浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

ブログ考

1988年、桑原武夫が無くなったとき、長田弘(1939-2015)は、その死を悼んで、一篇の詩を書いた*1

 

 桑原武夫(1904-88)

 

えらそうな 物言いには

(言うとるわ、言うとるわ)

 

もったいぶった 物言いには

(あほらし。あほらしやの鐘が鳴りまっせ)

 

思イ邪マ無ク 語ルベシである

意深クシテ 詞浅クアレである

 

高級かどうか でなく 誠実かどうか

尊ぶべきは 風流ではなく 野暮だ

 

雲の中を 歩んではならない

つねに はじめに 人間ありきだ

 

新しい思想を 説くことをしなかった

新しい態度を 鮮やかに生きた人だった

 

雲の中を 歩んではならない」という言葉が、印象に残った。

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http://wonderland.fermata.link/archives/1993/

*1:長田弘『なつかしい時間』(岩波新書、2013年)p.47より