香取照幸『教養としての社会保障』(10)
今回は、第4章 変調する社会・経済-人口減少、少子化、高齢化 第2節人口オーナスとライフスタイルの変化 の続きである。
人口構成の変化が経済にとってプラスに作用する状態を「人口ボーナス」、マイナスに作用する状態を「人口オーナス(重荷、負担)」と呼ぶそうである。
15~64歳の生産年齢人口が減少し、それ以外の従属人口(0~14歳の幼年人口と65歳以上の老年人口の合計)が増加する状態。全人口に占める生産人口の比率が低下するため、経済成長率や貯蓄率の低下、社会保障費などの国の財政支出増大などの問題を引き起こす。日本は1990年代なかば以降、人口オーナス期に入り、社会保障費の負担増により年金支給開始年齢を後ろ倒しにするなどの措置をとらざるを得なくなった。(日本大百科全書)
少子高齢化は、経済成長率の低下や社会保障費の増大などの問題を引き起こすから「重荷、負担」だと言うのであろう。しかし、経済成長率の低下や社会保障費の増大があったとしても、格差が縮小し、「1人当たりの幸福」が増大すれば問題が無いのではないか。(この点については、次回以降に検討)
香取は、「労働力人口と高齢者人口の長期トレンド」のグラフを示している*1。
本ブログでは、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成29年推計)の「年齢区分別人口」のデータより、①0~19歳(扶養される年代)、②20~64歳(扶養する年代)、③65歳以上(扶養される年代)に区分してグラフにしてみよう。ここでは、「20~64歳」が「生産年齢人口」として適切であると考えた(実際の労働力人口はこれよりやや少ないかと思われるが、概数としてはこれでも良いだろう)。
- 2020年のデータは、①0~19歳:2072万人(16%)、②20~64歳:6841万人(55%)、③65歳以上:3619万人(29%)、合計:1億2533万人である。
- 2042年のデータは、①0~19歳:1599万人(15%)、②20~64歳:5379万人(49%)、③65歳以上:3935万人(36%)、合計:1億913万人である。(2042年は、65歳以上人口のピークである)
このグラフを見て明らかなのは、高齢者は今後やや増えていくが、2042年から減少に転じる。少子化で年少者(0~19歳)人口も総人口も一貫して減少していく推計である。少子高齢化というのは、少子化で高齢者の割合が増えていくということである。
2020年は、1.9人で1人の高齢者を支えているが、2042年になると、1.4人で1人の高齢者を支えることになる。
しかし支えるのは高齢者だけではない。年少者も支えなければならない。そうすると、2020年では1.2人で1人、2042年では1.0人で1人を支えなければならない。(ここで「支える」というのは、どういう意味か明瞭ではない)
http://nationalpainreport.com/half-older-americans-live-pain-8822583.html
ではこの少子高齢化にどう対処すればよいのか。これは次回に。