久米郁男他『政治学』(23)
今回は、第8章 国際関係における安全保障 第1節 安全保障のジレンマとその回避 の続きである。
本書の「国際連合」に関する記述は、「①武力による威嚇、武力行使の禁止、②安全保障理事会の権限強化、常任理事国(米英仏露中)一致の原則、③安全保障理事会による軍事的措置の決定について」で15行・半頁、「冷戦前後の安保理の機能について」で15行・半頁、合計1頁である。「安全保障」の話題に限定しているとはいえ、あまりに少ない分量(国連に対する評価の反映?)のように思われる。
国際連合については、別途、他の適当な本または国連広報センター(https://www.unic.or.jp/info/)等の情報をもとに詳しくみることにしたいが、Wikipediaから最初の一部のみ引用しておこう。
第二次世界大戦を防げなかった国際連盟の反省を踏まえ、1945年10月24日、51ヵ国の加盟国で設立された。主たる活動目的は、国際平和と安全の維持(安全保障)、経済・社会・文化などに関する国際協力の実現である。
- 国際平和・安全の維持
- 諸国間の友好関係の発展
- 経済的・社会的・文化的・人道的な国際問題の解決のため、および人権・基本的自由の助長のための国際協力
これらの目的を達成するため、総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所、事務局という6つの主要機関と、多くの付属機関・補助機関が置かれている。加えて、数多くの専門機関・関連機関が国連と連携して活動しており、全体として巨大かつ複雑な国連システム(国連ファミリー)を形成している。(Wikipedia)
国連の目的をよく読んでみること。国連加盟各国は、この目的に沿った行動をとっているのだろうか。自国ファースト・富国強兵の時代錯誤が幅を利かせているのではないか。
ここで、「安全保障」とは直接の関係はないが、たまたまSDGs*2に関する動画を目にしたので、国連に関連して紹介しておこう。
HELLO KITTY’S SDGS SONG GOAL 10/ハローキティ【Sanrio Official】
『空飛ぶレジ袋』(90秒)/吉本興業チャンネル
冷戦
本書は、冷戦と安保理の関係について次のように述べている。
冷戦の開始は、国際連合の集団安全保障体制を当初の目論見から大きく外れるものへと変化させた。米ソの対立は、常任理事国が拒否権を持つことから安全保障理事会の機能停止を意味するものであった。拒否権が国際連合で設けられた理由は、国際関係における重要問題の解決には大国の一致が不可欠であるということであったが、拒否権の発動によって安全保障理事会は機能不全に陥ったため、五大国一致の原則がかえって仇となったのである。
本書に冷戦(Cold War)とは何かについての説明はない。
冷戦とは、第二次世界大戦後の世界を二分した西側諸国のアメリカを盟主とする資本主義・自由主義陣営と、東側諸国のソ連を盟主とする共産主義・社会主義陣営との対立構造。
冷戦の始まりは、そのイデオロギー的側面に注目するならばロシア革命にまでさかのぼることができるが、超大国の対立という構図はヤルタ体制に求められる。…戦争によって大きな損害を蒙っていた欧州諸国において、共産主義勢力の伸張が危惧されるようになった。(Wikipedia)
第2次大戦後の米ソ両国間および両国を中心とする二大勢力の対立状態。この用語は1947年―1948年ころから使われ始めた。実際の戦争手段にはよらないが,背後に核兵器をかかえた〈恐怖の均衡〉状態で,単なる国家的対立ではなく,資本主義と共産主義というイデオロギーの対立でもある。1991年のソ連邦解体により冷戦は終結したといわれる。もっとも,民族・人種対立の表面化,南北ギャップの増大,資本主義的格差の世界化など,〈ポスト冷戦〉状況がどのような展開を示すか不明確なことも事実である。(百科事典マイペディア)
冷戦とは何かについて正確に理解しようとすれば、資本主義・自由主義、共産主義・社会主義とはいかなるイデオロギーなのかの理解が必要である。不平等と貧困の問題が、このイデオロギー対立の根本にあると思うが、これは一筋縄ではいかず、別途とせざるを得ない。
軍事大国である常任理事国が拒否権を持たなければ、国連を脱退して(または無視して)独自の行動をとるだろう。拒否権を発動すれば、国連としての統一行動をとれない。細かい議論は別途としよう。
冷戦後は、中距離核戦力全廃条約、戦略核兵器削減条約、核不拡散条約、包括的核実験禁止条約、化学兵器禁止条約など、軍備管理・軍縮のための様々な条約が締結されているが、それらの詳細を知らなければ評価はできない。
新冷戦
世界各国の軍事的な勢力図。
青色は北大西洋条約機構加盟国
水色は上海協力機構及び集団安全保障条約機構加盟国
赤色は南米防衛委員会加盟国
またこの地図には表されていないが、日本や韓国、フィリピンも、アメリカと二国間軍事条約を結んでいる。(Wikipedia、新冷戦)
*1:
- 国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。
- 人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。
- 経済的、社会的、文化的又は人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。
これらの共通の目的の達成に当って諸国の行動を調和するための中心となること。
*2:
SDGs…私は、以下の記事でSDGsについてふれている。いずれ本格的にとりあげたいと思っているのだが、いまはその準備段階といったところである。
2018/11/17 セックスワーカーから繊維工場労働者へ ファストファッションの光と影 エシカル・ファッション
2017/11/03 オキュパイ・ラブ 人類の危機をラブ・ストーリーに変える
2017/03/12 不平等論(9) ヴィーナスはいかが? 金星の土地売ります!
2017/02/21 不平等論(8) SDGsに合致しているかどうかを問うことが、政治や経済、生活のありようを変えていく糸口になります(国谷)
2016/12/27 不平等論(5) 「誰もが支え合う共生社会」のビジョン
2015/11/26 生きる希望 ユニクロ:難民雇用100人に拡大へ 国連と協力
2015/11/20 パリ同時多発テロ 何をすべきか? 君たちに憎しみという贈り物はあげない
2015/11/18 グローバルなコミュニティーの責任ある一員となる(6) 「テロとの戦い」は間違いである
2015/10/22 グローバルなコミュニティーの責任ある一員となる(5) SDGs 合意形成のプロセス
2015/10/11 グローバルなコミュニティーの責任ある一員となる(4) 誰も置き去りにしない - 持続可能な開発目標(SDGs)