浮動点から世界を見つめる

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COVID-19:「新型コロナで死ぬ」とはどういうことか?(4)- スウェーデンのコロナ犠牲者の大半が実はコロナと無関係!?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(57)

※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000

今回は、「スウェーデンのコロナ犠牲者の大半が実はコロナと無関係!?」というタイトルの動画をみたので、思うところを述べることにします。

www.youtube.com

この動画は、SVT(Sveriges Television、スウェーデン・テレビ)のニュースを、スウェーデン移住チャンネルの吉澤智哉が紹介・解説しているものである。SVTは、スウェーデン共テレビ局(イギリスのBBC、日本のNHK同様の公共放送で、広告放送が禁止されている)である。

詳しくは動画を見ていただくとして、ポイントだけメモしておこう。

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 上のグラフの意味は次のとおりである。

  • コロナが主因(グラフの「直接の死因」)の死亡者は、17%である。
  • コロナが副因(グラフの「寄与」)の死亡者は、75%である。
  • 検査陽性だが、コロナとは無関係(グラフの「コロナ以外」)の死亡者は、8%である。(ただ単に検査陽性だが、死亡には関係ない)。

但し、このデータは、「ストックホルム県の高齢者施設で、2020/3月~8月の間に、亡くなった1089名のうち、228名分のカルテ」を分析したものである。だからこの僅かなサンプルをもって一般化することはできない。(だが、試しに計算してみよう。スウェーデン国内の死者合計約11,000名の17%=1870名が、コロナ主因の死者であるにすぎない)。

吉澤は、「高齢者施設だって何もしていないわけではなかった。実際の死者の分析をしてみるとこのような内訳となり、批判されているほど酷い実態ではない」と解釈している。

他の地域でも調査が行われ、「コロナが主因:15%、コロナが副因:70%、コロナ関係なし:15%」だったという。

ここで重要な点は、以下の点にあると考えられる。

  1. (統計的な問題はあるにせよ)死亡者の「死因分析」をしようと考え、実際にカルテを分析しているということ。
  2. それをNHKに相当する「公共テレビ」が報道していること。

 

私は、「死因」の問題性については、これまで何度もとりあげてきた。

2020/07/25 COVID-19:新型コロナウイルス感染症の「死者」の定義 

2020/08/07 COVID-19:小括 

2020/08/21 COVID-19:風が吹けば桶屋が儲かる -コロナで死ぬということ- 

2020/09/03 COVID-19:「新型コロナで死ぬ」とはどういうことか?(1) 

2020/09/05 COVID-19:「新型コロナで死ぬ」とはどういうことか?(2)- 死亡診断書

2020/09/10 COVID-19:「新型コロナで死ぬ」とはどういうことか?(3)- 「肺炎で死ぬ」のではないのか? 

 

「死因」の話は、国の如何にかかわらず共通する話である。私は、2020/8/7の小括で、「COVID-19の死因分析として、多変量解析は為されているのだろうか。要因の重みづけは重要なことではないのか?」と書いた。

 

長尾和宏(医師)は、彼のブログで「感染者と重症者と死亡者の重症化因子の多変量解析を急げ!」(2020/8/10、http://blog.drnagao.com/2020/08/post-7303.html)という記事を書いていた。

重症者と死亡者全員の 

1 年齢と性別

2 基礎疾患すべてとその程度

3 血液型(ABO)

4 喫煙状況(加熱式たばこも)

5 BMI(高度肥満の割合)

6 感染判明までの期間

7 重症化までの期間

8 死亡までの時間

9 抗体陽性率(キット別のIgG)

10 治癒後の血液PCR

をデータベース化し分析を急ぐべき時だと思うけどね。

1~8はすぐにできる。9と10は経時的変化を調べればいい。

それにより、真の重症化リスクのオッズ比、が出る。

多変量解析して重症化のファクトを浮き彫りにする。

それに基づいて対策を立てればいいだけ。

なんでそんな簡単なことをしないのか???

 

データ(カルテ)はあるはずである。

何故、このような分析をしないのか? 

「GO TOと陽性者の相関関係」を見るというようなくだらない分析をして、いったい何になるというのだろうか。

 

スウェーデンの公共テレビが、このような分析を報道しているのに比べて、NHKの報道っぷりは冷静さを欠いているように見える。