今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 3国会の権限(p.537~) である。
国会の権限には、1.憲法改正の発議権、2.立法権、3.条約承認権、4.財政に関する権限、5.その他の権限 がある。
憲法改正の発議権
いまは、憲法改正論議は下火になっているようだが、自民党の憲法改正草案(2012年7月)では、第96条を次のように改正したいとしている。
一見して明らかなように、この改正草案は、「憲法改正(改悪)をやりやすくする」ためのものである。
昨年の国会では「国民投票法改正案」が見送りになったが、今年(2021年1月)の国会で採決されることになるかもしれない。ここでは詳細はふれない(憲法改正については、いずれ詳しくとりあげたい)。
自民の改憲原案、年内策定を断念 国民投票法を優先(2020/12/19、毎日新聞)
浦部は、本書で「内閣」に憲法改正案の原案発議権があるのかどうか? を問うている。
内閣の発議権を否定しても、国会議員の資格で発案できるから、実際上はあまり違いはない、ということは、憲法改正案の場合も、法律案の場合と変わらない。しかし、憲法改正の場合には、通常の立法の場合と違って、原案の作成過程に行政の関与を認めるべき必要性は、ことがらの性質上、極めて乏しい。そうであれば、この場合には、国民による改正と言う建前に忠実に、内閣の発議権は否定すべきであろう。
「自民党」に上記のような改正案を策定する能力があるなら(野党にもあるだろう)、行政を関与させる必要はないように思われる。
憲法の条文解釈だけをしていては、憲法96条改正に関連しての「国民投票法改正案」などの動きを見過ごしてしまう。
「国民投票法改正案」のどこが問題なのかについては、例えば、国民投票法改正案とは?反対の声がネットで拡散、問題点は?(2020/6/5、國崎万智、HUFFPOST)参照。
議員立法には発議の要件がある。一定人数の議員の賛成が無いと法律案を発議できない(国会法)。これにより、「少数会派の国会活動が制限される」(浦部)
本書ではふれていないが、機関承認の慣例もある。
衆議院においては、議員の所属する会派が機関承認をしていない場合、法案の発議は受理していない。各会派は議院事務局に、会派の承認の無い議員立法を受理しないよう申し入れ、事務局がこれにしたがっているためである。1952年4月24日の保守合同前の自由党の幹事長が党四役の署名がない場合は受理しないことを衆議院議事課長および議案課長宛の手紙で要請したのが前例となって現在まで続いている。これにより、議員が単純に賛同者を集めただけでは提案できない。……(Wikipedia)
条約承認権
条約の承認権は内閣にあるが、「事前に、時宜によっては事後に」国会の承認を経ることが必要である(外交の民主的統制)。…外国との間の文書による合意であれば、例えば、協定・協約・議定書・宣言・憲章などという名称のものであっても、すべて「条約」にあたる。
浦部は、国会の承認を得られなかった場合、条約の効力はどうなるか? を問うている。
事前に国会の承認を求めたが承認を得られなかったという場合には、内閣はその条約を批准することができない。しかし、事後に承認を求めて承認を得られなかった場合の条約の効力に関しては、すでに相手国との関係では条約が確定しているということから学説が分れる。
無効説、有効説、条件付無効説があり、その説明があるがここではふれない(国際法の解釈問題でもあるので、難しそう)。浦部が言うように「政府が相手国に、国会の承認が要件となっていることをきちんと伝えれば、それで済む問題である」ようだ。
次に、条約の承認にあたり、国会が「修正権」を持つのかどうか?
浦部は、「法律や予算の議決の場合と同じ意味での修正権を持つものではない」としている。
仮に国会が承認を求められた条約を「修正」して承認したとしても、それによって相手国との関係で直ちに条約の内容が変更されるわけではなく、内閣があらためて相手国と交渉を行い相手国の承認を得なければ、条約内容の変更は不可能だからである。
具体的な話題がないと興味を持てないが、「国会とは何か」を大まかに理解するために読んでいるので、あまり深入りしないでおこう。