1988年、桑原武夫が無くなったとき、長田弘(1939-2015)は、その死を悼んで、一篇の詩を書いた*1。
桑原武夫(1904-88)
えらそうな 物言いには
(言うとるわ、言うとるわ)
もったいぶった 物言いには
(あほらし。あほらしやの鐘が鳴りまっせ)
思イ邪マ無ク 語ルベシである
意深クシテ 詞浅クアレである
高級かどうか でなく 誠実かどうか
尊ぶべきは 風流ではなく 野暮だ
雲の中を 歩んではならない
つねに はじめに 人間ありきだ
新しい思想を 説くことをしなかった
新しい態度を 鮮やかに生きた人だった
「雲の中を 歩んではならない」という言葉が、印象に残った。