浮動点から世界を見つめる (旧:気の向くままに)

井蛙は以って海を語るべからず、夏虫は以て冰を語るべからず、曲士は以て道を語るべからず

色彩の心理効果(感情効果) 街路樹

デザイン(2)

デザインの要素には、形状(2次元、3次元)、質感、空間(スペース)など種々あるようだが、色(カラー)もその一つである。色により大きく印象が異なる。絵画等のいわゆる芸術作品のみならず、日用品・備品や自動車・電車・航空機や建造物(内装、外装)や標識・看板や食品や街並みやWEBサイトやファッションや…を思い浮かべれば、「色」が、生活全般に大きなウェイトを占めていることは明らかだろう。それらが、全体としてまとまりのあるもの(ゲシュタルト*1)であれば、心地よいと言えるのではなかろうか。例えば、道路沿いに乱雑に建てられている商店や事務所や工場等に対する、まとまりのあるショッピングモールである。

 

色の感情効果

色から特定の気持ちを喚起させられる場合がある。この効果を「色の感情効果」といい、その内容には人類共通の普遍的なものや、特定の時代や社会のなかで生まれたものや、個人的体験によるものがある。過去の調査データを見ると、一つの色から導かれた複数の言葉は一義的ではない。ポジティブな感情とネガティブな感情が共存している。色の感情効果は、それが導かれたときの背景と切り離して解釈することはできない。色彩感情を測定するにはさまざまな手法があるが、20世紀後半にはSD法(意味差判別法、semantic differential method)によって、色彩感情の基本構造を明らかにする調査が多く行われている。概ね以下の3次元の評価軸によって構成されるとした結果が多い。「快-不快」などの尺度が含まれる評価性(evaluation)、「暖かい-冷たい」などの活動性(activity)、「かたい-柔らかい」などの潜在性(potency)である。(赤木重文、p.28)

これだけでは、よくわからない。

仁科恭徳は、次のように述べている。(若者世代の色彩感覚に関する実態調査

欧州では,特に古代文明時代からルネサンス時代以前まで,自然物で鮮やかな色をもつ物は,権力の象徴や神秘的存在としても用いられ,宗教上の重要な意味をもつ媒体としても扱われた。確かに,色には何かしらの力があり,赤を見れば力がみなぎり,青を見れば落ち着いた気分になるなど,古代人から現代人まで通時的に共通・普遍的な色彩感覚が人々には宿っている。心を左右するこの色の力の神秘は,寒暖,軽重,派手,地味など多種多様な効果(色の感情効果とも言う)があることが分かっている。

色の好みの形成にはいくつかのモデルが存在するが,代表的な考えの一つに齋藤美穂の3層構造モデルがある。3層の中心に位置する第1層は,人間に共通する普遍的嗜好が占める。例えば,青は時代を超えて世界中で好まれる色であり,土地や風習,民族,性差などの影響を受けない。…第1層の外側に位置する第2層は,個人に関する色彩的嗜好で,個人の性や年齢,パーソナリティ,過去の経験などが人の色の好みに影響すると考えられている。…最後に,最も外側の第3層は,集団に共通する色彩的嗜好であり,個人が生きる時代や環境などの文化的・社会的要因が挙げられる。…外側から内側にかけて安定の度合いが高まり,これら3層全てが複雑に絡み合って個人の色の好みが形成される。式で表せば,[色の好み=第1層(共通成分)+第2層(個人差成分)+第3層(集団差成分)+誤差]となる。

では、人類共通の普遍的な色彩感覚(色の感情効果)とは、どのようなものであろうか。

タカハマ ケンタは、「色相のイメージと心理効果」を次のように述べている。(https://webnaut.jp/design/640.html

潔白、清潔、明るい、正義、無

男性的、高級、威厳、死、恐怖

情熱、危険、愛、革命、活気

鎮静、爽快、清涼、空、海、水

元気、活発、明るい、陽気、快活

自然、平和、安全、環境、生命力

オレンジ

親しみ、喜び、にぎやか、活力、好奇心

高貴、優雅、神秘、知的、不思議

これらのイメージには、確かに「人類共通の普遍的なもの」があると思われる。それは生物としての人間(ヒト)の地球における生存に関わるものであり遺伝子に組み込まれていると考えられる。陽光と空の青さ、森の緑、火山の噴火と赤熱の溶岩、雪と氷、夜の闇。…人工物の増大と共に、ときには相矛盾する社会的・個人的な色の感情効果の増大が生じたと思われる。

色彩の心理効果(感情効果)を「文化」と関連付けて分析するだけでは全然おもしろくない。そのような分析は、既に直観的に分かっていることを、整理して述べるにとどまるもののように思える。そうではなく、例えば「生活を豊かにするファッション(その1要素として配色がある)を考える」とか、「まとまりのある(その1要素として配色がある)街並みを考える*2」とか「魅力的なWEBデザインを考える」というような、目的を持ったデザインの1要素として、色の心理効果(配色)を考えるなら大いに興味を持てるだろう。

タカハマは、上述の「色相のイメージと心理効果」の他、「トーンと印象」、「色の三属性と心理的効果を与える色」についても述べている。もちろん、これらは基礎知識であって、これらをマスターしたからといってデザイナーになれるわけではない。

しかし、素人はデザイナーの作品の(主観的)評価はできる。好き嫌いは述べることができる。素人なりの意見を言うこともできよう。例えば、以下の画像は、日本とシンガポールを比較したものだが、「色彩の心理効果」はどうだろうか。シンガポールのほうがセンスが良いと感じないだろうか。

公的空間(景観)をどのように形成するかである。自由放任では、良い景観は形成されないだろう。

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http://www.presen-cobo.com/Street_view/hikaku/

 

次の写真はバンクーバーでの一風景。

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 https://4travel.jp/travelogue/10488961

*1:2018/10/13 形の知覚 エッシャーの「昼と夜」 ゲシュタルトの法則 「ブルータリズム」のウェブデザイン 参照。

*2:道路脇に木が植えられる20の理由 を参照。「色彩の心理効果」の話は、第1の理由「景観の形成」に含まれるだろう。