新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(22)
COVID-19とは、Corona-virus disease 2019の略であり、
<2019年に発見されたコロナウイルス(SARS-CoV-2)を原因とした疾病(disease)>
である。
以前より落ち着いたとはいえ、日々「感染者数&死者数」が報道されている。
ブラジルとインドが急増している。(日経、2020/6/17 、https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-chart-list/)
ここで基本的な問いを提出する。
コロナウイルスに感染するということは、病気を意味するのか? コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者は、COVID-19という疾病(病気)の患者なのか?
次の図を見て下さい。
- 心身の状態は、「健康」と「病気」に明確に区分されるものではない。
- 健康と病気の間には、連続的に変化する「未病」とも称すべき状態がある。(健康と病気のグラデーション)
- 神奈川県の未病指標は、生活習慣、認知機能、生活機能、メンタルヘルス・ストレスの4つの領域から、未病の状態を数値等で「見える化」するものである。(https://www.pref.kanagawa.jp/docs/mv4/mebyo-index.html)
日本未病学会(理事長 吉田博)によると、未病は次のように分類される。
- 未病Ⅰ(西洋型未病)…自覚症状はないが、検査では異常がある状態。
- 未病Ⅱ(東洋型未病)…自覚症状はあるが、検査では異常がない状態。
- 未病Ⅰには、①通常の検査で異常が確認されるもの、②特殊検査で異常が確認されるもの、③遺伝子診断によって確認されるものがある。(https://www.j-mibyou.or.jp/mibyotowa.htm)
「西洋型」、「東洋型」という言葉に拘る必要はない。「自覚症状の有無」、「検査異常の有無」いずれをも考慮すべきである。私たちは、なんらかの自覚症状があって病院にいくと、まず問診票を書いて、検査を受けて、医者が検査結果をみて、「特に異常はありませんよ。念のために痛み止めの薬を出しておきましょう。ひどくなったら来てください」という趣旨のことを言われた経験があるだろう。上記分類でいえば、未病Ⅱに対する対応の典型である。要は「何もしない」ということである。
逆に、未病Ⅰに対しては、健康診断(健康診査)を受けた人ならわかるように、過剰ではないかと思われるくらいの対応がなされているようである。これらは「検査中心主義」と言ってもよいだろう。
- 未病の対象となるのは、境界域高血圧、高脂血症、境界域糖尿病、肥満、高尿酸、動脈硬化、骨粗鬆症、無症候蛋白尿、B型肝炎ウイルスのキャリア、無症候性脳梗塞、潜在性心不全、 脂肪肝などがあり、さらに広がることが予想されます。 一方、シンドロームX、インスリン抵抗性はアメリカからきた未病として捉えられ、現在ではメタボリックシンドロ-ムは、まさしく「未病」といえるでしょう。(吉田博)
こういうふうにたくさん並べ立てられるとわかりにくいが、神奈川県の次のまとめの表は分かりやすい。
未病は医療機器の発達により、検査値に異常があれば、早期に発見できるようになりました。しかし、病気に至ってからでは改善しない疾患も多く存在しますし。今後は自覚症状のない時期の未病への対応が求められてきます。このため、年齢に関わらず参加型の医療を実践していくことが不可欠です。あくまでも未病を改善するのは私たち自身であり、それを導き、手助けするのが医療従事者、このような考え方を文化として育てていく必要があります。(神奈川県、未病を知ろう!~病気になってしまう前に~)
上記に「高脂血症」というのがあるが、現在は「脂質異常症」と呼ばれる(2007年に名称変更)。
- 中性脂肪やコレステロールなどの脂質代謝に異常をきたし、血液中の値が正常域をはずれた状態をいう。動脈硬化の主要な危険因子であり、放置すれば脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患をまねく原因となる。
- 脂質異常症は、LDLコレステロールが140mg/dl以上の「高LDLコレステロール血症」、HDLコレステロールが40mg/dl未満の「低HDLコレステロール血症」、中性脂肪が150mg/dl以上の「高トリグリセライド血症 (高中性脂肪血症)」のいずれかで、総コレステロールはあくまでも参考値としての記載にとどめ、診断基準から外された。(e-ヘルスネット)
- 症状はなく血液検査で初めてわかる。高カロリー・高脂肪の食事と運動不足が原因。遺伝によるものもある。高脂血症の治療目的は、動脈硬化の予防なので、禁煙など、脂質異常症以外の動脈硬化危険因子の治療を同時に行うことが重要である。(Qライフ参照)
「高脂血症」という名前がついているが、症状はなく血液検査で初めてわかるものであり、上記分類では「未病」に属する。
ここで「未病」のイメージ図を再掲する。
これを、もう少し変形してカラフルにしてみよう*1。
青黄赤の信号色であるが、境界は明確ではなく、グラデーションで表現した。
横軸は、年齢と考えても良いし、免疫力と考えても良いだろう。
縦軸は、対象臓器や機能と考える。未病の範囲は異なるだろうから、曖昧な境界線は斜めにしてある。
「未病」概念の提唱は、未病Ⅱに着目すべきことを強調することによって、現代医療の不備を補うものとなるように思われる。
- 未病Ⅱ(東洋型未病)…自覚症状はあるが、検査では異常がない状態。
未病Ⅱの自覚症状とは何か?
- だるい、肩こり、冷え、のぼせ、疲れ、手足のしびれ、めまい、食欲がない、元気がない、など、何となく調子が悪い状態。(日本大百科全書)
こういう症状で、医者にかかっても、検査異常がなければ、治療対象にはならない。検査異常があって、病気と診断されてはじめて治療開始となる。しかし、普通に考えて、これは「健康な状態」とは言えない。医者は頼りにならない*2ので、効くかどうかわからない健康食品やサプリメントや健康器具などに頼ることになる。
しかし、医者に頼るよりは、自分自身が「治癒力」を高めることが本筋だろう*3。
さて、以上の話は、COVID-19とどんな関係があるのか。最初の問いは、「コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者は、COVID-19という疾病disease(病気)の患者なのか?」であった。
厚労省は、COVID-19を「新型コロナウイルス感染症」と呼んでいる。これは病気なのか未病なのか。病気としての「呼吸器系疾患」の一種なのか。
自覚症状があって、検査異常があれば、「病気」である。ところが「無症状の感染者」がよく話題になる。これは、上記の未病の定義によれば、
- 未病Ⅰ(西洋型未病)…自覚症状はないが、検査では異常がある状態。
に該当する。つまり「病気」ではない。即ち、COVID-19という疾病disease(病気)ではない。無症状感染者は、コロナウイルスを保有しているだけで、病気の患者ではない。
しかし、これは放置しておいてよいということを意味しない。これが問題視されるのは、「無症状のコロナウイルス保有者」が「感染者」となる可能性があるからである。この意味では、本人が「病気」に移行する可能性と同時に、他者に感染させる可能性が考慮されている。では、この可能性は(統計的に有意なデータでもって)実証されているのだろうか。もちろん、仮に実証されていなくても、何らかの対策は必要であろう。どの程度の対策が必要かは、過去のウイルス感染症の研究の積み重ねから類推できないのだろうか。残念ながら、こういった類の話が聞こえてこない(私が知らないだけかもしれないが…)。
私の勝手な想像だが、「無症状のコロナウイルス保有者」であれ、「症状のあるコロナウイルス保有者」であれ、コロナウイルス保有者から感染して、重症になったり、死に至る者は、高齢者を主とする免疫力の低下した者だから、「無症状の感染者」に脅える*4よりは、「高齢者を中心とする免疫力の低下した者」の予防策に重点を置くことが肝要だろう。
*2:総合診療医は、患者に密着した慢性期医療、および生命を脅かさない急性期医療が主な役割であり、深刻な疾病の早期発見、健康教育、予防医療なども担っている(Wikipedia)のだとすれば、未病Ⅱをカバーすることになるのだろう。
*3:貝原益軒は「養生訓」で、こう述べている。…養生の術は、先(ず)わが身をそこなふ物を去べし。身をそこなふ物は、内慾と外邪となり。内慾とは飲食の慾、好色の慾、睡の慾、言語をほしゐままにするの慾と、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七情の慾を云。外邪とは天の四気なり。風・寒・暑・湿を云。内慾をこらゑて、すくなくし、外邪をおそれてふせぐ、是を以(て)、元気をそこなはず、病なくして天年を永くたもつべし。
*4:メディアはこういう報道で騒いだり脅したりせず、高齢者施設のありかた等、「高齢者を中心とする免疫力の低下した者」の予防策の様々な取り組みを報道してもらいたいものである。