浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

傍観者効果(見て見ぬふり)

山岸俊男監修『社会心理学』(1)

本書の構成は、次のとおりである。

第1章 社会心理学とは?

第2章 社会心理学の歴史的な実験

第3章 社会の中の個人

第4章 対人認知と行動

第5章 集団の中の人間

第6章 文化と人間の心理

第7章 社会現象・社会問題の心理

第1章はパスして、第2章 社会心理学の歴史的な実験 から見ていくことにする。

 

傍観者効果

「傍観者効果」というと難しく聞こえるが、要は「見て見ぬふり」をするということである。

キティ・ジェノビーズ事件(1964年にニューヨークで起こった婦女殺人事件)が有名である。暴漢に襲われた際、彼女の叫び声で付近の住民38人が事件に気づき目撃していたにもかかわらず、誰一人警察に通報せず助けにも入らなかったというものである。日本では近年、滋賀電車内駅構内連続強姦事件(2006年8月と12月)が起きている。殺人や強姦の目撃者は何もせず傍観しているだけで助けようとしない。何故か?

ラタネとダーリーは、緊急事態において、多くの人々がいたことが援助行動を抑制見て見ぬふりをして、助けようとしない]をしたのではないかと考え、「模擬発作実験」をした。(実験内容と結果は省略)

ラタネとダーリーは、人が緊急事態に直面した際に援助行動をとるまでの過程を次のように考えた。

  1. 何か深刻なことが起こっていると認識 (他者がいることで事態/出来事そのものに気づかない、又は気づくのに遅れる)
  2. それが援助が必要な緊急事態であると判断 (他者が何もしないとそれが判断モデルになり、援助が必要な緊急事態ではないと判断してしまう)
  3. 自分に助ける責任があると認識 (他者がいると「誰かがするだろう」と責任が分散され、個人が責任を感じにくくなる)
  4. 助ける手段を自分は知っていると認識 (どう対処すれば良いかわからないと行動に移りづらく、他者がいることでなおさら抑制される)
  5. 援助する決断 (他者の存在が観衆としての役割を果たし、失敗して恥をかきたくないと行動が抑制される)

これらの各段階で他者の存在があると、援助行動を抑制する、つまり傍観者効果が生じる可能性がある

 

殺人・暴行について、このプロセスを考えてみよう。

殺人・暴行の事態に遭遇しても、他者が何もせず傍観していれば、その事態は「助けが必要な緊急事態ではないかもしれない」と思ってしまう。状況を把握する能力が無ければ(例えば、デモ鎮圧、正当防衛)、他者の判断(傍観)を優先してしまう。また目前の出来事でなければ(例えば、遠い国における殺人[戦争])、深刻な事態が起こっていても、周囲の人が何も言わなければ、「助けが必要な緊急事態」であるとは考えない。(1,2)

殺人・暴行の事態に遭遇して、一般人は、「(誰かが)警察に通報しなければならない」とは思うだろう。しかし、「自分に助ける責任がある」とか、「自分が警察に通報する義務がある」とは思わないので、他者がいると、誰かが通報してくれると考えてしまう。(3)

通報により危害が自分に及ぶ可能性が想定されるならば、実質的に「助ける手段」を持ち合わせていないということになるだろう。他者も同様であれば、誰もが「見て見ぬふり」をせざるを得ない。(4)

仮に「助ける決断」をしたとしても、認識誤りはありうるので、「軽率だ」だと言われかねない。(5)

 

以上見てきたところからすれば、殺人・暴行の事態に遭遇して、「見て見ぬふり」をしているのではないかと観察されたとしても、それを「傍観者効果」と呼ぶだけでは、何ら問題の解決にはならない、と言えるだろう。

まずは、「見て見ぬふり」をせざるをえないのは何故か? と問わなければならない。

 

殺人・暴行に限らず、いじめ・ハラスメント・隠蔽・忖度についても、同様なことが言えるのではないかと思う。

 

被害者(遺族)の心情は、いかなるものか?

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https://www.el-aura.com/yamazaki20180901/