浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

資産格差

香取照幸『教養としての社会保障』(17)

今回は、第4章 変調する社会・経済 第5節 マクロ経済の異常事態 である。

香取は、バブル崩壊後の日本経済の停滞について述べ、資産格差が増大しているという。しかし、私は若干の増減はあるかもしれないが、格差は構造的なものではないかと考えている(統計数字で検証したわけではないが…)。

香取は次のような図表をあげている。(本書発行は2017年)

  • 金融資産保有世帯:金融資産保有額別の割合(構成比)…貯蓄残高300万円未満世帯と3000万円以上世帯の暦年推移。(2010年は2%と13.0%)
  • 貯蓄残高ゼロ世帯(株式、個人年金など含む):所得格差と貯蓄残高ゼロ世帯比率の暦年推移(2010年は3%)
  • 家計・企業の貸借と経常収支
  • 富裕層の人数(2008年と2015年):自宅以外の資産を100万ドル以上保有している人の推計(各国比較)…日本は137万人→272万人。米国は246万人→446万人。
  • 年代別家計金融資産残高:60歳以上で全体の6割(約800兆円)を保有
  • 資産格差(1)高齢世代の大きな貯蓄:世帯主年齢階級別貯蓄及び純資産(貯蓄-負債)の1世帯当たり現在高(2人以上の世帯)。
  • 資産格差(2)高貯蓄保有層への貯蓄集中:貯蓄現在高階級別貯蓄の分布状況。…貯蓄現在高が2000万円を超える約3割の世帯が、総貯蓄の7割を保有。二極化が進展。

いずれか重要と思われるものに最新データを加えて図表化しようかと思ったが、「資産格差」の実態把握はなかなか難しそうなので、今後の課題とする。

「資産」には、金融資産の他に「土地」「建物」「備品」等があり、これらを把握しなければ、「格差」の実態は明確にならない。とりわけ「土地」は重要である。

「無形の資産」(能力)の格差(知力、創造力、体力)が、より重要かもしれない。

 

参考に、2019年(令和元年)の家計調査報告(貯蓄・負債編)/総務省https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.html)から、貯蓄の状況を見ておこう。

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二人以上の世帯における2019年平均の1世帯当たり貯蓄現在高(平均値)は1755万円である。

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このうち勤労者世帯(二人以上の世帯に占める割合55.6%)についてみると,貯蓄現在高(平均値)1376万円である。

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貯蓄現在高の平均値(1755万円)を下回る世帯が67.9%と約3分の2を占めており,貯蓄現在高の低い階級に偏った分布となっている。

 

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*物事を「平均値」で判断してはならない。分布をよく見なければならない。

*「分布/格差」は表面にあらわれた事象を切り取ったものであり、そこを凝視すれば、「人生の喜怒哀楽」が見えてくるであろう。