浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

行政機関による立法行為

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(10)

今回は、第7章 国民主権 第5節 内閣 である。

内閣の地位

内閣は行政権の主体であり、行政とは「法律の執行作用のうち司法以外のもの」をいう。

行政権とは何か? 

国民主権原理に立脚する統治構造の下では、すべての具体的な国家権力作用は、国民代表機関である立法府の制定した法律に基づいて行われるべきことが要請される。

行政と司法は、立法府の制定した法律を具体的に執行する作用である。このうち、具体的な事件に法を適用しこれを裁定する作用が司法であり、それ以外のものが行政である。

「行政権は内閣に属する」(65条)とは、内閣が行政権の主体であり、その最高位機関であると同時に責任者であること、従って、他のすべての行政機関が内閣の統轄の下に置かれるべきことを意味する。

行政とは「法律の執行作用のうち司法以外のもの」(国家作用のうち、立法作用と司法作用を控除した残余の作用、抗除説)と言われても、法律の執行作用(立法府の制定した法律を具体的に執行する作用)がどういうものであるかを、具体的に説明できなければ、行政を理解したことにはならない。

ここでは、行政全般について勉強しようとは考えていないので、私の関心事項のみとりあげる。

その関心とは、立法と行政の関係であり、行政機関による立法行為である。

行政立法とは、「行政機関による規範の定立[立法行為]。または、それによって定立された規範それ自体」である。その内容(性質)によって、1.法規命令と、2.行政規則とに分類される。

1.法規命令とは、行政機関が定める法規のことである。ここにいう法規とは、国民の権利義務に関する規範を意味する。

日本においては、唯一の立法機関である国会のみが、法規を定立することができると解されているため(憲41条)、法律の委任(法律による授権)がある場合に限って、法規命令は合憲であるとされる(憲73条6号)。

日本における法規命令は、政令内閣府令、省令などの形式をとることが多い。

法規命令には、1-1.執行命令(実施命令)、1-2.委任命令などがある。

1-1.執行命令(実施命令)とは、上位の法令を執行するために定立された規範で、上位の法令において定められた国民の権利・義務を詳細に説明することを内容とした命令である。

1-2.委任命令とは、受任命令とも呼ばれ、法律または上級の命令の委任に基づいて本来当該法律・命令に定めるべき事項について定める命令をいう。執行命令の場合と異なり、例えば罰則を設けることができるなど、国民の権利を制限し、義務を課すことが可能である。一般的な発令権限の規定だけでなく、対象を特定した形での委任が必要であり、また、日本法においては、一般的・包括的な委任は許容されないと考えられている。

2.行政規則は、行政立法のうち、法規の性質を持たないもののことをいい、行政命令あるいは行政規程とも呼ばれる。法規の性質を持たないため、法律の委任は不要である。形式も、内規、要綱、通達によるのが通例である(政令・省令など命令の形式による場合もある)。(Wikipedia、行政立法)

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https://tamamo.site/tips/houkimeirei_gyoseikisoku/

 

政令内閣府令、省令などの法規命令が、「国民の権利義務に関する規範」であるということは、行政機関が立法行為をしているということである。これが認められるのは「法律の委任(法律による授権)」があるからである。

であるとしたら、どのような内容のものを委任(授権)するかが問題である。

上位の法律が抽象的で、政令等が具体的であるとしたら、実質的に「国民の権利義務」が行政機関によって規定されるということになる。選挙によって選ばれることの無い官僚が「国民の権利義務」を規定することは、国民主権の理念に反するのではないか。

冒頭の引用文中、浦部は、「行政権は内閣に属する(65条)とは、内閣が行政権の主体であり、その最高位機関であると同時に責任者であること、従って、他のすべての行政機関が内閣の統轄の下に置かれるべきことを意味する」と述べていた。これは各省庁が内閣の統轄の下に置かれるべきということである(政治主導)。

Wikipediaは、行政立法の必要性について、次のように述べている。これは「官僚主導」の根拠とされよう。

  1. 対象の専門化…規範の定立(特に法規)を全て議会に委ねることになると、詳細で、専門技術的事項についてまで、議会で審議すべきことになるが、これは困難・非効率である。
  2. 状況変化への柔軟性…議会による立法では、状況変化に即応して規範を改正することが困難である。
  3. 中立性確保…政治的に中立な立場にある行政機関が規範を定立することが合理的と考えられる場合もある(人事院規則など)
  4. 地方の事情を考慮した対応をするためには、その実情に明るい行政機関に規範を定立させることが合理的であると考えられる場合もある。(Wikipedia、行政立法)

「対象の専門化」はもっともらしいが、どこからが専門的な事柄になるかは明確ではない。例えば、PCR検査の陽性者を隔離するという場合に、判定基準を議会で審議することなく、行政(厚労省)にまかせればそれで良いのだろうか。

「中立性確保」については、行政機関が政治的に中立な立場にあるのか疑問である。府省庁の上級官僚が政治家や財界人と意見交換(癒着)しているとき、政令内閣府令、省令等の行政立法が中立的であると言えるだろうか。

「官僚主導」、「政治主導」の問題性については、いずれ詳しくとりあげたい。