浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

正規労働と非正規労働 どのような「格差」があるのだろうか?

格差社会(5)

次のグラフは、平均年収を、(事業規模別)正規労働者・非正規労働者別にみたものである。(正規労働、非正規労働の意味は後述)

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このグラフを見れば、一目瞭然だが、

非正規労働者の年収は、事業規模とはほとんど関係ない。

・正規労働者の年収は、事業規模が大きくなるほど、高くなっている。

・平均的には、非正規労働者の年収は、正規労働者の約3分の1である。(1.7÷4.9=0.35)

 

このグラフは、次の表の一部をグラフ化したものである。

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この表は、国税庁の「(平成28年民間給与実態統計調査」(H29/9)*1の統計表「3-13 1年勤続者(役員、正規、非正規)の企業規模別給与所得者数・給与総額・平均給与」の一部(平成28年)を組替えたものである。「給与所得者数」にも注目しておきたい。…この数字を見ていると、いろいろな考えや疑問が思い浮かぶ。

 

ここで、用語の意味を明確にしておこう。本調査の「用語の解説」によると、

非正規…パートタイマー、アルバイト、派遣社員契約社員、嘱託等をいう。

正規…役員、青色事業専従者及び非正規を除く給与所得者をいう。

 これだけではよく分からない。Wikipediaを参照しよう。

内容面から定義しようとすれば、一般的に、いわゆる「正社員」「正職員」と呼ばれる従業員の雇用と比較したときに総合的に見て、

1.給与が少ない(例:単位時間当たりの給与が低い、退職金やボーナスがない

2.雇用が不安定(例:有期雇用

3.キャリア形成の仕組みが整備されていない(例:幹部までの昇進・昇級の人事系統に乗っていない、能力開発の機会に乏しく、いくら就労を重ねても知識・技能・技術が蓄積されない

といった要素が色濃い雇用形態を総称する用語である。

法的な雇用形態の分類から定義すれば、 有期契約労働者、派遣労働者(登録型派遣)、パートタイム労働者のいずれか1つ以上に該当するような労働者の雇用を指すことが一般的である。(Wikipedia非正規雇用

若干補足すれば、有期雇用とは、働く期間があらかじめ決まっている雇用である(通常、半年とか1年の契約)。無期雇用とは、期間の定めのない雇用である。また労働者派遣には、派遣先での就業期間中のみ雇用関係が発生する

登録型派遣と、派遣会社の社員として派遣先に常駐する常用型派遣がある。パートタイム労働者(短時間労働者)とは、パートタイム労働法上は、「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」である。なおフリーターとは、定職に就かず、アルバイトで生計を立てる人(フリー-アルバイター、和製の造語)であり、「正社員・正職員以外の就労形態(契約社員・契約職員・派遣社員・アルバイト・パートタイマーなどの非正規雇用)で生計を立てている人を指す。学生は含まれない。」(Wikipedia)である。

国税庁の上記表では、正規社員:3182万人、非正規社員:1155万人である。

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https://roudou-bengoshi.com/kaiko/951/

 

さて、正規労働者と非正規労働者の給与の「差異」は明白であるが、これは「格差」なのだろうか。(私は、「格差」を是正されるべき差異という意味で使う)。

上記統計では、「どれだけの時間働いたのか?」、「どのような難易度の仕事をしたのか?」、「結果を出したのか?」、「効率的に業務遂行したか?」、「その仕事に対する責任は?」、「どのような姿勢(意識、態度)で仕事に取り組んだか?」等々はいっさい分からない。しかし、給与はこれらの要素が考慮される。だとしたら、これらの要素を捨象した「差異」をもって、「格差」があるとは言えないのではないか。単純な例で言えば、4時間働いた人と8時間働いた人と同じ給料で良いのか。100万円しか売り上げない人と1000万円売り上げた人は同じ給料で良いのか。一見同じような仕事を同じ時間働いたとして、どうすれば効率的・効果的に仕事ができるかを考えながら働いている人と何も考えないで言われたことだけをしている人と同じ給料で良いのか。…「同一労働同一賃金」は関連した話題であるが、これは別途考えることとしたい。

私は、「給与」に差異があることが直ちに問題であるとは思わない。「差異」が妥当であるかどうかは、単純な話ではない。

それよりも、上記の2.雇用が不安定(期間がくれば、失業し収入が途絶える)なこと、3.いくら就労を重ねても知識・技能・技術が蓄積されない仕事をしていることが多いこと、が「格差」(是正されるべき差異)であると考えている。しかし、もっと大きな格差は、「就業者」と「失業者」の格差であろう。この関連では「ワークシェアリング」がテーマとなる。

 

次のような問いを発してみよう。

★私には、なぜ仕事がないのか?

★私は、なぜこの仕事をしているのか?

★誰が、何のために、どのように、仕事を配分しているのか? 

*1:国税庁のこの調査については、2018/03/31の記事、「民間給与実態統計調査 - あなたの給与はどのレベル?」を参照。