浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

キネティック・アート (シェフェール、パルク、グルッポ・T)

末永照和(監修)『20世紀の美術』(17)

前回は、第7章 抽象表現主義からミニマル・アートへ のうち、アンフォルメル(パリの実存的な抽象)をとりあげた。つづく「アメリカ抽象表現主義」については、読書ノート:大岡信『『抽象絵画への招待』で取り上げているので省略する。「ミニマル・アート」については、魅力的なものが何もないので省略する。第8章は、20世紀後半の具象絵画、第9章は、ポップ・アートの誕生 であるが、私の趣味ではないので、省略する。

第10章は、視覚と認識の変革 である。今回は、キネティック・アートをとりあげる。

キネティック・アート(Kinetic art)

1950-60年代の特徴的な出来事の一つは、物理的な動きを取り入れた視覚的な表現、いわゆる「キネティック・アート」(キネティック=動的)の隆盛で、それはしばしば表現形式としての光の使用を伴っていた。それは以前の早い時期に物理的な動きを美術作品に導入した先駆者としては、マルセル・デュシャンやナウム・ガボ、アレクサンダー・コールダーらが良く知られているが、彼らにとっては「動く物体」が中心であった。60年代のキネティック・アートでは、科学技術を応用した動きや光の現象そのものに重点が置かれ、そこで生み出される未完結な時間の流れと空間の広がりの意識化が図られる。

別の解説もみておこう。

〈動き〉を取り入れた芸術作品の総称。静的な彫刻に対し自然力、動力、人力で動くオブジェを指す。…代表的な作家として、メタ機械的オブジェに見られるダダ、シュルレアリスム的方向性を示したJ・ティンゲリーと、科学技術や運動への関心を基盤とする構成主義的方向性を示したJ・ル・パルクらがあげられる。…60年末から70年代にかけてその関心は環境へと向かい、サイバネティック彫刻を提唱したN・シェフェールは光、音響、映像の全体的環境を追求し建築、都市に射程を広げ、グルッポ・Tは環境芸術、インスタレーション作品を制作した。80年代以降は技術的限界と表現の陳腐化により廃れた感が否めないが、機械と人間のインタラクティビティへの考察は現代のハイテク・アートに継承された点で現代性をもつ。(松本晴子、現代美術用語辞典) 

 

二コラ・シェフェール(Nicolas Schöffer、1912-1992)

その代表的なアーティストの一人がハンガリー生まれでパリに移り住んだ二コラ・シェフェールで、彼は同じハンガリー生まれのラースロ・モホリ=ナギによる動きと光の研究を引き継ぐ。野外に設置された「サイバネティックな空間力学の塔」は、シェフェールの作品の中でも規模が大きく、高さ52mの垂直の骨組みからあちこちに伸びるいくつもの腕には、いろいろな形の鏡板64枚が取りつけられ、回転速度が変えられる仕掛けになっている。周囲の気象や音の変化に反応する装置を備え、夜は120の多彩なスポットライトの光に浮かび上がり、河の対岸の大スクリーンに投影された色彩と呼応する劇場的な環境芸術になっている。

Inauguration de la Tour cybernétique de Nicolas Schöffer

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ジュリオ・ル・パルク(Julio Le Parc、1928-)

アルゼンチン出身で、1950年代後半よりパリを拠点に活動してきたアーティスト Julio Le Parc は、1960年にパリで発足した GRAV (Visual Art Research Group、視覚芸術探求グループ) の創設メンバーの1人であり、1968年には世界最大かつ最も権威のある現代アートの祭典「ヴェネツィアビエンナーレ」でグランプリを受賞している。Le Parc は、動き、光、視野の分野、アートと鑑賞者の関係性を探求する作品制作で広く知られている。(http://fashionpost.jp/culture/culture-art/40360

Julio Le Parc – Retrospective

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https://d32dm0rphc51dk.cloudfront.net/Csea_INcKjXkmLNqwJbvKQ/larger.jpg

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グルッポ・T(Gruppo T)

1959年にイタリアのミラノで結成されたキネティック・アートのグループ。…最大の関心事は、時間のなかで運動を伴い変化する色、形、光を表現することであり、電気モーター、ゴム、磁石、ストロボ・ライト、ヘリウム・ガスなど、工業製品をはじめとする多様な素材を積極的に用いた。(中島水緒、現代美術用語辞典)

Gruppo T - Opere Storiche (Teaser)

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