浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

母屋(一般会計)と離れ座敷(特別会計)

神野直彦『財政学』(12)

今回は、第8章 予算制度の構造と機能 の続き である。

私たちの税金(や保険料)がどのように使われているのかを把握するためには、予算制度をしっかりと理解しておくことが必要だろう。さもないと……。

今回は、本書ではなく、財務省の「特別会計ガイドブック(平成30年版)」(以下、「ガイドブック」と言う)により、特別会計とはどういうものか見ていきたいが、その前に一般会計の歳出項目をざっとみておく。(平成30年度予算、金額単位:兆円) 

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国債:償還と利払を行うための経費からなり、国債残高の増大に伴い増大する経費

地方交付税交付金:すべての地方が最低限の行政サービスを提供できるよう、地方団体間の地方税収の偏在を国が調整して配分するための経費

主要経費は、社会保障関係費、公共事業関係費、文教及び科学振興費、防衛関係費であるが、社会保障関係費が断トツである。これら費目の詳細は、後日みていくことにしよう。

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財務省社会保障について、H30/4/1)

 

特別会計とはどういうものか?

特別会計の必要性について、ガイドブックは「国の行政の活動が広範になり複雑化してくると、場合によっては、単一の会計では国の各個の事業の状況や資金の運営実績等が不明確となり、その事業や資金の運営に係る適切な経理が難しくなりかねません。このような場合には、一般会計とは別に会計を設け(特別会計)、特定の歳入と特定の歳出を一般会計と区分して経理することにより特定の事業や資金運用の状況を明確化することが望ましいと考えられます」としており、財政法第13 条第2 項においては、以下の3つの場合に限定して、特別会計を認めている。

  1. 特定の事業を行う場合、
  2. 特定の資金を保有してその運用を行う場合、
  3. その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合

特別会計は、現在13ある。

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一般会計との違い

特別会計は、一般会計とどう違うのかについて、ガイドラインは次のように述べている。

  • 予算編成・国会審議等における扱い:特別会計も一般会計と同様、予算の編成に当たっては、各省庁の概算要求を受けて財務省が査定を行うとともに、一般会計とあわせて国会に提出し、審議、議決を経て予算として成立することになります。また、予算の執行、決算提出、会計検査院の検査などについても、基本的に一般会計と同様の手続きを経ることとされています。つまり、特別会計は、予算編成上の扱いや国会審議における扱いにおいて、一般会計との間に基本的に違いはありません
  • 一般会計とは異なる財務会計処理:ただし、特別会計の事務・事業の性格に応じて、一般の歳入歳出とは異なる財務会計処理が必要な場合があり、財政法上も、法律で異なる定めを設ける場合は、特別の財務会計処理を行うことができることとされています。一般会計と異なる特別会計の主な財務会計処理として、以下(省略)が挙げられます。

 

特別会計の歳出規模

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総額純計額の違いを理解しておかなければならない。各特別会計の歳出予算額を単純合計したものが「歳出総額」であるが、この中には会計間相互の重複計上額が含まれている。ガイドブックは、国債整理基金特別会計を例に説明している。即ち、「国債整理基金特別会計は、国全体の債務の整理状況を明確化する観点から、債務を一括管理するため、一般会計の国債の他、他の特別会計の借入金等の償還も行っており、各特別会計から償還財源を国債整理基金特別会計に繰り入れた上で、国債整理基金特別会計から償還を行っています。つまり、繰入元の特別会計の歳出(国債整理基金特別会計への繰入)だけでなく、国債整理基金特別会計の歳出(国債整理支出)としても計上され、単純に合計すると、倍の歳出があるように見えるのです」。

つまり、歳出純計額とは、特別会計歳出総額から会計間相互の重複計上額や借換償還額を除いたものである。

上図で言えば、歳出総額:388.5兆円、歳出純計額:195.7兆円であり、純計額は総額の約半分である。同様なことが歳入についても言え、歳入総額:391.1兆円に対し、歳入純計額:143.9兆円である。

 

特別会計の改革

ちょっと古い話だが、2003年2月の衆議院財務金融委員会での、当時の塩川財務大臣の「母屋ではおかゆ食って、辛抱しようとけちけち節約しておるのに、離れ座敷で子供がすき焼き食っておる」という発言は有名である。母屋とは一般会計であり、離れ座敷とは特別会計である。すき焼きを食っているのは誰?

ガイドブックは述べている。

  1. 特別会計が多数設置されることは、予算全体の仕組みを複雑で分かりにくくし、財政の一覧性が阻害されるのではないか
  2. その数が多数に上り、国民による監視が不十分となって無駄な支出が行われやすいのではないか
  3. 固有の財源により、不急不要の事業が行われているのではないか
  4. 多数の剰余金が存在し、財政資金の効率的な活用が図られていないのではないか

といった問題点が指摘されてきたことも踏まえ、平成15年から平成17年にかけて、財政制度等審議会において議論が行われ、制度の根本に立ち返った特別会計の見直しが検討された。以降、今日に至るまでの改革の歴史は興味深いものがあるが省略する。平成18年度時点で31あった特別会計の数は、平成30年度までに13となった。(詳しく知りたい人は、ガイドブック参照)

なお第1点目に関して、ガイドブックは、「国の会計は、毎会計年度における国の施策を網羅して通観できるよう単一の会計(一般会計)で一体として経理することが、財政の健全性を確保する見地からは望ましいものとされている」とし、これを予算単一の原則(単一会計主義)と言っているが、本書の神野は、これを「統一性の原則」と言っている。どちらでも良いが、「予算単一の原則」といったほうがわかりやすいように思う。

 

国の財政規模の見方

ここで、一般会計と特別会計を合わせた国全体の財政規模はどれ位かを見ておこう。先ほど、総額と純計額の話があったが、総額を見るだけでなく、純計額を見る必要がある。

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平成30年度当初予算では、一般会計と全特別会計を単純合計した総額ベース(歳出)では、486.2兆円(一般会計:97.7兆円、特別会計:388.5兆円)であるが、純計ベースでみると238.9兆円(一般会計:43.2兆円、特別会計:195.7兆円)となる。(「一般会計の純計額43.2 兆円と比べ、特別会計の純計額は195.7 兆円と規模が大きくなっているが、これは国債整理基金特別会計、年金特別会計等、一般会計からの繰入れとその他の収入とを合わせて財源とし、歳出を行っている特別会計が多いためである」という)

 

一般会計と特別会計を合計した歳出予算の主要な経費別純計はどうなっているだろうか。

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ガイドブックの図4-2で一般会計合計、特別会計合計の純計(43.2,195.7)が示されているが、経費別は分からない。

ガイドブックの図4-3で[一般会計+特別会計]の経費別の純計は示されているが、一般会計と特別会計の内訳は分からない。

たぶんどこかに数表があるのだろうが、見つけられなかった。