気の向くままに

井蛙は以って海を語るべからず、夏虫は以て冰を語るべからず、曲士は以て道を語るべからず

ル・コルビュジエのモデュロール

柏木博『デザインの教科書』(2)

第1章 デザインって何? 視点(3) 趣味と美意識 の続き。

秩序としての装飾(非装飾)は、規範(カノン)や様式を生みだしてきた。それは地域や民族そして宗教によって異なり、また時代によって変化してきた。私たちが、デザインに対して抱く趣味や美意識は、恐らくこの秩序の感覚と関わっているように思える。

秩序と規範

ある特定の秩序や規範がなぜ心地よく感じられるのだろうか。…心地よく感じられる秩序や規範の法則があるように思える。…ある音の組み合わせ(和音)…色彩のカラーハーモニー…そこに一定の法則がある。

建築家のジョージ・ドーチは、ヒナギクの花心をはじめとした植物の形態や巻貝や魚や昆虫のプロポーションを図学的に割り出して、そのプロポーションが、いかに人間が生みだす芸術や建築(デザイン)の調和的プロポーションと関連しているのかを説明している。

プロポーションとは、

美術,写真,デザイン用語。比率,均整を意味し,主として人体について7頭身,8頭身などというように,部分の割合の比と全体の構成の,均整と調和の表現に用いられる。また,建築,彫刻,絵画などの全体と部分,部分同士の大きさの比率の意味にも用いる。(ブリタニカ国際大百科事典) 

 黄金分割比とフィボナッチ数列

柏木は、黄金分割比やフィボナッチ数列にふれているが、詳しい説明がないので、ここできちんと理解しておこう。

ところで、クレジットカードの縦横の寸法はどれ位だろうか。

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http://kakaku.com/card/articleview/?no=362

ISO/IEC 7810は身分証明書カードの4つの形状を定めた国際規格であり、ID-1, ID-2, ID-3, ID-000から構成される。ID-1は、大きさが 85.60 × 53.98 mmであり、銀行のキャッシュカードやクレジットカードなどに採用されている。今日では多くの国で自動車運転免許証のサイズとしても使われている。…この形状は、縦横が黄金比になっている。(wikipedia、ISO/IEC 7810)

計算すると、85.60÷53.98≒1.585であり、厳密には黄金比ではない。では、数学的に厳密な黄金比はいかほどか。黄金比がどのように定義されるのかというと、(以下の説明は、http://oto-suu.seesaa.net/article/243869708.htmlによる)

長方形から辺を共有する正方形を切り取った時に、残った長方形が元のものと相似になるような特殊な長方形(黄金長方形)の辺の比率

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黄色の長方形が、元の長方形と相似である。即ち、(a+b):a=a:b である。黄金比は縦横の比率なので、a÷bである。これをxとおき計算すれば、x=(1+√5)/2となる。これは無理数で、1.6180339887…である。

 

フィボナッチ数列は、どのように定義されるか。(以下の説明は、

https://style.nikkei.com/article/DGXNASFK2901O_Z20C13A7000000/ による)

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直前の2つの数の和が次の数になり、隣り合う数の比は限りなく黄金比に近づくという不思議な性質を持った数列。数学者フィボナッチは自著のなかで、うさぎのつがいが毎月新しいつがいを生み、生まれたつがいが次の月からつがいを生むと、1年間で何対のつがいが生まれるかという問題で、この独自の数列を世に提示した。

性質1:直前の2数を足した数になっている

性質2:隣り合う数の比が限りなく黄金比に近づく

性質1は知っていたが、性質2は知らず、フィボナッチ数列黄金比の関連を理解していなかった。

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1、1、2、3、5、……とフィボナッチ数列の各数を一辺とする正方形の頂点に沿って曲線を引くと「対数螺旋」の一種が描かれる。

数学の知識が無いと、対数螺旋の正確な理解は難しい…。

 

次のビデオは、なかなかのすぐれものである。

www.youtube.com

このビデオに出てくる「松ぼっくり」の螺旋の数は、右回り:13、左回り:8、「サボテン」は、右回り:13、左回り:21、「ひまわり」は、右回り:21、左回り:34である。これは、フィボナッチ数列:3,5,8,13,21,34,55にピタリあてはまる。

オウム貝や台風の渦巻や渦巻銀河も対数螺旋の形状に似ているとなれば、(生命を含め)宇宙の物質を動かす共通の力があるのでは、と感じさせる。人間はどれだけ渦巻の力に影響されているのだろうか。

 

モデュロール

柏木は「モデュロール」について書いているが、分かりにくい。

次の説明が分りやすい。

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http://oskarmielczarek-architect.com/human-proportions-compared-to-nature/

 モデュロール(Modulor)はフランス語で寸法を意味するモデュール(module)黄金比(section d'or)を組み合わせた造語で、ル・コルビュジエ第二次世界大戦中に考案した建築の基準寸法システム。ダヴィンチの《人体図》(1960)*1などをふまえて、ル・コルビュジエ(1887-1965)は、人間の身長(ヨーロッパ型で183センチメートル)と臍の高さが黄金比になることに注目すると、人間の身体寸法をフィボナッチ数列を使って分割し、独自の寸法体系として展開させた。建築においてモデュールは、建築の工業化、生産効率などの問題として考えられることが一般的であったが、ル・コルビュジエは、人体の寸法と合わせることで、モデュールに建築の機能的な問題を加味することに成功した。実際に《ロンシャンの礼拝堂》(1955)における有機的な形態や、《ラ・トゥーレット修道院》(1960)の複雑な窓割などが、モデュロールを用いて設計されており、建築の機能的、視覚的側面の設計において、モデュロールの有用性を明らかにしている。なかでも《ユニテ・ダビダシオン》(マルセイユ、1952)*2においては、配置計画や立面、断面計画から、住戸計画、家具などの造作に至るまで、徹底的にモデュロールが用いられ、モデュロールの合理性を世に知らしめた。(有山宙、現代美術用語辞典ver.2.0 – Artscape)

上の図に寸法が記載されているので計算してみよう。

真ん中の数字:1829/1130=1130/698=698/432=432/267=267/165≒1.618

右側の数字:2260,1397,863,534,330,204,126,78も、同様にほぼ1.618となる。

確かに、フィボナッチ数列黄金比になっている。(いささか、こじつけた感もあるが…)

モデュロールは、建築の基準寸法システムということなので、上図の赤・黒・青が基準寸法なのだろう(たぶん)。

*1:ダヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』は、1485~1490年頃の作品とされる。(wikipedia

*2:マルセイユのユニテ・ダビダシオン(仏:Unité d'Habitation)…世界遺産ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」の構成資産となっている(wikipedia