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COVID-19:「行動監視」か「セキュリティソフト」か?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(6)

「COVID-19」に関する過去記事のタイトル変更でモレがありましたので追加します。

2020/03/06 COVID-19:マスクが品薄にならない方法 ←(COVID-19予防)マスクが品薄にならない方法

あわせて、サブタイトル「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ」の連番を変更します。

 

現在の状況下で喫緊の課題は、医療崩壊を招かないための諸施策を講ずることとされる。軽症者・無症状者は「宿泊療養・自宅療養」の対象にする*1とか、医療・検査機器の整備とか、等々である。

そうしたニュースは日々流れてくるので紹介することはせず、今回の記事は、「予防」(感染者を増大させない)の観点から検討すべきことはないのか、について考えてみたい。

 

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年4月1日)のなかに、ICTの利活用というのがあり、引用しておきます。(Ⅳ.提言 > 2.行動変容の必要性 について >

(3)ICTの 利活用について)

  • 感染を収束に向かわせているアジア諸国のなかには、携帯端末の位置情報を中心にパーソナルデータを積極的に活用した取組が進んでいる。感染拡大が懸念される日本においても、プライバシーの保護や個人情報保護法制などの観点を踏まえつつ、感染拡大が予測される地域でのクラスター(患者集団)発生を早期に探知する用途等に限定したパーソナルデータの活用も一つの選択肢となりうる。ただし、当該テーマについては、様々な意見・懸念が想定されるため、結論ありきではない形で、一般市民や専門家などを巻き込んだ議論を早急に開始すべきである。
  • また、感染者の集団が発生している地域の把握や、行政による感染拡大防止のための施策の推進、保健所等の業務効率化の観点、並びに、市民の感染予防の意識の向上を通じた行動変容へのきっかけとして、アプリ等を用いた健康管理等を積極的に推進すべきである。

感染拡大防止のためには、感染の疑いのある人(感染者と接触した可能性のある人)の早期把握、迅速な検査、行動追跡、適切な処置が必要であるが、私はこの「ICTの利活用」に注目した報道がほとんどなされていないように感じている。

上記提言にあるアジア諸国とは、中国と韓国(&台湾、シンガポール)だろう。

 

アリババグループのモバイル決済サービス「アリペイ」による健康情報管理システム=「健康バーコード」システムが注目される。2020年2月11日から浙江省杭州に導入、その1週間後には中国100都市にまで広がったという。*2

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どういうシステムかというと、個人が入力した情報から、判定基準に基づき、健康状態を3つのQRコードに区分して表示するものである。入力情報は、自己申告の健康状態、新型コロナウイルスの感染者との接触、感染地域への立ち入りなどであるらしい。病院へ行ったとき書く「問診票」みたいなもので、医師の診察無しで行う簡易な健康状態判定システムであるといってよいだろう。(メンタルヘルス対策のためのストレスチェックと似たものと言っても良いかもしれない)。精度を高めるためには、「入力情報」の工夫と「判定基準」のレベルアップが必要であるが、感染拡大防止が目的なのだから、医療的観点よりは、社会的観点が重視されるべきものだろう(3区分自体がアバウトなものである)。

 

これは単なる健康判定ではなく、スマホQRコードであることに示されているように、感染の疑いのある人の行動規制が意図されているものである。つまり「コードの色で、公共場所の通行可否が判断される」のである。だけれども、QRコードにどういう情報が書き込まれているのか知らないが、それを読み取れば、当該個人が、その場所にいたことが把握されるシステムになっているだろう。感染が判明してから、当該個人の行動履歴をヒアリングするという鈍重なことをしていては、感染爆発は防止できないのではないか(「夜の街クラスター」は防げない)。

 

GPSによる追跡機能(Googleマップのタイムライン機能)の活用は検討に値しよう。「デジタル監視」という言葉もあるが、「デジタル追跡」という言葉が適切だろう。 

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シンガポール政府が開発、無料配布を始めたスマホ用アプリ「トレース・トゥギャザー(一緒に追跡)」が注目される。*3

近距離無線通信「ブルートゥース」を使い、至近距離にいた人を感知、記録するものである。

アプリをダウンロードした人同士が近くにいると、互いに認識し、電話番号を暗号化したデータをスマホ内に記録する。新たな感染者が発覚したら、その人のスマホ内のデータを政府の追跡チームが解析、濃厚接触した人を洗い出す、というものである。 

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 「行動監視」とか、「デジタル監視」などという言葉を使うと、「監視」という言葉に過剰反応し、「権力による統制」、「自由の侵害」、「個人情報の保護」を思い浮べてしまう。「監視」ではなく、「追跡」という言葉を使うべきであろう。

「権力」が、「独裁的な行政権力」ではなく、「民主的な合議機関」であると確信できれば、恐れるようなものではないはずである。

「自由の侵害」というとき、「ヘイトスピーチの自由」や、「夜の街を出歩く自由」や「カジノへ行く自由」の侵害程度のものでしかなかったらどうだろうか。生命を危機にさらさないようにしようという「デジタル追跡」に優越する「自由」に何があるのだろうか。

他者の生命を犠牲にしてもよいような「個人情報」とは何だろうか。個人の行動をトレースしたところで、信念や信仰や思想までトレースするわけではない。

だけれども、「軍隊」と「警察」が区分されたとしても、「自衛隊」が曖昧な存在とされるように、グレーな部分はあるだろう。

しかし、「強制力」をもって、すべての居住者に実施されなければ、効果は極めて限定的なものとなるだろう

布製マスクの配布などを考えるよりは、このようなソフトの仕様を考えるのが政治家の仕事ではなかろうか。

 

感染が爆発してしまってからでは遅い。もはや遅いかもしれない。それでもなお、地域ごとの差はあるのだから、すべての地域でムダというわけでもないだろう。

 

パソコンにセキュリティソフトを入れないことは考えられない。Windows10で、デフォルトで入っているセキュリティソフトを、「私のパソコン」を監視しているものとして拒否するだろうか。

 

今朝、次の記事を目にした。

アリババは新型コロナ対策集を公開 広がるオープンイノベーション(2020/4/2、高須正和、日経BP

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威は今も拡大している。入国禁止や隔離といった対策をとる国や都市は増え続けている。そんな中、中国の医師たちが「パンデミックを抑えるのは互いを避けることではなく、協⼒し合うこと」とのメッセージを込めたハンドブックを公開するなど、世界各国の有志が手を取り合い、この危機を乗り越えるオープンイノベーションを進めている。

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日本語を含む各国の言語で公開されている新型コロナウイルス感染症対策ハンドブック