今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 3国会の権限 ⅳ財政に関する権限(p.543~) である。財政については、神野直彦『財政学』を読んでいるので、ここでは簡単にみておこう。
財政に関する権限
- 国の財政に関する活動は、国会の議決に基づいて行われなければならない(財政民主主義、財政立憲主義、財政国会中心主義)*1。即ち、租税の賦課・徴収、金銭の借入、国費の支出、国の財産の管理などのほか、国の財政政策の基本原則などや、貨幣制度を定め、貨幣を発行するなどのことも、すべて国会の議決に基づいてなされなければならない。
- 財政立憲主義の収入面での具体化が、租税法律主義である*2。租税の賦課・徴収が必ず国会の制定する法律によらなければならないとする原則である。これは、単に租税の種類や課税根拠などの基本的事項を法律で定めるというだけでなく、具体的な課税要件(納税義務者、課税物件、課税標準、税率など)及び徴税手続など、租税の賦課・徴収の具体的内容すべてが、法律によって明確に定められなければならない、ということを意味する。もっとも、細目について、明示的・個別的・具体的な法律の委任に基づき、命令で定めることまで排除する趣旨ではない。
- 国費の支出についての国会の議決*3は予算の議決の形式によってなされるが、予算は国の財政行為の準則として政府の行為を規律する法規範である(支出面における財政立憲主義)。国費の支出に対する国会の議決は、国会による財政監督・統制という趣旨からいって、使い道の確定した支出についてなされなければならない。…歳出予算は、国の支出それ自体を、目的・金額・時期について限定する意味を持つ。歳入予算は、予測という意味を持つに過ぎない。
- 公の財産の支出又は利用の制限*4(89条)…(前段)民主主義にとっての基底的自由である思想・信仰等の自由を侵害するような財政処理を禁ずる(政教分離)。(後段)私的な(宗教的信念や世界観などに基づく)慈善・教育・博愛事業の自主性を尊重し、公金主出などを通じた公権力によるそれらの事業に対する干渉の危険(主義・思想のコントロール、政治利用)を排除しようとするものである。
89条の解釈において、「宗教上の組織若しくは団体」を限定的な意味に解することの問題、「公の支配」に属する事業をどの範囲のものと解するか(ex.私立学校や社会福祉法人などに対する補助・助成)の問題があるが、議論の内容は(興味深いが)省略する。
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総務省幹部の接待問題
最近、予算委員会で、総務省幹部の接待問題(菅首相の長男が勤める放送関連会社「東北新社」からの接待)がとりあげられている。例えば、次の動画参照。
2021/2/22の衆議院予算員会における本多平直(立憲民主党・無所属)の質疑
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=51478&media_type=
2021/2/19の衆議院予算員会における森山浩行(立憲民主党・無所属)の質疑
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=51475&media_type=
今日(2021/2/25)は、山田真貴子・内閣広報官(接待当時は、総務審議官)に対する質疑があった。
山田真貴子は2019年11月6日に、東京・虎ノ門の店で飲食費1人当り7万4203円(5人の会食)の接待を受けていたという*5。庶民には縁遠い7万円超の会食とはどういうものか、ちょっと気になったので、調べてみた。
店の名前は報道されていないので、虎ノ門近辺の店を検索して、「若会席大和館」あたりかなと想像している。(2021/2/26追記…話のネタにとりあげているので、店はどこでもいいのですが、ホテルオークラ内の「さざんか」かもしれないですね)。
若会席の最高級コース【活鮑とサーロインステーキ】のお品書き
先付彩り前菜
季節のお椀
旬のお造り
活鮑のステーキ
レアステーキ葱まみれ
季節の産直焼野菜
サラダ
特撰飛騨牛サーロインステーキ
御食事(ご飯・赤出汁・香の物)
デザート
お飲み物
ワインは結構高い。極上の赤ワインの値段は、
Opus One ¥150,000
Chateau Margaux ¥120,000
Pommard La Levriere V.V. ¥39,000
高級ワインを注文すれば、1人当り7万円は超える。
高級官僚になれば、こういう会食が当たり前になるのだろう。(民間の中堅・大企業の役員クラスにとっては当たり前の会食だろう)
秋本芳徳・総務省情報流通行政局長の弁明は興味深い。
私の音声かと思われる
自分の不明を恥じたのは、この記憶力の乏しさ
天を仰ぐような驚愕(きょうがく)する思い
「天を仰ぐような驚愕する思い」とは、東大法学部卒のエリートにふさわしい名言(迷言)である。
予算委員会とは、こういう問題をとりあげる場なのか?
内閣が提出する予算案の審議を行うことが基本的な役割であるが、予算というものは一年間の国政の在り方を決めるものであり、また予算案の作成と予算の執行は内閣の責任の下で行われるため(憲73)、予算の内容に限らず、広くその執行主体である内閣の政策方針や行政各部の対応さらには閣僚の資質の問題などが問われることになり、結果として予算委員会では国政のあらゆる重要事項についての審議が行われる。(Wikipedia、予算委員会)
これでいいのかどうかは検討の余地があるだろう。
予算の内容に関する実質的な議論は、予算委員会の「分科会」でなされるのか? (分科会については、いずれとりあげたい)
*1:第83条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。[財政民主主義]
*2:第84条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。[租税法律主義]
*3:第85条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。[国費支出と国の債務負担]
*4:第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。[公の財産の支出又は利用の制限]
*5:和牛ステーキに海鮮料理…山田広報官が受けた7万円接待(https://news.yahoo.co.jp/articles/bd33f32db1a0ce6a0d97fe6b71df3eecf37340c9)