浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

潜在意識を刺激されたメッセージにより、行動が支配される。

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(31) 

今回は、第16章 脳損傷と心の働き である。失認症、失語症、先行症、記憶障害(健忘)、注意障害、などの話題があるが、「見えないのに見えている――自覚なしの知覚」について見てみよう。

  • 対象を自覚的に見ることができない場合にも、対象からの情報が、行動に影響を与えたり、適応行動に利用されることが知られている。[閾下知覚サブリミナル効果
  • 視覚野の損傷によって外界の対象を見ることができなくなることがあるが、この状態は皮質盲と呼ばれる。自覚的には対象を見ることができない皮質盲の患者が、意識されないレベルでは対象を見ているらしい。
  • 自覚される心的過程が顕在的過程と呼ばれるのに対して、自覚されない心的過程は潜在的過程と呼ばれる。潜在的過程の存在は、自覚的には自分で自分の行動を決定していると思っている場合にも、自覚できない様々な過程が私たちの行動を制御している可能性があるという、人間の心的過程が持つ基本的な特徴を示唆している点で、重要であると考えられる。

今回とりあげるのは、閾下(いきか)知覚であるが、まずは次の動画*1を見て下さい。前半が閾下知覚=サブリミナルの話です。(後半は「記憶」の話)

www.youtube.com

サブリミナル (世にも奇妙な物語) - Wikipedia

に、ストーリーの紹介がある。

閾下(いきか)とは閾値(いきち)の下の意味である。閾値とは意識と潜在意識の境目となる値である。

閾下知覚(サブリミナル効果)とは、

意識と潜在意識の境界領域より下に刺激を与えることで表れるとされている効果のことを言い、視覚、聴覚、触覚の3つのサブリミナルがあるとされる。…境界領域下の刺激はサブリミナル刺激(Subliminal stimuli)もしくはサブリミナル・メッセージ(subliminal messages)と呼ばれている。(Wikipediaサブリミナル効果

f:id:shoyo3:20190923135402j:plain

https://www.globalresearch.ca/the-new-mind-control-subliminal-stimulation-controlling-people-without-their-knowledge/5511628

 

本書では詳しい説明はないので、藤田依久子の話を聞こう。(以下、閾下知覚 (サブリミナル・パーセプション) -メディアが歴史を動かす時- より)

閾下知覚の話に必ず出てくる有名な実験があり、上記動画にも紹介されていた。

この実験は、人間が知覚できる範囲以下の刺激(閾下刺激)が、潜在意識を通して人間の行動を左右する事が示された事になり、当時の心理学の世界ではセンセーショナルな話題になった。つまり、自分の知らない所で情報操作をされることで、無意識に自分の行動がコントロールされる可能性が示されたことで、それはとても恐ろしい事であるという文脈で大きく取り上げられたのだ。…その後の実験では、閾下知覚には、思想や行動を変化させるほどの強力な効果はないということが示されている。

「その後の実験」がどういう実験だったのか知らないが、その後「思想や行動を変化させるほどの効果」を持つ実験がなされた(なされている)としても不思議はないだろう。

サブリミナルが、当時、注目された理由は、サブリミナルなメッセージは、「心理的抵抗」にあわない事にあった。意識可能な体験は、与えられたメッセージが妥当なものであるかが吟味され、本人が納得した上で受容される。しかし、サブリミナルは、それがない事が問題となったのだ。しかし、意識可能な体験であったとしても、サブリミナルなメッセージがその中に隠されている場合がある。意識的に隠される場合もあるし、無意識な場合もあるだろう。

意識可能な体験であったとしても、サブリミナルなメッセージがその中に隠されている場合がある! 確かに。テレビ放送での規制*2があったとしても、これは避けられない。

藤田は、興味深い例をあげている。

1989年のベルリンの壁崩壊にはじまる東西冷戦の終結に、メディアの果たした影響は大きいといわれている。ベルリンの壁崩壊前にも西側の情報の一部は東側諸国に流れていた。西側諸国から流れてくるニュースの中心となるトピックではなく、周辺に映し出されている情報の中に歴史を動かした重大な情報が隠されていたのである。例えば、サッカーの国際試合がニュースのメインテーマであるとする。東側の人々は、サッカーの試合を見るためにその番組を見るのであるが、映し出された映像の中には観客席で応援する観客の姿も映し出されるだろう。そうすると、西側の観客の服装や表情、持ち物といったものも同時に映るに違いない東側の人にとっては、そうしたものを見るために、その放送を見ているわけではない。しかし、一種のサブリミナルな情報として、それらは知覚されるのだ。つまり、西側諸国から流れてくる情報の中に、東側の人々は、サブリミナルな情報として西側の自由や豊さを感じ取ったのだ。そして、それが歴史を動かした一因になったのである

藤田のこの解釈に客観的な証拠(統計データ)はないかもしれないが、「さもありなん」と思える。*3

 

先ほどの「サブリミナル (世にも奇妙な物語)」であるが、私は荒唐無稽な話ではないと考えている。あからさまではないサブリミナル・メッセージは、広告宣伝のテクニックでもあるだろう。それに乗せられた善良なる庶民は、独裁者を生み出す!

 

この「パラダイスガム」のCMに仕掛けがあると確信した2人がCMの映像を解析すると、その内の1コマに「バイバイ65 65歳以上の者は自ら死を選べ」というメッセージが印字されているのを発見する。それと同時に政府が「65歳以上の老人の年金を倍増する」制度「ハッピー65」を提案していたのを2人は思い出す。

一連の老人の自殺は支持率獲得を狙って「ハッピー65」制度を提案し、支持率を上げてから65歳以上の老人を自殺させて人口を減らすという、政府の陰謀によるものだった。

今の時代なら、ハッピー75で、75歳以上の者がターゲットにされるだろう。もちろん、パラダイスガムのCMのような稚拙ものではなく、もっと科学技術的に洗練されたテクニックが駆使されるだろう。…というのはSFか現実か?

*1:1992年12月30日にフジテレビの『世にも奇妙な物語』で放送された。

*2:Wikipediaサブリミナル効果 を参照。

*3:私は、ごくまれに見るテレビでの外国人(とりわけ西欧諸国以外)の服装に注目している。