長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(26)
今回は、第14章 思考 のうち、「確率の推定」から「ギャンブラーの誤り」をとりあげる。
「ギャンブラーの誤り」とは、
ある出来事の起きる確率があらかじめ決まっているにもかかわらず、その前後に起きた出来事による影響を受けて、あたかも確率が変化するかのように誤って思い込んでしまうこと。(https://www.genpaku.org/skepticj/gamblers.html)
例としてあげられるのが「コイン投げ」である。<裏、表、表、表、表、表>と出たとき、次は何が出ると予想するか。①確率2分の1なのだから、そろそろ「裏」が出る。②「運」(つき、流れ、解明されていない何か)というものがある。「表」が続いているということは、次も「表」が出る可能性が高い。
ギャンブラーはどちらを採用するだろうか。どちらもあり得ると思う。ここでどちらが正解かというのではなく、どちらも誤っているというのが、「ギャンブラーの誤り」である。なぜなら、次に「表」が出るか、「裏」が出るかは、以前に何が出たかとは関係ないこと(独立事象)だからである。この観点からは、③次は何が出るかは予想できない、となる。しかし、ギャンブラーは「論理ゲーム」をしているわけではないから、「表」に賭けても、「裏」に賭けても、ひとときの「満足」を得られるだろう。これをもって、「ギャンブラーの誤り」と称するのは、適切な表現とは思えない。
「大小」(だいしょう)というゲーム(賭博)がある。Sic bo (シックボー、骰寶、貴重なサイコロの意味らしい)やtai sai (大細)ともいう。*1
https://goods.ruten.com.tw/item/show?21603731886296
3個のサイコロを用いてその出目の合計数などを予想する。合計出目が4以上10以下を「小」といい、11以上17以下を「大」という。最も単純なものが、この大小を当てるものである。これは、コイン投げの「表」「裏」を当てるものと同じで、確率2分の1である。マカオのカジノでは最も人気のある賭博の一つだそうである。
カジノと言えば、「ゲーム脳(障害)」や「IR=統合型リゾート」の話が興味深いが、これは別途としよう。
統計学に、「大数の法則」という定理がある。(以下は「頭の体操」みたいなもの)
大数の法則とは、確率論の基本法則の一つ。ある試行を何回も行えば、確率は一定値に近づくという法則。例えば、さいころを何回も振れば1の目の出る確率は6分の1に近づくなど。(デジタル大辞泉)
大数の法則がこのようなものであれば、先ほどのコイン投げでは、確率は2分の1に近づく。であれば、<裏、表、表、表、表、表>の次は、「裏」の可能性が高いのではないか。これを、「独立事象」だからという理由で、一蹴できるのかというのが、ここでの疑問である。(なお、ここではイカサマとかコインの形状とかを問題にしているのではなく、あくまで「論理」の話である)。
ギャンブラーの誤りの説明には大数の法則に対する言及がない(ように思う)。私が直観的に思うのは、上図において0.5以下の時点では、(いずれ0.5に近づいていくのだから)、今後「表」がより多く出ると推定し、0.5以上の時点では、(いずれ0.5に近づいていくのだから)、今後「裏」がより多く出ると推定するのが合理的だろう、というものである。*3