浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

5人以上が見上げていると、通りがかった人の8割以上が同じ行動をとる

山岸俊男監修『社会心理学』(4)

今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち、「同調実験」である。「同調」については、第5章で説明があるので、そこで詳しく見ることにして、ここではごく簡単にコメントするにとどめたい。

本書の説明では、「同調」とは、以下のような意味である。

  • 同調とは、集団が持つ社会的圧力によって、個人の意見や行動が特定の意見や行動に集約されることである。
  • よくまとまっている集団や、本人以外のメンバーの意見や行動が一致している場合に同調は起こりやすい。
  • 同調行動が起こる要因には、情報的影響と規範的影響の2つがある。
  • 情報的影響とは、他者の判断を有用だと考えて自分の行動に取り入れること。
  • 規範的影響とは、他者から好かれる/嫌われないために、集団の暗黙のルールから逸脱しないようにすること。
  • メンバーが集団に魅力を感じ、その集団にとどまりたいと感じる力(集団凝集性)が高いとまとまりがよく、メンバーは結束を乱すまいとする傾向がある。
  • 同調行動は以下のような状況で起こりやすい。(アッシュ)
  1. 多数派が3~4人の時までは人数に応じて同調率は高くなる。
  2. 人前で公的な反応を求められている時(多数派の意見に同調)
  3. 個人と集団の結びつきが強いとき(集団凝集性、仲が良いグループのほうが同調しやすい)

ある集団に属する個人(集団構成メンバー)の意見や行動が、「集団の意見や行動」に影響されて変容することはどこにでも見られる現象である。ここで「集団の意見や行動」がどのように形成されるのかが重要である。

その集団はいかなる集団なのか。趣味のグループ、家庭、連合国家……、レベルの異なる多様な「集団」が存在する。(私はそれらを「コミュニティ」と呼んでいる)。

集団の意見や行動が、いかにして形成されるか。独裁、合議制、官僚……。

何についての意見、行動なのか。グループの旅行、飲み会、児童相談所建設問題……。

集団の既存のルール、ルールの内容、改正の手続、ルールの解釈……。

集団と個人の関係は、「集団が持つ社会的圧力によって、個人の意見や行動が特定の意見や行動に集約される」などと解説したところで、ほとんど何も言っていないに等しい。アッシュの実験のような単純な実験が、妥当するような局面があったとしても、それを一般化するわけにはいかない。人はアッシュの実験の話を聞いて、自らの乏しい経験の中での集団と個人の関係を思い浮べ、「なるほど、そうだね」とか「それは、ちょっと違うね」とか述べ、勉強した気になるのだろうか。

 

ここまで書いてきて、ふと「同調」の意味をとり違えているのではないか、という思いが強くなってきた。「集団」とか「社会的圧力」という言葉にとらわれるから上のようなコメントになるのではないか。

もともと私には、下の画像に示されているような「同調」のイメージもあった。(5人以上が見上げていると、通りがかった人の8割以上が同じ行動をとる)。

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https://youtu.be/TCB9tWQit-8

 

ここに示されている「同調行動」は、社会的な要素が薄められていて、「人間心理」というより、ほとんど「生理的な反応」ではないかと思われる。目的も何もない生物の群れ……。集合と離散……。