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COVID-19:「病床逼迫」と言われても信用できない

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(47)-Q&A(6)

Q&A[素人の自問自答]の6回目で、「重症者増大と医療崩壊」の続きです。

 

 

Q11:東京、大阪及び全国の重症者数はどれくらいでしょうか?

A11:A9-2と同様な数表を示します。

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厚労省の「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査結果」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00023.html)の12月2日版より、作表しています。

12月2日の重症者数(調査結果の数字)を、国(厚労省等)基準と都道府県基準(TV等の報道)で比べてみましょう。*1

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いずれも「公式」な数字で、どちらも元データは都道府県が出した数字です。全国で297人の差異、うち東京都と大阪府265人で大部分を占める。

都道府県基準の少ないほうの数字でマスメディアは大騒ぎし、国基準の多いほうの数字で政府・厚労省・分科会は、どちらかというと冷静(?)に受け止めているように感じられます。不思議ですね。

東京都の差異の内容については、A10-2を参照してください。大阪府については、差異の内容がわかりませんでした(どこかに公表されていると思うのですが…)。

 

Q12:どちらの重症者数が正しいのでしょうか?

A12-1:重症者を定義してカウントしているので、どちらも正しいと言えます。従い、どちらが正しいかではなく、重症者数をカウントするのに、目的に照らして、どちらの定義が妥当かと問うべきでしょう。

A12-2:恐らく医師は、様々な可能性を考慮し、いろいろな検査(PCR検査はその一つに過ぎない)・診察をして、どのような治療をすべきか判断しています。看護師等と協同して、患者の症状の変化を「総合的に」把握しているはずですので、「重症者」の定義に拘泥することはないのではないでしょうか。

A12-3:A10-1で、重症度分類(医療従事者が評価する基準)を紹介しましたが、これは「治療のための分類」ではなく、医師・検査技師・看護師・保健師等、病床、医療機器等が逼迫しないように事前に準備しておくための分類(医療提供体制確保のための分類)という意味合いが強いのではないかと思います。

 

Q13:いずれにせよ、重症者は増えているでしょう。医療崩壊の危険が迫っているのではないですか?

A13-1:「重症者」の定義をもう一度考えてみましょう。厚労省の「重症者」の定義は、20200326 新型コロナウイルス感染症の患者数が大幅に増えたときに備えた入院医療提供体制等の整備について(第2版)*2p.6

によれば、「集中治療室(ICU)等での管理又は人工呼吸器管理が必要な患者」でした。これは、「新型コロナウイルス感染症の患者であること」が前提になっています。「新型コロナウイルス感染症の患者」とはどういう人であるかということが論点のひとつですが、これについては「PCR検査」についてのQ&Aで考えてみることにします。

A13-2:このところの重症者増加(→死者増加)の原因は、(1)ウイルス変異の報告がないこと、(2)当初より重症者が高齢者&基礎疾患ありに多いということからすれば、ウイルス要因というよりも、高齢者&基礎疾患ありの人の側の要因であると考えられます。もちろん他の要因を排除するものではありませんが、冬の季節には免疫機能が低下するということらしいので、温度・湿度等の非ウイルス要因が重症者増加の主要因であると考えられます。私たちの「気の緩み」などといったものではないでしょう。

A13-3:「医療崩壊」という言葉は、危機を煽る「過剰な表現」です。「病床逼迫」というべきです。ここで、「病床」というのは、医師・検査技師・看護師・保健師等、病床、医療機器等の「医療提供体制」を代表する言葉として使っています。「病床」(ハコ)だけ用意してもダメという批判を聞くことがありますが、そんなことは当たり前のことです。医師・検査技師・看護師・保健師等、医療機器等を考慮して、病床をどれだけ確保できるのかが問題です。別に厚労省を擁護するつもりはありませんが*3厚労省都道府県知事等に、当初より何度も、医療提供体制の整備について事務連絡をしています。最近の都道府県知事の発言を聞いていると、自分のことは棚に上げて、政府(GO TO)や業者(対策不徹底)や私たち(気の緩み)が原因で感染者が増大していると、責任転嫁しているように感じられます。

 

Q14:「医療提供体制」を整備するとはどういうことでしょうか?

A14:厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部が、令和2年6月19日都道府県知事等に発出した事務連絡「今後を見据えた新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備について」を見てみましょう。

目次は次のようになっています。

<用語の整理>

1.新たな医療提供体制整備に関する基本的な考え方について

2.新たな「流行シナリオ」を踏まえた都道府県ごとの患者推計について

3.入院医療体制について

4.救急・搬送体制について

5.外来診療体制について

6.院内感染対策について

7.医療用物資等の確保について

8.医療従事者の養成・確保について

9.特別な配慮が必要な医療提供体制について

「医療提供体制」として、これらのことが考えられなければならないとしています。

まず「1.基本的な考え方」について、次のようなことが述べられています。(一部のみピックアップ)

  • 新たな医療提供体制整備は、これまで同様、都道府県が主体となって推進し、達成することを基本とすること。国は、都道府県が、その実情に応じた柔軟な対策を実施することが可能となるよう、体制整備に当たっての選択肢や考慮事項を示すとともに、都道府県ごとの体制整備の進捗状況を把握し、好事例の共有、困難事例の調整・支援の検討等に努めることとする 。
  • 都道府県は、保健所設置市及び特別区を含む基礎自治体と連携して医療提供体制整備を行うこと 。特に、今後の感染拡大に備えて、感染状況が小康状態にある時期から、これらの自治体・保健所と、情報共有をはじめとした連携を図ること。
  • また、新型コロナウイルス感染症患者に対する医療のみならず、他の疾患等の患者に対する必要な医療も両立して確保することを目指し、医療提供体制を整備すること 。
  • また、医療提供体制の整備は、感染ピーク時のみならず、感染拡大の経過や収束時期も含めた時間軸を踏まえ た対策が必要であるため、今般、国内実績を踏まえた都道府県ごとの患者推計を行うこととしている 。
  • 特に入院医療体制の構築に当たっては、他の疾患等の患者に対する医療の確保の観点からも、感染のピークに至るまでの間を段階的にフェーズで区切り、フェーズごとの病床確保等の対策を検討すること
  • 都道府県が社会への協力要請(自粛要請等)を行う時期の違いによって 、その後の患者数や医療資源の必要量が変化する。早期に社会への協力要請を行えば 、医療資源を集中的に投入する期間が短縮することに留意 すること。

特に重要と思われる部分は、赤字にしました。いまは「医療提供体制」を考えようとしていますので、下から2番目の「感染のピークに至るまでの間を段階的にフェーズで区切り、フェーズごとの病床確保等の対策を検討する」と言う部分が重要です。

 

Q15:「フェーズ」とはどういう意味ですか?

A15-1:<用語の整理>より、

フェーズ新型コロナウイルス感染症患者向けの病床及び宿泊療養施設を計画的に確保していくために定める段階。療養者数の増加によって移行する。療養者数のピークを最終フェーズとし、それまでのフェーズごとにあらかじめ 即応病床計画数等を設定しておく。フェーズの期間・数は、都道府県が実情に応じて柔軟に設定可能である。(療養者数:入院又は宿泊療養が必要な者の数)

病床確保計画:各都道府県の各フェーズにおける即応病床計画数及びフェーズの切り替えの要件の総称。都道府県は、この計画に基づいて、病床を確保していく。

即応病床(計画)都道府県がフェーズごとに即応病床として確保することを計画する病床。都道府県は、患者推計から算出される最大推計入院患者数を上回る即応病床(計画)数を設定する

即応病床:空床にしておく、あるいはすぐさまその病床で療養している患者を転床させる等により、新型コロナウイルス感染症患者の発生・受入れ要請があれば、即時患者受入れを行うことについて医療機関と調整している病床。フェーズごとの即応病床(計画)数と同数を確保することが基本。なお、各フェーズで即応病床と位置付けられているものについては、新型コロナウイルス感染症患者の入院の有無を問わず、即応病床数として カウントする。

準備病床:あらかじめ設定したフェーズの移行に伴って、即応病床に切り替わる病床。都道府県の要請があれば、一定の準備期間(1週間程度)内に新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる即応病床とすることについて医療機関と調整している病床。フェーズαとフェーズα+1の即応病床数の差がフェーズα+1の準備病床数となる。

A15-2:「3.入院医療体制について」で、詳しく説明されている(引用は省略)が、ここで「今後を見据えた新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備について(概要・イメージ図)」のp.8のイメージ図を貼り付けておきましょう。

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この図を見ながら、フェーズと病床確保の考え方を理解しましょう。

先ほど、準備病床の説明で、「フェーズαとフェーズα+1の即応病床数の差がフェーズα+1の準備病床数となる」とありましたが、これは「フェーズαとフェーズα+1の即応病床数の差がフェーズαの準備病床数となる」の誤りでしょう。

 

Q16:「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査結果(12月2日0時時点)」を、どう見ますか?

A16-1:まず、この「調査結果」の項目の注記を見ておきましょう。[ ]は私の補足です。

(注1)PCR検査陽性者数:退院基準を満たして退院した者、解除基準を満たして宿泊療養、自宅療養、社会福祉施設等療養を解除された者及び死亡者を除いた者が対象。[(1)=(2)+(3)+(4)+(5)+(6)]

(注3)現フェーズ/最終フェーズ:病床・宿泊療養施設確保計画における現在のフェーズを記載。[例えば、3/4とあるのは、現フェーズが第3フェーズ、最終フェーズが第4フェーズであることを示す]

(注4)確保病床数:いずれかのフェーズにおいて、空床にしておく、あるいはすぐさまその病床で療養している患者を転床させる等により、新型コロナウイルス感染症患者の発生・受入れ要請があれば、即時患者受入れを行うことについて医療機関と調整している病床。[用語の説明にあった即応病床に相当する]

(注5)最終フェーズにおける即応病床(計画)数:最終フェーズにおいて、都道府県が即応病床として確保することを計画する病床。

A16-2:東京都の「重症者数」のフェーズが、4段階のうち、第2フェーズになっています。重症者数は246人で、確保病床数500床なので、使用率は49%です。この500床と言う数字は、2020/9/2から変更ありません。最終フェーズにおける即応病床(計画)数500床は、第2フェーズにおける確保病床数と同じ500床です。こちらは、2020/7/8から変更ありません。

東京都は、確保病床を150床と公表しています。重症者数は59人と公表していますので、都基準では使用率39%です。

東京都は、第2フェーズにおける準備病床、第3フェーズにおける準備病床を算定していないのでしょうか? 最終フェーズにおける即応病床(計画)数が、なぜ500床なのでしょうか?

A16-3:大阪府の「重症者数」のフェーズが、4段階のうち、最終の第4フェーズになっています。重症者数は209人で、確保病床数366床なので、使用率は57%です。この調査結果では、最終フェーズにおける即応病床(計画)数215床となっています。少なくとも、2020/9/2より変更はありません

大阪府の第4フェーズの確保病床数が366床なのに、最終フェーズ(=第4フェーズ)における即応病床(計画)数が、なぜ215床なのでしょうか?

しかし、大阪府公表の確保病床数は206床であり、実運用病床数は、164床だそうです。*4

大阪府は、政府(厚労省)の「今後を見据えた新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備について」を、どう考えているのでしょうか?

東京都、大阪府の公表数字をもって、「病床逼迫」と言われても信用なりません。マスメディアは、数字のチェックをしないのでしょうか。

*1:大阪府の重症者数のオープンデータ(過去データ)は非常に分かりにくいところにある。http://www.pref.osaka.lg.jp/iryo/osakakansensho/happyo_kako.html を探すのに苦労した。

*2:これは、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部が、令和2年3月2 6日に都道府県知事等に発出した事務連連絡「新型コロナウイルス感染症の患者数が大幅に増えたときに備えた入院医療提供体制等の整備について(改訂)」の別添資料です。 

*3:私は、政府(対策本部)の施策に根本的な疑問を抱いていますが、おいおい述べていくことにしましょう。

*4:http://www.pref.osaka.lg.jp/iryo/osakakansensho/corona_model.html