浮動点から世界を見つめる (旧:気の向くままに)

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

夜霧のハウスマヌカン ブラックマネキン

デザイン(4)

かつて、『夜霧のハウスマヌカン』という歌がヒットした。


やや 「夜霧のハウスマヌカン」

 

ハウスマヌカン」というのは今では死語になっているかもしれないが、英 house+仏 mannequin の造語である。ブティックやアパレルショップで、その店の商品である衣服を着て、販売にあたる店員をいう*1

唄(歌手:やや)もいいが、バックのブラックマネキンに注目したい。最初、Freez Mob(フリーズモブ/静止モブ)かとも思ったが、これは時代的にありえないだろう。

 

今回の記事は「黒色」がテーマである。

 古典ラテン語には、基本的な黒が2種類ありました。Ater(アーテル)niger(ニゲル)です。より一般的に使われたアーテルは、中立の、つや消しの黒のことで、紀元2年頃には否定的な意味合いを持つ言葉になりました(「極悪非道」を意味するatrociousの語源です)。一方、「ニゲル」は、ものものしく、またはいきいきと輝く光沢の黒のことです。ラテン語の白色も同様にalbus(アルバス/つや消し)とcandidus(カンディダス/光沢)に分かれていました。前者の方が広く使われていますが(albinoアルビノ/白子)もそうです)、「カンディダス」は、ローマの政治家が着用したトーガ(古代ローマの職服)、candidati(カンディダーティ)として、今でもある種の威厳を放っています。(ジュード・スチュアート、『色と意味の本』、p.165)

 色を考える(見る、検討する)場合、光沢(つや[艶])は、大きな要素であろう。衣服、家具調度品、家電、壁紙、コンピュータ用品、自動車……。光沢のあるなしで大きくイメージが異なる。

現代は、どちらかというと「光沢なし」(つや消し)のほうが好まれる傾向にあるような気がする(時と場合によるが)。例えば、下のようなマットブラック(マット:つや消し)のクルマの方が、テカテカ光るクルマより好まれるようだ。

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http://car-me.jp/articles/1994

 

マネキンの話に戻ると、

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http://www.fobmannequins.com/product/woman-mannequin

これは、たぶんグロスブラックグロス:つや有り)だろう。

 

ハウスマヌカンであるが、現在は「ファッションコーディネーター」と呼ぶそうである。

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https://recoveringshopaholic.com/2013/11/19/salespeople-are-not-your-friends/

 

『夜霧のハウスマヌカン』(作詞:いとうせいこう)の一節に、次のような詞がある。

ファッション雑誌切り抜いて

心だけでもNew York

表参道 人の波

乗って見せるワ 玉の輿

夜霧のハウスマヌカン

お金もないのに 見栄を張る

夜霧のハウスマヌカン

又 昼はシャケべんとう

この曲が発売された1986年は、バブル景気が始まった年とされる(1991年まで)。バブル崩壊を先取りしたような歌詞にも読める。そして、動画のブラックマネキンは、「お金もないのに見栄を張る夜霧のハウスマヌカン」の象徴のようにも見える。 

*1:

「マネキン」は、フランス語で「モデル」を指すmannequin(マヌカン)の英語読みに由来する。モデル兼販売員としての「マネキン」は、…1928年(昭和3年)3月に東京府東京市・上野で開催された大礼記念国産振興東京博覧会において、高島屋呉服店が「マネキン・ガール」を登場させたのがはじまりである。

ヨーロッパの会員制婦人服のブティックにおいては産油国などの富裕層むけに、社員として、自社ブランドのモデルを雇用している。彼女らは「ハウスマヌカン」(これは英語由来のハウスと、フランス語由来のマヌカンを組み合わせた造語)と呼ばれており、英仏では定着した呼称である。…一回の購入単価は当然非常に高額である。日本にはこれがやや歪曲してつたわって、低価格の婦人服のブティックの店員をすべて「ハウスマヌカン」とよんでいた時期があったが、当然、英仏では通じない。(Wikipedia