浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

概算要求から予算案提出まで

神野直彦『財政学』(17)

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https://www.mirasapo.jp/budget/guide/process.html

 

予算過程は、(1)編成過程(立案過程と決定過程)、(2)執行過程、(3)決算過程に区分される。

予算編成の立案過程について、神野は「転倒する立案過程」と呼んでいる。これは、本書執筆当時、「予算編成方針」が示される前に、各省庁において予算編成が進められていたためである。しかし、現在は、内閣府に設置された経済財政諮問会議が「経済財政運営と改革の基本方針」を立案し、これを内閣が閣議決定することになっている(前々回と前回の記事参照)。

基本方針後は、上図の通り、概算要求基準(各府省庁の予算編成に先立って予算方針、上限額を明示)→概算要求(各府省庁が「概算要求書」を財務省へ提出)(8月下旬)→予算編成作業(査定、折衝)→予算編成の基本方針についての議論・決定、税制改革についての議論・決定(12月中旬)→財務省原案の策定(12月中旬)→政府案閣議決定(12月下旬)→国会に予算案を提出(翌年1月~3月)という流れになる。

 

ここで一例として、「内閣官房*1の「概算要求」と「政府予算案」の一部を見てみよう*2

下表は、令和2年度予算案の上位項目である。

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目立つのは、「情報システム関係予算」(一括計上経費)である。これは、

  • 「政府情報システムの予算要求から執行の各段階における一元的なプロジェクト管理の強化について」(令和元年6月4日デジタル・ガバメント閣僚会議決定)に基づき、政府全体で共通的に利用するシステム、基盤、機能等の整備及び運用に係る予算について、IT総合戦略室の下で統一的な方針により執行することで、効果的かつ効率的な政府情報システムの整備・運用を実現するとともに、効率化した予算の一部を活用して、政府情報システムの更なる高度化を図る。

というものである。

「内閣衛星情報センター」は、前年度に引き続きの予算であるが、これは、

  • 外交・防衛等の安全保障及び大規模災害等への対応等の危機管理のために必要な情報の収集を主な目的とした情報収集衛星の開発等を行い、政府の情報機能を強化する。
  • 「基幹衛星」4機に、「時間軸多様化衛星」4機及び「データ中継衛星」2機を加えた合計10機の整備を目標とし、着実に衛星開発を進める。また、即時性の向上やデータ量の増加に対応した地上システムの開発を進める。引き続き、解像度を含む情報の質等を最先端の商業衛星を凌駕する水準まで向上するための研究開発等を実施する。

令和2年度予算案額は、情報システム関係予算を除けば、ほぼ前年度予算額並みである。

*1:どういう機関であるかは別途とりあげることにする。

*2:令和2年度予算概算要求の概要(2019/8)、令和2年度予算(案)の概要(2019/12) (https://www.cas.go.jp/jp/yosan/index.html