浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

「官僚主導」から「官邸主導」の予算編成へ

神野直彦『財政学』(15)

今回は、第9章 予算過程の論理と実態 の続きである。本書は、予算過程を、(1)編成過程(立案過程と決定過程)、(2)執行過程、(3)決算過程に区分している。

予算編成過程については、サイト「ミラサポ」の「予算編成のプロセス」の図によくまとめられている。

 

予算編成過程1(概算要求の準備から、財務省原案の策定まで)

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この図に従い、少し詳しく見ていきたい。 

1.経済財政運営と改革の基本方針(6~7月)

何らかの組織が、何らかの「組織としての活動」をしようと思えば、カネがかかる*1

「国」というレベルのコミュニティの活動を考えようとする場合、今年は何に重点をおいて活動しようかという方針がまずなければならない。その方針は誰が決めるのか。それは現在の日本では、内閣である。ただし、内閣を構成するメンバーだけで決めるのではない。内閣府に設置された経済財政諮問会議が、意見を述べる(実質的には決める?)のである。そこで、まず経済財政諮問会議とはどういうものか見ておきたい。

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https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201911/07keizaishimon.html

経済財政諮問会議の性格…経済財政政策に関する重要事項について、有識者等の優れた識見や知識を活用しつつ内閣総理大臣のリーダーシップを十全に発揮することを目的として、内閣府に設置された合議制機関

所掌事務…(1) 内閣総理大臣の諮問に応じて、経済全般の運営の基本方針、財政運営の基本、予算編成の基本方針その他の経済財政政策に関する重要事項についての調査審議 (2) 内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じて、国土形成計画法に規定する全国計画その他の経済財政政策に関連する重要事項について、経済全般の見地から政策の一貫性・整合性を確保するための調査審議 (3) 上記 (1) (2)について、内閣総理大臣等に意見を述べること(内閣府https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/about/shimonkaigi.pdf

経済財政諮問会議という機関は、2001年1月という比較的最近できた機関である。「省庁再編」とともに内閣府に設置されたものであるが、この省庁再編は、「行政改革」の歴史のなかで出てきたものである。ここで行政改革を論じることはできない(不勉強なので)が、ちょっと目についた解説を引用しておこう。官邸の<「変革と創造」-橋本内閣の6つの改革>というページにある「行政改革について」という解説である。

行政改革の基本的な視点】

○国や地方公共団体が規制などによって民間活動に関与していることを廃止できないか

○国や特殊法人などの公共部門が提供しているサービスを民間に委ねられないか

○行政が引き続き関与する場合であってもその主体を国から地方に委ねられないか

 これらの三つ観点から、一切の聖域を設けず、規制緩和官民の役割分担の見直し地方分権の推進、中央省庁の再編などの課題に取り組んでいます。

行政改革会議

中央省庁の再編は、二十一世紀の日本の社会が目指すべき姿に照らして最もふさわしい行政体制を再構築する、行政改革起爆剤とも言えるものです。

橋本内閣総理大臣を会長とする「行政改革会議」においては、21世紀における国家機能の在り方を踏まえ、中央省庁の再編の在り方、官邸機能の強化の具体策などについて検討を進めており、本年十一月末までに成案をとりまとめる予定です。

次の説明も見ておきたい。

アメリカの大統領経済諮問委員会Council of Economic Advisers(CEA)を範として、1997年当時の首相橋本龍太郎が構想し、首相官邸に経済政策立案や予算編成の主導権をもたせて、硬直化した体制の打破を意図したものであった。経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)を打ち出すなど、独自の成果をあげたが、2009年から2012年までの民主党政権においては、開催されることがなかった。(森本三男、日本大百科全書

構造改革を掲げた小泉純一郎内閣は,従来の官僚主導から官邸主導による政策決定を志向,特に同諮問会議が重要な役割を担った。しかし,2009年8月の衆議院選挙で,政権交代を果たして発足した,民主党を中心とする鳩山由紀夫内閣では,小泉構造改革が,行き過ぎた市場原理主義,格差拡大を助長したとして,同会議を廃止,かわって行政刷新会議と経済政策立案の核として国家戦略局を設置した。(百科事典マイペディア)

小泉純一郎首相は経済財政諮問会議を最も重要な政策会議と位置づけ、「骨太の方針」を打ち出すことによって与野党の“抵抗勢力”を退け、官邸主導の予算編成に活用した。

小泉内閣の下での経済財政諮問会議の成果としては、予算編成過程の改革、金融システム改革、郵政民営化三位一体の改革、政策金融改革、規制改革、税制改革、経済成長戦略、歳出・歳入一体改革などが挙げられる。経済財政諮問会議は2012年12月に誕生した第2次安倍内閣で復活することとなった。(Wikipedia

「官僚主導から官邸主導へ」というのは、「国民の代表ではない官僚(国家公務員)が政治を牛耳るのではなく、国民の代表である国会議員→内閣→官邸に政治を取り戻すべきだ」と考えれば、受け入れやすいものであっただろう。だけれども、その結果はどうであったか。新自由主義を標榜する小泉構造改革自公政権の経済思想・経済政策)が、「行き過ぎた市場原理主義、格差拡大を助長した」のではなかったか。(私は、たぶんそうだろうと思うが、、データに基づき検証したわけではない)。

ちなみに、現在の経済財政諮問会議のメンバーは、次の通りである。

議長 安倍 晋三   内閣総理大臣  

議員 麻生 太郎   副総理 兼 財務大臣

 同   菅   義偉   内閣官房長官

 同   西村 康稔   内閣府特命担当大臣(経済財政政策) 兼 経済再生担当大臣

 同   高市 早苗   総務大臣

 同   梶山 弘志   経済産業大臣

 同   黒田 東彦   日本銀行総裁

 同   竹森 俊平   慶應義塾大学経済学部教授 [学者]

 同   中西 宏明   株式会社日立製作所 取締役会長 兼 執行役 [財界、経団連会長]

 同   新浪 剛史   サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長 [財界]

 同   柳川 範之   東京大学大学院経済学研究科教授 [学者]

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/about/member.pdf

議員の構成は、内閣府設置法第21条、第22条で定められている。民間有識者としては、財界から2名、学者2名である。

竹森俊平:ケインズ経済学と、フリードマン新自由主義の中間的な意見を持つ。(Wikipedia

柳川範之:? 『日本成長戦略 40歳定年制』という著作がある。

しかし、このメンバーと上記の写真を見れば、この会議で実質的な議論がなされるとは考えられない。ではどこで実質的な議論がなされるのか。

 

長くなりそうなので、続きは次回に。

*1:おカネ(貨幣)に関する本質的な(基礎的な)問題については、いずれ取り上げたい。