浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

国会 - 事務方の猿芝居

桜を見る会」問題(8)

本ブログでは、「桜を見る会」問題をきっかけに、(1)政治家の資質、(2)国家公務員の資質、(3)立法と行政の関係を考えようとしている*1。従い、「桜を見る会」問題とは異なる話題を取り上げることもある。

 

まず、次の動画を見て下さい。

黒川東京高検検事長の定年延長問題

www.youtube.com

2020年3月6日の参院予算委員会で、森雅子法相は、「個別の人事プロセスでございますので、お答えは差し控えさせて頂きたいと思います」を、(私は数えていないが)45分間で36回繰り返したと言う。

私はこの動画を見て、福島瑞穂はよく辛抱強く質問したなと感心した。普通なら、「ええ加減にせい!」と怒るか、諦めるかであるが、よく36回も同じ回答を引き出したものだ。

このリピートを、「壊れたテープレコーダー」と呼ぶこともあるが、これでは「テープレコーダーは繰り返さない」とツッコミが入る。正確には、傷ついたレコードで針が飛び(針飛び)、同じ個所を繰り返すというものである。だから「壊れたレコード」と言うべきだが、いまどき円盤型レコードの「針飛び」を知っている人は稀だろう。では、何と言うべきか。

次の動画(笑える)を見ながら考えてみよう。CDも音飛びすることがあるそうだ。

www.youtube.com

……………………………………………………

壊れたレコード」は、森法相に限った話ではない。永田健(西日本新聞の特別論説委員)は、「安倍首相の言動に学ぶところは多い」として、実例を紹介している。

www.nishinippon.co.jp

 

基本に立ち返り、議会とはどういう機関か確認しておこう。

  • 議会とは、民主主義国家における国民代表的性格をもつ会議体である。
  • 議会は別名立法府(立法部)とよばれるように、その主たる権限は立法権にある。
  • 議会が近代民主主義国家に適合的な制度として歓迎された理由は、議会の場において国民代表が「審議」「討論」を重ねて立法・政策の大綱を決定し、またその「審議」「討論」のプロセスが国民に対して「公開」されるということを議会制民主主義が制度的に保障したためである。
  • 絶対王制の時代には、政治的決定はほとんど国王の専断的意志により、またその決定は当然に秘密裏になされた。
  • したがって、この「討論」と「公開」という議会政治の原理こそ、「言論の自由」や国民の政治参加を基調とする近代民主政治の精神と合致するものであり、各国において議会制度が定着していった理由はここにある。
  • 日本の議会…国会は国権の最高機関であるから、立法権だけではなく、財政に関する権限(予算・決算の議決、課税に関する議決など)、条約承認権行政部監督権内閣総理大臣の指名、内閣不信任決議権など)、国政調査権憲法改正発議権など、国政に関する広範な権限をもっている。(田中浩、日本大百科全書

討論の広場-議会と議員の活動原則」で書いた、「議会の活動原則」、「議員の活動原則」、「自由討議による合意形成」は、この「討論と公開という議会政治の原理」に則ったものと言えよう。

なお、国政調査権というのが出てきたが、これは次のような権利である。

  • 国会は、国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。(憲法62条)
  • 国会法、議院証言法で、証人喚問、書類の提出要求、閣僚・省庁幹部からの説明聴取参考人の意見聴取、議員派遣などが定められている。
  • 国会法、議院証言法では、証言や資料提出を拒否する政府の理由が納得できなければ、国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣声明を要求することができ、10日以内に声明を出さない時は、証言に応じ書類を提出しなければならない、と規定している。(星浩、知恵蔵)

桜を見る会」追及本部のヒアリングは、国政調査権に基づくヒアリングに該当するだろう。

 

これまで紹介してきた動画を見れば、上記の「討論と公開という議会政治の原理」とはかけ離れた議会の実態があると考えられよう。事務方(官僚)の猿芝居のように見える。

私はこれは、政治家や国家公務員の資質の問題よりは、制度に起因するところが大きいのではないかと考えている。

f:id:shoyo3:20200311185159j:plain

画像出典:ブログ「世情いろいろ」(https://ameblo.jp/setup77/entry-12502894819.html

 

(補足)

国会の本会議や委員会の動画は、YouTubeの他、「衆議院参議院インターネット審議中継」(過去の分も)でも視聴できる。後者の検索・表示機能がより充実すれば、国民に対する「審議・討論のプロセス公開」が進むことになろう。