用」とは、(概ね65歳の)定年まで雇用が保証された雇用形態である。東大では(でも)、このような雇用を保障された教員が減っているということで、「非正規化」が進んできたということか。そして五神は、これを望ましくないと考えている。五神は民間企業の「非正規化」の流れについても望ましくないと考えているのだろうか。

大学の知を活用して産業界と一緒に新しい価値を創るという観点で、産業界との連携も重視しています。新しいビジネスをつくるターゲット、日本の優位性がどこにあるか、…高齢化社会に備えるためのビジネスをどう積極的につくるかという観点で進めていくのが有効。

産学連携して、国際競争に打ち勝つビジネスをつくっていこう、という方針(?)であるようだ(昔からのお題目)。既に高齢化社会なのだが、「高齢化社会に備えるためのビジネスをつくる」とは何をイメージしているのだろうか。

 

室伏委員(お茶の水女子大学学長/2020未来開拓部会会長)

健康寿命の延伸ということですが、これは現在の日本のとても大きな課題です。高齢者に活躍の場を用意することはとても大事なことですが、なかなか現状ではそういったことができない状況がありますので、ぜひ経産省が旗を振って頂いて、高齢者の活躍の場をつくって頂きたいと思っています。

健康寿命が数年延びたところで、数年後には病気・介護は免れない。こんなことで「社会保障問題」が解決するのだろうか。なお、医療技術の進歩があったとして、その恩恵を受けるのは一部の富裕層だけということになる可能性を考える必要があろう。

健康寿命の延伸と「高齢者に活躍の場を用意する」話は、別の話である。

私は「高齢者」と言うのは適切ではなく、「老人」と言うべきだろうと考えている。「高齢者」というのは、ただ単に(恣意的な線引きした)一定年齢以上の者をそう呼んでいるに過ぎない。一方、「老人」というのは、精神的・肉体的に衰えがきた人の呼び名である(特に肉体的に)。衰え(老化)のきかたには、非常に幅がある。仕事との関連で言えば、「まともに仕事ができる人」から、「まったく仕事ができない人」まで幅広い。実際に仕事をしている人もいるし、仕事をしていない人もいる。こういったことを考慮せず、「高齢者に活躍の場を用意する」などというのは、実に荒っぽい議論である。

ところで、経産省というのは、「旗を振って、高齢者の活躍の場をつくる」部署なのだろうか。どこの部局で?

 

伊藤委員(学習院大学国際社会科学部教授/新産業構造部会会長)

社会を変える一番大きな力になるのは…思想だろう。まり、どういう社会をつくりたいのかということをより明確にわかりやすく伝えるというのは多分、中長期の手法としては一番すぐれていると思います。

伊藤がこのように述べるということは、次官・若手プロジェクトの 「不安な個人、立ちすくむ国家」資料には、「どういう社会をつくりたいのか」の理念がない、ということを言わんとしたのだろうか。そうでないとしたら、資料の「どういう社会をつくりたいのか」の理念に賛同するという言葉があってよいはずである。

 

中室委員(慶應義塾大学総合政策学部准教授)

「科学的根拠に基づく政策形成」(Evidence-based Policy Making)の重要性。…今、須賀さんがおっしゃいましたように、政策形成に手詰まり感があることの背景には、政策の「成果」ではなく、これまでの「慣行」で政策が形成され、その政策への「支出」の大きさが評価の基準になっていることがあるのではないかと推察されます。 

 ふーむ。これまでは、科学的根拠に基づかず、「慣行」で政策が形成されてきたのか。

仮にうまくいかなかった場合も、その理由は何で、どのように改善していくべきかということを客観的に検証し…。

ふーむ。これまでは、うまくいかなかった場合、その理由は何で、どのように改善していくべきかを考えてこなかったのか。

科学的な根拠によって「成果」の大きさを明らかにし、それに基づいた資源配分を行っていくという考え方にシフトしていく必要があります。

「科学的な根拠」は重要だろうが、「科学的な根拠に基づいた資源配分」など可能だろうか。「価値前提」をどう考えるのか。

科学的根拠に基づく政策形成を実際に実装されていくためには、中核組織となるべきものが必要で、イギリスにもアメリカにもそうした機関が設置されています。

とは言え、「科学的根拠に基づく政策形成」は、検討に値しよう。

 

逢見委員(日本労働組合総連合会事務局長)

高齢者雇用…できるだけ早いうちに65歳定年制に向けた動きというのを加速していく必要があるのだろう。その上で、さらに生涯現役というような社会をどう考えていくかということだと思います。

生涯現役」とは何だろうか。悪く言えば、「体の弱ったよぼよぼの老人」でも、動ける限りは、働いて稼がなければ食っていけない、という社会なのだろうか。そうではないというなら、「体の弱ったよぼよぼの老人」(別に介護を要するわけではない)をどのように扱う社会なのだろうか。

公共サービスの担い手…行政だけに公共サービスを任せることは困難になってきています。民間事業者、NPO、協同組合等の多様な担い手が参画して、官民協働で公共的なサービスを担う仕組みをつくっていく必要がある。

逢見は「公共サービス」をどのようなものと考えているのか、よく分からない。「民間でできるサービスは、民間に任せる」のではない。「民間でもできるかもしれないが、民間で行うことが適切ではないサービスを、公が担う」のである。「官民協働で公共的なサービスを担う」というとき、どのようなサービスのことを言っているのかを明らかにする必要がある。

 

坂野委員(株式会社ノンストレス代表取締役

 沼上委員(一橋大学理事・副学長/経営力向上部会会長)

実際には短期トレードオフなのだけれども、長期にはトレードオフではない。どこかに集中することで良循環の輪が回って、結果的に総取りになる。間違ったほうに集中すると、短期にもトレードオフだけれども、長期にも全滅になるという問題が起こると思うのです。それを考えると、背後のメカニズムをしっかりと理解した上で、長期の良循環が回るようなところに集中するというシナリオをぜひ今後煮詰めていって頂きたいなと思っております。

先ほど、「科学的根拠に基づく政策形成」というのがあったが、「背後のメカニズム」も分からずに、政策形成が為されてきたのか。沼上は、「背後のメカニズム」を考慮したら、どうあるべきだというのだろうか。

 

三村臨時委員(日本商工会議所会頭/中小企業政策審議会会長)

先ほどの資料で高齢者の60%以上が職についていないというのですけれども、実感としてはそんなことはないのではないでしょうか。最近、高齢者を相当程度雇わない限り、中小企業はやっていけないということであります。もし60%の人たちが職についていないとすれば、これをマッチングするという機能を積極的にやることによって、高齢者にとっても、社会にとっても、あるいは健康にとってもいい世界をつくることができるのではないだろうかと思っております。

統計は信用できない? 能力の衰えた「老人」を、現役なみの給与で雇うことはできない。安い給料、ひどい労働環境でも、働かなければ食っていけない老人は、既に働いているのではないか。

本当に財源がもつのだろうか。…財源の問題を真剣に考えないと、サステナビリティーは確保されないと考えますので、ぜひとも若手のほうからそういう声を上げて頂きたいと思います。

三村は、「財源問題」についてどう考えているのだろうか。役人まかせ? 

 

御手洗委員(株式会社気仙沼ニッティング代表取締役社長)

大筋ではとても共感するところが多いのですが、あえていわせて頂くと、もうちょっと多様な人の話を聞いたほうがいいのではないかなということを思いました。例えば母子家庭の貧困ですとか、高齢者の方の不安ですとか、将来について若者が不安であるというようなことに関してイメージができているのかなというところは少し思うところでございました。

この点は、御手洗と同感である。「弱者」の立場というのは、なってみなければ分からない部分も多い。「有識者」だけでなく、実際に苦しんでいる人たちの話を聞くことが大切だろう。

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http://www.meti.go.jp/main/60sec/2016/images/20160824001a.jpg

 

武田委員(株式会社三菱総合研究所政策・経済研究センター副センター長 チーフエコノミスト

中長期的な日本社会のあり方について…不安な個人というタイトルがついていますが、本当に何に不安を感じているのかという点はしっかり把握されたほうがいいのではないかと感じました。

この点は、武田と同感である。「本当に何に不安を感じているのか」、「その原因は何であるのか」がしっかりと把握されているのかどうか。

例えば、弊社は毎年生活者3万人にアンケート調査を様々な項目で行っています。その回答を1つご紹介いたしますと、「今後日本社会で不安に思うことは何か」という問いに対して、2011年、つまり震災が発生した年から2016年にかけて、もっとも低下した項目は、失業や就職難に対する不安です。つまり、人手不足という言葉に代表されるように、雇用に対する不安は大きく軽減しています。一方で、2011年からほとんど変化がなく、高止まりしている項目が1つございます。それは社会保障の持続可能性、財政に対する不安という回答でございます。もちろん我々の項目の立て方についてもこれで全てかという問題はございますが、客観的なデータも踏まえて、実際に必要な政策は何かといった議論に進んで頂けると、より充実した提言になるのではないかと思います。

但し、武田のこの意見には異論がある。ここ数年、失業や就職難に対する不安が減少したからといって、いつかまた失業や就職難に対する不安が増加するだろう(景気循環)。「社会保障の持続可能性、財政に対する不安」、これは間違いなくあるだろう。これらは、若年世代だけの問題ではない。全世代にとっての不安である。構造的というか制度的というか、ここは沼上いわく「背後のメカニズム」をしっかりと理解しなければならないところだろう。

武田が「客観的なデータも踏まえて、実際に必要な政策は何かといった議論に進んで頂けると、より充実した提言になる」と言うのならば、自ら「客観的なデータ」を踏まえて、「実際に必要な政策(の方向性)」は、これこれだと話してもらいたいところである。

その観点では、…私は社会保障制度改革をしっかり行っていくべきだと思っております。制度の持続可能性はもとより、世代間の公平性の確保に真に向き合って議論していく。

答えは「社会保障制度改革」? 結局、具体的には、役人任せ?

 

松原委員(東京大学大学院総合文化研究科教授/地域経済産業分科会会長)

中長期的な日本社会のあり方に関して、「地域」がどう関係してくるのか、何を言わんとしているのかよく分からない。

 

坂根臨時委員(株式会社小松製作所相談役/総合資源エネルギー調査会会長)

日本の多くの業界では、とにかく常に数多くのプレーヤーがいて、嘗ては切磋琢磨でしたが、今や激しい消耗戦を繰り広げている。今、宅配便が問題になっていますが、まさにあれが一番典型的な例でして、全員で貧困化してきたというのが実態だと思います。…今やるべきことはデフレ脱却と格差是正。デフレ脱却のためには、なんといっても大企業中心のこの国がもっと事業の選択と集中を思い切ってやり、そして、研究開発やITの仕組みもコストと時間のかかる自前主義をやめて、内部に抱えているヒト、モノ、カネをもっと外へ出す。そうしてベンチャー企業や中小企業、そして一次産業、三次産業にヒト、モノ、カネが向かうようにする。…宅配便などは、あれだけ我々利用者に貢献してくれていながら、みんなで競争して値下げをするからあんなことになってしまっているわけで、やはり稼いで分配するという基本的な部分をもう一度この国はチャレンジし直す必要があると思います。

坂根は、「みんなで競争して値下げをするからあんなことになってしまっている」と言う。市場経済を否定しているのだろうか。「競争」に打ち勝つために、「過重労働」や「低賃金」や「非正規労働の活用」やその他諸々により、「値下げ競争」をして、生き残りを図ってきたのではないか。大企業が、研究開発やITを、外部化(アウトソーシング)しても、そこで激しい「競争」が起きるだけではないか。…ともあれ、価格支配力を持った「独占(寡占)企業」を大事にせよということか。

 

菅原事務次官

1981年に私は役人になったのですけれども、そのときに先輩にいわれたのは、制度は変えられる、つくれる、予算は増やせるという前提で政策を立案することが出来るということでした。最近入省した若者は、制度は変えられないものという前提で考える傾向があります。普通の法律ですら、ましてやこんな巨大な社会保障制度に手がつけられるのだろうかという思い込みが問題意識の根底にあったように思います。

「最近入省した若者は、制度は変えられないものという前提で考える傾向があります」、これには「うーん」と唸ってしまう。「官僚」たる「国家公務員」は、「天下国家」を考える必要があるのか、ないのか? 

産構審でこういう議論をさせてもらうのは非常にありがたく、きょう頂いたご議論を含めまして、…大きな制度改革に具体的にどう取り組むかというところについて引き続き省庁の壁を超えて検討を深めていきたいと思います。

ここまで見てきた各委員の発言が、「議論」といえるのか。「きょう頂いたご意見を含めまして」の間違いだろう。まあ、はっきり言えば、「参考までに、あんたの意見は聞いた。我々に都合のいいところだけピックアップして、我々の意見をまとめる」といったところであろうか。

 

松原委員(東京大学大学院総合文化研究科教授/地域経済産業分科会会長)

 …

三村臨時委員(日本商工会議所会頭/中小企業政策審議会会長)

「コネクテッド・インダストリーズ」というのは考えてみれば当たり前の話で、新技術が出てきたのだから、1つの産業だけで済む話ではなく、自動的にいろいろなものが連結されるということで、当たり前の概念だと思うのですけれども、この概念を打ち出すに当たっては、ぜひとももう少し中身をわかりやすく整理して頂きたい。

私は資料を読んでいないので分からないのだが、中身は「わかりやすく整理されていない」のか。

 

沼上委員(一橋大学理事・副学長/経営力向上部会会長)

昔の製造業というのは、コアとなるデバイスとか、ものすごく重要な材料とか、そういうもので差別化をして、セットとしての製品を勝ち抜いていくという戦略論だったのだろうと思うのです。ところが、この時代のものは、センサーとか通信のデバイス等が載っかったセットとしての機器これがさらにサイバー空間上でつながるとか、クラウドでつながっているというような3層構造になっている。

情報技術の進歩からの当然の動きだと思う。別に戦略論とか言わなくてもいいだろう。

 

坂野委員(株式会社ノンストレス代表取締役

サービス業界も現在、過剰品質、過剰サービスを少し戻すことで、人手不足の問題もひとつ解決できるのではと思っております。…過当競争から来る価格競争は私どもの業界でも本当に大変なことになっております。

消費者からすれば、そのような良好な品質・サービスを消費するのである。この競争に勝てないものは、市場から撤退するしかない。それが市場経済というものであろう。これを問題だとするならば、別の仕組みを考えなければならない。

 

坂根臨時委員(株式会社小松製作所相談役/総合資源エネルギー調査会会長)

日本がイノベーションで本当に世界に打って出るほどのビジネスモデルで先行するには、この国で始めたらなかなか難しいというのが私の感覚です。もう少しIoT社会に合った役所のあり方が問われているのではないかなと思います。

国際競争を視野に入れたら、規制のあり方を再検討しなければならない、という主張であろう。グローバル企業にとっては当然の要求である。多数の中小企業を所管する経産省にしてみれば、どうバランスをとるかだろう。

 

逢見委員(日本労働組合総連合会事務局長)

社会全体として豊かでつながりのある社会に果たしてなっていくのかというところが、本当にそうかと感じているところがあります。…成長から取り残された人の存在が注目されていて、…融合ではなく分断の社会という方向に新しい産業技術が向かうかもしれない。そういう危機感をやはりもって、分断社会ではなくて包摂的な社会。社会全体を新産業技術がそういう方向性を目指していかないと、悪いシナリオのほうに行ってしまう懸念がある。

蓮見のこの指摘は大事なところだろう。新しい産業技術によるバラ色の世界とは、実は分断社会であった、となりかねない。そこはテロが頻発する社会かもしれない。…既に、現代は「分断社会」であるのかもしれない?

 

五神委員(東京大学総長/知的財産分科会会長)

中室委員(慶應義塾大学総合政策学部准教授)

私の専門は教育経済学なのですが、最近自治体から委託を受けて子供の学力や学校環境の分析をしますと、保護者の社会経済的地位による分断や格差の拡大が確認されるようになって来ています。…医療費にせよ、教育にせよ、「一律」あるいは「平等」という考え方が支配的で、それがわが国の政策形成にも影響を与えています。しかし、「一律」「平等」を重視しすぎた結果、格差の拡大し、再分配が機能していないというところについては見直していく必要があるのではないかと考えます。

「一律」「平等」をどう捉えるかである。「格差が拡大し、再分配が機能していない」のならば、それを「平等」というべきではない。「平等」を重視すると、なぜ格差が拡大するのか。

 

秋山委員(株式会社サキコーポレーション代表取締役社長)

御手洗委員(株式会社気仙沼ニッティング代表取締役社長)

新産業構造ビジョン…もともとの発想としては、AIですとかリアルデータの収集を生かして課題解決していく新しい社会システムのパッケージをつくって、グローバル展開まですることによって、きちんと外貨を稼いでいくというプランなのだと思う。

ふむ。外貨をかせぐ新産業を支援する。

 

伊藤委員(学習院大学国際社会科学部教授/新産業構造部会会長)委員

柳瀬経済産業政策局長

どうやって稼いで、どうやって雇用をつくっていくかということがポイントなのだろうなと思います。

ふむ。稼ぐことが第一である。

新産業構造ビジョンの中間とりまとめ…そのポイントは、変革に乗りおくれた場合には中間層が崩壊していく。それはみんなAI、ロボットに置きかわるだけで、国際競争力を失って、今でいえばGAFA(デジタル市場の巨大企業、GoogleAppleFacebookAmazon)みたいなものの下請になっていくということで、雇用も700万人以上減るし、生産性も伸びないので、雇用の質も上がらない。他方、うまく人材投資と変革が進んだ場合には、製造工程とか、経理とか、人事のバックオフィスとか、ルーチンの営業とかは相当な人数が減りますけれども、他方、おもてなしですとか、いろいろなデータを使った保険などの商品企画とか、むしろIoTを使いこなすことで新しいサービスをつくっていくとか、そういうところの雇用は逆にふえるということで、そうした場合には百数十万人の減少にとどまる。

GAFA(デジタル市場の巨大企業、GoogleAppleFacebookAmazon)の下請と言われると、(日常これらのシステムを利用しているのだが)おそらく誰もがイヤなので、経産省の「国際競争力」強化の施策に賛成となる。

 

榊原産業構造審議会会長(日本経済団体連合会会長/東レ株式会社相談役)

経済界といたしましては、経済社会情勢の変化を先取りし、政府の成長戦略に沿って積極経営に取り組むという方向で努力をして、経済の好循環の実現に取り組んでまいりたいと思います。経済産業省には引き続き、政府における成長戦略、経済産業政策のかじとり役として、一層のリーダーシップの発揮をお願い申し上げます。

政官財一体となって政策が推進されるものと思われる。

 

菅原事務次官(締めくくり挨拶)

新産業構造ビジョンを含めまして、やはり今日本が置かれている状況で、これからどこで稼いでいくのか、その稼いだ資源をどう配分していくのか、その前提としての社会保障制度、税制を含めた財政制度はどうあるべきか、全部つながっている議論だと思います。…既に決まっているという前提に立たずに、ありとあらゆる制度を根本から見直すつもりで、経産省全体として一丸となって、事の解決に当たりたいと思います。 

 「全部つながっている」、そうだろう。「ありとあらゆる制度を根本から見直す」、おおいに結構。であれば、「経産省」という枠にとらわれずに、広範囲でかつ深い議論が必要だろう。

 

各委員が与えられた時間内で(数分間)、自らの関心事項について意見を述べるといった感じであり、果たして「総会」として、「中長期的な日本社会のあり方」についての方向性を打ち出せたのだろうか。

何が論点で、何を議論したというのだろうか。総会としての「決議事項/合意事項」等のまとめの文書は作成しないものなのだろうか。「総会」は何をするところなのだろうか。単なるヒアリングの場なのだろうか。