浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

印象形成の連続体モデル

山岸俊男監修『社会心理学』(3)

今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち、「印象形成実験」である。(「ホーソン実験」は、つまらないのでパスする)。

印象形成とは、「容姿・身振り・声・風評など、他者に関する部分的な情報を手掛かりにして、その人物の全体的なパーソナリティの印象をつくること」であるという。やや難しく言うと、「対人認知の心理過程」を研究する分野であるらしい。なぜこのような、つまらない(?)ことを研究するのだろう。そのようなことがわかって、それでどうだというのだろうか。

でもこの読書ノートを書くにあたって少し考えてみた。ひょっとしたら、「社会を構成する個々人の人間関係、ひいては、よりよい社会をめざす私たちの関係のありかた」に示唆を与えるものかもしれない。

 

本書の説明は全然面白くないが、科学事典にあった以下の解説(https://kagaku-jiten.com/social-psychology/interpersonal/impression-formation.html)が興味深かったので、これに依拠して「印象形成」について考えてみよう。

  • 印象形成の研究は、他者を特性という観点から把握しようとしていたが、近年では個別の特性と集団的カテゴリーとしての特性の2つの情報から印象が形成されるとする包括的モデルがいくつか提案されている。その中でも広く知られているのがフィスクらによる連続体モデルである。
  • このモデルでは、対象となる人物に出会ったときに、まず服装や髪型、振る舞い方などの瞬間的に目で捉えることができる情報をもとにその人物の性別や職業などのカテゴリー化が行われる[カテゴリー依存型処理]。その人物について関心がなかったり、それ以上知る必要がない場合は、その人物に関する情報処理はここで終了する。
  • 目標や動機と照らし合わせてその人物についてさらに知る必要がある場合には、次の段階であるピースミール処理へと進む。ここでは相手の詳細な情報について吟味し、カテゴリー情報との一致が検討される。一致した場合はそこで処理は終了するが、一致しない場合は他のカテゴリー情報と照合され再カテゴリー化が行われる。ここでその人物のカテゴリー化が困難であると判断されると、1つずつ個別の属性を分析し統合するピースミール統合が行われ、印象が形成される。
  • このように他者の印象形成においてはカテゴリー依存型処理とピースミール処理の2つが働くわけだが、カテゴリー依存型処理はわずかな情報から相手の印象を形成でき、効率的で認知資源を節約できるため、カテゴリー依存型処理が優勢になりやすいと考えられている。
  • ピースミール処理は目標や動機がないと働かず多くの認知資源を使用するため、あまり興味のない相手の第一印象が変わりにくいということも示している。

上記説明では、「対象となる人物に出会ったとき」から、他者の印象形成が始まるようだ。それはどのような場面か? 偶然、街で見かけた人物? パーティーで会った人物? 目的をもって会った人物? 会議や商談で会った人物?  議論の場で会った人物? テレビで見た人物? ネット等での匿名の人物?

こういった具体的な場面・状況を考慮せず、十把一絡げに他者の印象形成を論じても意味がないだろう。そもそも、なぜ「印象形成」を論じなければならないのか。

例えば、病院にいったとき、さまざまな職種の人と出会う。受付や医師や看護師は間違えようがない(ユニフォームや場所でわかる)。

婚活パーティーの例が、上の「連続体モデル」に当てはまりそうである。

f:id:shoyo3:20200304185328j:plain

居酒屋婚活 https://www.otocon.jp/column/izakaya/

しかし、首尾よく「ピースミール処理」へと進んだとしても、交際→結婚に進むとは限らない。

 

私の関心は、最初に述べたように、「より良い社会をめざす私たちの関係のありかた」はどうあるべきか? というところにある。それは「印象形成論」で解明されるようなものではない。あえて、参考になる点を引き出そうとするなら、軽率なカテゴリー化(つまり、決めつけ)をすべきではないというところか。

実際のところ、(例をあげないが)「軽率なカテゴリー化」をする人が多いように思う。それは、「より良き社会」を目指すという観点からは、「認知資源の節約」とは言えないだろう。